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今週のコラム 406回目 補足

みなさん、こんにちは。

世の中、お盆ですがここ江戸川病院はカレンダー通り営業中です。

夜中走っている時には、急に雨が降ったり(そして)止んだりと台風らしき天候なのかな?と思っていましたが、現在(am 5:36)医局から見える空は綺麗に晴れ渡っています。

と、当たり障りのない天気の話題に触れつつ乳プラ8年の歴史上初めて登場したコラムの「補足」には訳があります。

 

コラムにもさまざまな角度があり、(最近では)今週のコラム 405回目 atezolizumab / pembrolizumab 復刻版のようなシンプルに薬剤の適応などやその変遷などをただ紹介しただけものや、今週のコラム 404回目 111/153復刻版 その症状は「乳癌」や「転移」ではありませんよ。のように「口酸っぱく」皆さんの勘違いしやすい症状をまとめて提示しただけのものなどあります。

その中で、時に(私自身)前のめりとなり(指摘した)その患者さんのみならず、(その患者さんを通して)多くの同様の方にニュアンスごと届いてほしいと願って掲載するコラムがあります。

それがこの406でした。

日曜日にコラムを掲載した後、掲示板に(主として)常連さん(別名one team)のコメンテーター達が(直前に掲載した)コラムに対しての感想を挙げてくれます。

暫く前から、そのコメンテーター達の感想を読んで私自身が伝えたかったことが(少なくとも)一部の常連さん達に伝わっている=(常連ではなくても)ある一定の方達に伝わっていると判断するようになっていました。

★伝わりずらかった背景には、私が11250さんへのコメントをかなり端折ってしまったことがあるかな?と考え補足するに至ったのです。

 

まず11250さんのQ(質問2)を読んで率直に感じたことがあります。

PETの結果「胸骨転移」がみつかった。

全ては、ここから始まります。

無論、胸骨転移があることは11250さんにとって大変なショックであることは十分伝わるし、理解もできます。

 

ただ私が問題に感じたのは、「その後」なのです。

①質問者自身が悲観的な想像が、様々なことを癌と結びつけ(最終的に)「腫瘍熱」のような(私から見れば)全くナンセンスな過大妄想に達している

これが、このQ全体から感じられたムードと言えます。

(無論、その担当医がどういうふうに話したのかは不明ながら)少なからず「胸骨転移」の説明をした際に、(質問者自身に)そのようなイメージを与えているのでは?と想像してしまいます。

遠隔転移自体には(それが肺であれ肝であれ)全く症状などありません。(私が口酸っぱく乳プラでコメントしているように)

★当然ながら胸骨転移に症状がある筈もありません。

★年齢から卵巣が(そもそも)不安定となっていることに加え、今回のストレス(精神的ダメージ)がそれを助長し、更年期症状が出ています。(皆さん、それを癌と関連付けがちですが全く無関係です)

★ついでに言えば(質問者が体重減少しているのか?不明ですが)乳癌で体重減少はありません。

 

②治療方針が「遠隔転移=ステージⅣでは、全て同一」というような印象を与えている。

これにより(遠隔転移があると)手術そのものが無意味=治療そのものに希望を見いだせないというような(質問者自身の)思考過程が垣間見えるのです。

(遠隔転移と)一括りにすること自体、(我々乳腺外科医が最も陥りやすい)悪しき習慣と言えます。

今回もし、「肝転移」しかも結構大きい=進行するとlife threateningになりうるものであれば、肝転移の治療が最優先となることに疑問の余地はありません。

その場合には抗がん剤で肝転移をコントロールしたのちに局所治療(手術)を選択すべきでしょう。

ただ、これさえも(肝転移があれば、たとえそれがコントロールされても手術しない)同意しない医師が居ることは大変残念なことなのですが…

 

それでは骨転移(全身に他に多発)だったら?

⇒こうなると、その程度によるでしょう。

少なくとも「過重骨(骨折のリスクがある)」などの場合には放射線を優先させる必要があると思います。(照射後、手術までの間に抗がん剤を挟むべきか?は、やはりその「程度」や患者さん自身の「抗がん剤への抵抗性」などを考慮すべきです)

 

いよいよ「胸骨(単独)転移」ではどうなのよ?

これが今回のコラムで「投じた一石」なのです。

無論、(手術先行ではなく)抗がん剤から入ること自体を非難しているわけではありません。

ただ胸骨転移単独で「まるで(あなたは遠隔転移があるから)手術そのものの意味がないかもしれません」のような提示をさていたとしたら、決してそうではない。

 

私が切ったカードが「実例」で紹介したものなのです。

全ての胸骨転移が、この症例のようになると言い切るつもりは勿論ありません。

ただ事実として、この症例で胸骨転移は抗がん剤⇒放射線⇒(その後の)ホルモン療法で完全に制御されています

今回、その担当医が同じカードを切れなかった理由は、「技術的なもの」ではなく、「経験的なもの(その成功体験が無い)」と言えるのです。