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乳腺の良性疾患

疾患名を羅列しても解りにくいだけなので、症状からアプローチしましょう。
乳腺の良性疾患1.fw

乳房痛

赤みや膿などが無く、見た目は正常のもの

■乳腺症
これは、病気ではありません。個人差の範囲内
乳腺の良性疾患2.fw
図1)乳腺症のエコー像  「豹紋様」と評される
原因 卵巣ホルモンの作用による
卵巣ホルモンの作用
生理前:乳腺や子宮を増殖させる(乳房が張る、子宮粘膜肥厚)
生理期:乳腺や子宮が退縮(乳房の張りが取れる、子宮粘膜脱落=生理による出血)
これを繰り返す中で乳腺の線維化が起こります。
point「乳房の張り」が関連した痛みや「線維化による硬さ」によるしこり感が本質

『皆が気になる質問 ~乳腺症と乳腺炎~』 はこちらをクリックしてください。
~誤句が似ているので、一般の方には混同され易いのですが、全くの別物です。~

 

赤みや膿など、見た目で炎症の存在が明らかであるもの

■鬱滞性乳腺炎
乳腺の良性疾患3.fw
図2)鬱滞性乳腺炎 皮膚の赤みがわかる。
授乳期に起こる。
初産に多い(乳管の発達が不十分で、作ったミルクがスムーズに出ない事がある)
授乳後早期(1~4日まで)に多い
原因 ミルクの鬱滞
治療 マッサージ(絞って出す)、温める、抗生剤(予防的)

赤ちゃんの口などで乳頭に傷ができると、細菌が入り込み急性化膿性乳腺炎となる。
抗生剤で無効の時には、切開ドレナージが必要となる。
乳腺の良性疾患4.fw
図3)切開して膿を出した後に、チューブ(ドレーン)挿入・留置

■乳輪下乳腺炎
授乳期でないのに、炎症(赤み、膿など)がある場合は殆どがコレ
原因 老廃物やケラチンで乳管が閉塞することにより起こる。
陥没乳頭を伴うことが多い(乳管が閉塞し易い)
乳腺の良性疾患5.fw
図4)左:乳輪下乳腺炎 慢性化しやすい 右:乳輪下乳腺炎の手術
治療
炎症をまずは抑える。抗生剤内服⇒(無効なら)切開ドレナージ
◎その後に、閉塞している原因乳管を膿瘍と一緒に切除する手術が必要
陥没乳頭が原因となっていれば、陥没乳頭の修復も必要となる。
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~誤句が似ているので、一般の方には混同され易いのですが、全くの別物です。~

乳房痛 番外編

■Mondor’s disease モンドール病
部位 乳房・乳房近傍(前胸部など)・腋の下
症状 索状(ひも状)の痛み・突っ張り
原因 乳房や前胸壁などの浅い部位の血栓性静脈炎
乳腺の良性疾患6.fw
図5)モンドール  左:乳腺下 右:腋の下

乳頭異常分泌

両乳房から多孔性のもの

乳腺の良性疾患7.fw
図6)両側・多孔性

■薬剤性
ドパミン(下垂体からのプロラクチンを抑性)を抑性する薬剤=プロラクチン促進
睡眠薬
精神安定剤
胃薬など

■下垂体腫瘍
プロラクチン(乳汁産生ホルモン)を過剰に生成する。

■乳腺症、乳管拡張症など

片乳房から単孔性のもの

乳腺の良性疾患8.fw
図7)片側・単孔性

■乳管内乳頭腫
乳腺の良性疾患9.fw
図8)乳管内乳頭腫 乳管内に腫瘍が確認できる。
乳管内に突出するように発育し、乳頭分泌の原因となる。
それ自体は良性病変ではあるが、近傍に極早期の癌(非浸潤癌)を伴う、もしくは
将来的に伴うこともあるリスク病変との位置づけ

治療 乳管(腺葉)区域切除術

乳腺の良性疾患10.fw
図9)乳管造影と手術
※摘出すれば分泌も治まるという効果もある。

■乳癌
乳癌も、大部分は乳管から発生するので分泌を伴う乳癌もある。

硬結としこり

硬結としこりの違い
乳腺の良性疾患11.fw
図10)硬結としこり 各代表的疾患

硬結

■乳腺症
これは「乳房痛」で紹介済み
乳腺の線維化により、「何となく硬い感じ」となる。

しこり

■のう胞
水(もしくは分泌されたミルクなど)の貯まった袋
治療 不要だが、針を刺して中身を抜くと一旦は萎む

■線維腺腫
比較的若い人にできる。(閉経後に新たにできることは、極めて稀)
良性であり、将来悪性になることはないが、増大して疼痛の原因となることはある。
治療 基本的には不要だが、増大傾向あれば切除

■葉状腫瘍
間質が腫瘍性(monoclonal)であり、巨大化したり悪性化するものがある。
治療 切除
※巨大化する過程や、切除後の再発の際に、悪性化することがあり
悪性度の低いうちに完全切除することが望ましい。
乳腺の良性疾患12.fw
図11)左:巨大葉状腫瘍        右:悪性葉状腫瘍
※巨大であっても悪性ではなく、境界悪性などの場合も多い。

■乳管内乳頭腫(前述)

■乳癌
非浸潤癌はベターっと(硬結)浸潤癌はゴロっと(しこり)