乳がんとは
●生涯12人に1人が罹る女性にとってたいへん身近な問題です。
乳癌はこの30年間で実に5倍以上と最も増加著しく、年間7万人近くが罹患(新しく癌に罹る)します。
●若い年代に多い。
若い年代に多いのが特徴で、40代後半にピークがあり、この年代の癌の半数を占めます。
●高齢者に増えています。
人口の高齢化に伴い、乳癌の中で70歳以上の占める割合は2010年のデータでは実に1/4(23.4%)に達しています。
●大変予後がいい。
5年生存率は90%以上です。(2004年乳癌学会登録症例のデータ)
乳がんの発生
・乳癌の殆どは乳管(ミルクを運ぶ管)の細胞が癌化しておこります。
・癌細胞はまずは乳管の中を増殖します(この段階を非浸潤癌といいます)、やがて乳管の壁を破って間質「浸潤」します。(浸潤癌といいます)
・乳管の中には血管もリンパ管もないため、非浸潤癌では、血管の中に入り込んで転移する「血行性転移=遠隔転移」も、リンパ管の中に入り込んで転移する「リンパ行性転移=リンパ節転」)の、どちらも起こりません。
詳しくは下記コラムを参照ください。
『今週のコラム 243回目 しかし、8654で紹介したように以下のケースでは非浸潤癌として診断できます』
統計の要点
・増加が著しい(37年間で8倍以上)
・若年者に多く40歳代では(女性の癌の)実に40%以上を乳癌が占める。
ステージの要点
ステージはT: tumor 腫瘍径(最終的には「病理学的浸潤径」)とN: node リンパ節転移の個数の組み合わせです。
T1 2cm以下 2cm< T2 ≦5cm 5cm< T3 T4 皮膚所見を伴うもの
N0 リンパ節転移なし N1 1個から3個 N2 4個から9個 N3 10個以上
Ⅰ期及びⅡ期はTとNの組み合わせできまり、
3期以上は
N2(リンパ節転移4個以上)だとステージⅢA
T4(皮膚所見を伴うもの)だとステージⅢB
N3(リンパ節転移10個以上)だとステージⅢC
組織型
乳癌はまず、非浸潤癌(乳管に留まっている)と浸潤癌(乳管から外へ浸潤している)に分けられます。
非浸潤癌 15%
浸潤癌 85%
浸潤癌は更に「75%を占めるno specific type 非特殊型」と「(残りの25%を占める)specific type 特殊型」に分けられます。
no specific typeは、更に「乳頭腺管癌25% 充実腺管癌15% 硬癌 35%」に分けられますが世界的にはno specific typeと一括りにすることが多い。
specific typeの中には粘液癌 4%、浸潤性小葉癌 5% 、アポクリン癌 1.4%などがあります。(他は1%以下)
組織型は、治療法とも予後とも殆ど関係ないので、「こんな風に分類されている」程度の認識で構いません。
それに対して重要なのが「サブタイプ」です。
サブタイプ
サブタイプとは乳癌の「治療に直結」する概念です。
主役は以下の3つ(前者2つはホルモン受容体 後者は増殖蛋白の受容体)
ER(estrogen receptor)
PgR(progesterone receptor)
HER2(human epithelial growth factor receptor type 2)
「依存」とは、それを「抑制する治療が効く」と同義です。
・実際の組み合わせ
ER陽性/HER2陰性 = 「ルミナールタイプ(HER2陰性)」 ホルモン療法が効く
ER陽性/HER2陽性 = 「ルミナールタイプ(HER2陽性)」 ホルモン療法+抗HER2療法(の両方が)効く
ER陰性/HER2陰性 = 「トリプルネガティブ 」 ホルモン療法も抗HER2療法も(どちらも)効かない
ER陰性/HER2陽性 = 「HER2タイプ 」 (ホルモン療法は効かず)抗HER2療法が効く
ルミナールA/Bについて intrinsic subtype
ルミナールタイプを「抗がん剤が効かないタイプ(A)」と「抗がん剤が効くタイプ(B)]に遺伝子発現から分類したものをintrinsic subtypeと言います。
臨床の場では、煩雑で調べることが不可能であるため、実臨床の場ではKi67の値で判断する(近似させる)ことが推奨されている。
Ki67<20 ルミナールA(だろう)
20≦Ki67≦40 グレーゾーン
40<Ki67 ルミナールB
♯ Ki67とは癌細胞の細胞「分裂期にある割合」のことであり、「増殖能に直結する」と考えられている。
今週のコラム 15回目 どうやって、免疫染色だけで、AとBに分けるか?
♯ グレーゾーンの場合にはOncotype DXでの判断が推奨されている。
Oncotype DX
乳がん診療
局所療法(手術及び放射線)と全身療法(薬物療法)の組み合わせで成り立っています。
乳がんの診断
検診で「何かある?」と言われた方、「これって、しこり?」と感じた方
・診断の流れは「画像診断」
⇒(癌を否定しきれない場合には)「組織診断」へと進みます。
江戸川病院での乳がんの診断
乳がんの治療
江戸川病院での乳がんの手術
乳がんの再発
乳がんの概論
乳がんの現状
乳癌の罹患・予後
乳がんの原因
非遺伝性
遺伝性乳癌の検査
遺伝性乳癌卵巣癌
HBOCでの癌検診
乳腺の良性疾患
乳腺疾患の分類
乳がんの分類
TNBC
乳がんの検査
一般検査
精密検査
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拡がり診断・病期診断
分子診断
乳がんの治療
手術
センチネルリンパ節転移
放射線療法
手術に替わる治療
内分泌療法
化学療法・抗癌剤
分子標的薬