最近「乳腺症」の質問(Q)が多く、今回もそんなQに回答している中でコラムの内容が決まりました。
具体的には…
『Q&A8044 境界が不明瞭な乳腺症?』『Q&A8048 低エコー領域とは』を回答していて
『Q&A8055 乳腺症 判定』にも、ありました!
境界不明瞭という語句を勘違いされていることに気付き、これを解説することにしたのです。
「腫瘤の境界不明瞭」と「腫瘤非形成性病変の境界不明瞭」では意味が全く異なることを理解していただきたい。
今回、このコラムを書き上げるにあたって、先週1週間の外来患者さんの画像を見なおしました。まさに「宝の山」でした。
♯ 今回出す画像は全て「生検(CNB/CELERO/MMTE)」により病理診断が確定しています。
まず、皆さんが気にされている「境界不明瞭」という表現
いかにも「悪そう?」な表現であり、癌と結びつけて考えられがちです。
「境界不明瞭」を知るには、まずは「境界明瞭」を知ること。
≪境界明瞭≫
これは、「腫瘤(しこり)」に対する表現です。
①境界明瞭腫瘤 線維腺腫
②境界明瞭腫瘤 線維腺腫
③境界明瞭腫瘤 癌
境界明瞭でも癌はあるのです。(画像は②と似てますね?)
④境界明瞭 癌
「境界明瞭」としましたが、よーく見ると一部「境界不明瞭」な部分があります。
≪境界不明瞭≫
境界明瞭が「腫瘤(シコリ)」だけにしか用いられない表現であるのに対し、
境界不明瞭という表現には「境界不明瞭の腫瘤(シコリ)」と「腫瘤非形成病変」の両方に用いられます。
≪境界不明瞭な腫瘤≫
①境界不明瞭な腫瘤 癌
典型的な癌の画像です。(カテゴリー5)
八頭状とも表現されます。
②境界不明瞭な腫瘤 癌
これも、かなり歪な形状してますね。(カテゴリー5)
不整形とも表現されます。
③境界不明瞭な腫瘤 癌
画像的には①に似ていますね(八頭状)
カテゴリー5
この症例は①②とは異なり、「前方境界線の断裂」という決定的な癌所見があります。
前方境界線とは「乳腺の表面のライン」であり、良性腫瘍は絶対にこれを破りません。(つまり乳腺内に留まる)
それに対し、癌ではこれを破るケースがあるのです。(①②のようにこれを破らない癌も多い)
①の癌の前方境界線
このケースでは「前方境界線を破っていない」ことが解ります。
★前方境界線の断裂は癌の「十分条件」であって、「必要条件ではない」ことが解りますね。
≪腫瘤非形成性病変≫
腫瘤(シコリ)には境界「明瞭」と境界「不明瞭」があることを示しました。
それでは「腫瘤非形成性病変」は、どうか? 答え『腫瘤非形成性病変は全て「境界不明瞭」です。』
①腫瘤非形成性病変 乳腺症
これは乳腺症でしたが(MMTEで確認)病変が境界明瞭ではなく、
『この辺からこの辺』だということは解りますね?
つまり「境界不明瞭」なのです。
②腫瘤非形成性病変 乳腺症
これも「乳腺症」ですが、「腫瘤非形成性病変」ですから、当然「境界不明瞭」です。
③腫瘤非形成性病変 癌
これは「癌」です。
いわゆる「小腫瘤集簇」と表現されます。
このような画像所見の「乳腺症」もあります。
♯ 小腫瘤集簇も、「腫瘤非形成性病変」の一つです。
④腫瘤非形成性病変 癌
これも「癌」でしたが、境界不明瞭ですよね?
表現するなら「乳管拡張の集簇」タイプの「腫瘤非形成性病変」となります。
⑤腫瘤非形成性病変 癌
これも「腫瘤非形成性病変」です。
乳腺症は「腫瘤(シコリ)」ではなく、全て「腫瘤非形成性病変」となります。
つまり、「乳腺症とは(全て)境界不明瞭」なのです。