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今週のコラム 213回目 つまり、「乳腺症とは(全て)境界不明瞭」なのです。

最近「乳腺症」の質問(Q)が多く、今回もそんなQに回答している中でコラムの内容が決まりました。

 

具体的には…

『Q&A8044 境界が不明瞭な乳腺症?』『Q&A8048 低エコー領域とは』を回答していて

『Q&A8055 乳腺症 判定』にも、ありました!

 

境界不明瞭という語句を勘違いされていることに気付き、これを解説することにしたのです。

 

「腫瘤の境界不明瞭」と「腫瘤非形成性病変の境界不明瞭」では意味が全く異なることを理解していただきたい。

 

今回、このコラムを書き上げるにあたって、先週1週間の外来患者さんの画像を見なおしました。まさに「宝の山」でした。

♯ 今回出す画像は全て「生検(CNB/CELERO/MMTE)」により病理診断が確定しています。

 

 

まず、皆さんが気にされている「境界不明瞭」という表現

いかにも「悪そう?」な表現であり、癌と結びつけて考えられがちです。

「境界不明瞭」を知るには、まずは「境界明瞭」を知ること。

 

≪境界明瞭≫

これは、「腫瘤(しこり)」に対する表現です。

①境界明瞭腫瘤 線維腺腫

 

②境界明瞭腫瘤 線維腺腫

 

③境界明瞭腫瘤 癌

 

 

 

境界明瞭でも癌はあるのです。(画像は②と似てますね?)

 

 

 

 

 

 

④境界明瞭 癌

 

「境界明瞭」としましたが、よーく見ると一部「境界不明瞭」な部分があります。

 

 

 

 

 

 

≪境界不明瞭≫

境界明瞭が「腫瘤(シコリ)」だけにしか用いられない表現であるのに対し、

境界不明瞭という表現には「境界不明瞭の腫瘤(シコリ)」と「腫瘤非形成病変」の両方に用いられます。

≪境界不明瞭な腫瘤≫

①境界不明瞭な腫瘤 癌

 

典型的な癌の画像です。(カテゴリー5)

八頭状とも表現されます。

 

 

 

 

 

②境界不明瞭な腫瘤 癌

 

これも、かなり歪な形状してますね。(カテゴリー5)

不整形とも表現されます。

 

 

 

 

 

③境界不明瞭な腫瘤 癌

 

画像的には①に似ていますね(八頭状)

カテゴリー5

 

 

 

 

 

 

この症例は①②とは異なり、「前方境界線の断裂」という決定的な癌所見があります。

前方境界線とは「乳腺の表面のライン」であり、良性腫瘍は絶対にこれを破りません。(つまり乳腺内に留まる)

それに対し、癌ではこれを破るケースがあるのです。(①②のようにこれを破らない癌も多い)

 

 

 

 

 

①の癌の前方境界線

このケースでは「前方境界線を破っていない」ことが解ります。

★前方境界線の断裂は癌の「十分条件」であって、「必要条件ではない」ことが解りますね。

 

 

 

 

≪腫瘤非形成性病変≫

 

腫瘤(シコリ)には境界「明瞭」と境界「不明瞭」があることを示しました。

それでは「腫瘤非形成性病変」は、どうか? 答え『腫瘤非形成性病変は全て「境界不明瞭」です。』

 

 

①腫瘤非形成性病変 乳腺症

 

これは乳腺症でしたが(MMTEで確認)病変が境界明瞭ではなく、

『この辺からこの辺』だということは解りますね?

つまり「境界不明瞭」なのです。

 

②腫瘤非形成性病変 乳腺症

 

これも「乳腺症」ですが、「腫瘤非形成性病変」ですから、当然「境界不明瞭」です。

 

 

 

 

 

③腫瘤非形成性病変 癌

 

これは「癌」です。

いわゆる「小腫瘤集簇」と表現されます。

このような画像所見の「乳腺症」もあります。

♯ 小腫瘤集簇も、「腫瘤非形成性病変」の一つです。

 

 

④腫瘤非形成性病変 癌

 

これも「癌」でしたが、境界不明瞭ですよね?

表現するなら「乳管拡張の集簇」タイプの「腫瘤非形成性病変」となります。

 

 

 

⑤腫瘤非形成性病変 癌

 

これも「腫瘤非形成性病変」です。

 

 

 

 

 

 

乳腺症は「腫瘤(シコリ)」ではなく、全て「腫瘤非形成性病変」となります。

つまり、「乳腺症とは(全て)境界不明瞭」なのです。