Site Overlay

今週のコラム 202回目 炎症性乳癌は通常腫瘤を認めず、皮膚のび漫性発赤、浮腫、硬結を示すものであり、腫瘤の増大、進展に伴う局所的な皮膚の発赤や浮腫を示す場合はこれに含めない。

みなさん、こんにちは。

随分、涼しくなりました。

台風

先週、月曜日大変でした。

外の暴風雨を見ながら…

「これは、スタッフの出勤が遅れて手術開始が遅れるかな?」(私自身は朝早いので台風が来る前に病院に到着していました)

しかし事態は私の想定を軽々と超えてきます。

 

am6時前。「停電」 急に「真っ暗」となり(なかなか)復旧しません。

非常電源で暗いam7時前。

エコーしに患者さん達を廻りながら、「今日は中止になるかもしれません。少なくとも大幅に遅れたスタートにはなります。」

その後の情報で、「午前中の復旧は難しそうだ。午後からは大丈夫かもしれない」

患者さんに「一縷の希望」を伝えていたのですが…

(大変残念なことでしたが)最終的に「手術は終日停止」に決まりました。

『遠方から来ている患者さんも多いのに、申し訳ない。』

麻酔科医と協議し、土曜日手術させてもらえることに。

 

土曜日の市川外来を調整して、pm2時からの手術スタート

こうして台風に翻弄され続けた私の1週間は終わったのです。

 

 

 

同じ日(9月9日)に偶然似たようなQがありました。

「Q&A 2019年09月09日4 炎症性乳ガンでは?」及び「2019年09月09日1 赤みが引かない」です。

お二人ともに「限局」的な皮膚発赤を「炎症性乳癌?」という不安なのです。

 

「炎症性乳癌」については、「あるあるQ」の『36 炎症性乳癌について   管理番号7358 トリプルネガティヴ治療中を参照してください。』に記載しました。

その「誤り」の多くが「皮膚の発赤=炎症性乳癌?」という勘違いです。(ネットの情報も、これを「後押し」している?)

紛らわしいケースをご紹介しましょう。

1.皮膚への直接浸潤

腫瘍が皮膚に浸潤して皮膚を破り、「顔をだしている」状態

皮膚浸潤はT4bとなります。 炎症性乳癌(T4d)はあくまでも皮膚の「び漫性」発赤なのです。

以下、乳癌取り扱い規約より抜粋

炎症性乳癌は通常腫瘤を認めず、皮膚のび漫性発赤、浮腫、硬結を示すものであり、腫瘤の増大、進展に伴う局所的な皮膚の発赤や浮腫を示す場合はこれに含めない。

[caption id=”attachment_45556″ align=”alignleft” width=”150″] DSC_0089[/caption]

 

つまり、これは「癌の直接浸潤」=T4bなのです。

 

 

 

 

2.腫瘍の皮膚浸潤

 

これは(1とはことなり)潰瘍形成していませんが、やはり「腫瘍が直上の皮膚を圧迫しながら浸潤」しています。

比較的広いですが、び漫性ではなく、これもT4b

 

 

3.腫瘍による圧迫浮腫による発赤

[caption id=”attachment_45558″ align=”alignleft” width=”150″] DSC_0066[/caption]

 

これは腫瘍が皮膚を圧迫(直接浸潤はない)したことで発赤となっていますが、あくまでも「腫瘍の直上」であり、び漫性ではありません。

これも(2同様)T4b

 

 

4.葉状腫瘍による皮膚所見

[caption id=”attachment_45559″ align=”alignleft” width=”150″] DSC_0126[/caption]

 

これは悪性葉状腫瘍

腫瘍が直接浸潤(2か所)している所見です。

 

 

[caption id=”attachment_45560″ align=”alignleft” width=”150″] DSC_0038[/caption]

 

これも悪性葉状腫瘍

増大した腫瘍により引き延ばされた皮膚に浸潤を認めますが、あくまでも腫瘍による直接の所見です。

 

 

5.広範囲の炎症による、一見「炎症性乳癌」様所見

 

これが「炎症性乳癌」を疑わせる所見です。

①乳房全体が赤い

②皮膚全体がゴワゴワ

③しこりが存在しない(エコーで見ると「病変?」的なものは認めるが上記1~4とはことなり「はっきりとしたシコリ」が無い)

 

 

ただし、よく見ると皮膚に傷(⇒部)があります。

実際は、「傷からの炎症が広範に広がった」ただの乳腺炎でした。

★この傷さえ無ければ「典型的な」炎症性乳癌の所見です。

私でさえも最初は「炎症性乳癌?」と疑いました。(傷があっても、それだけでは否定しきれないからです)

エコーで見える「病変」的な部位をMMTEで組織診して「炎症」そして抗生剤で治癒しました。