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今週のコラム 203回目 難関症例のレベルが違うことに愕然とした3症例

2週連続の月曜日祝日

台風が来ています。

九州、西日本は大変な状況のようです。十分お気をつけください。

交通機関の混乱を考えると、祝日で良かったとも言えますが。

ここ東京は晴れています。

自然災害の多い近年、「平穏な日々の幸せ」を改めて感じます。

 

 

〇本編

ST-MMT 難関症例

introduction

ここで、少し過去に遡ろうと思う。

乳癌患者数が今の1/10程度で外科の一分野だった25年前。(私がまだ外科研修医だった頃の話です)

マンモグラフィーの「石灰化」所見に乳癌と関連(将来的に「癌としてシコリを形成」)するものがある 注 1 )ことは知られていました。

注 1 )乳癌と関連した石灰化は、石灰化のうちの「極一部」です。その殆ど(99%以上)は乳腺症など分泌と関連するものです。

ST-MMTの時代

その当時は、どう(診断)していたのか?

殆どの外科医は「経過観察」としていました。『シコリになってから診断すれば十分』そんな時代でした。(乳がん専門医など存在しなかった時代です)

 

そんな時代でしたが(今でも覚えているのですが)私が勤務していた病院の先輩医師(乳腺専門ではありません)から

『こんな(アメリカの)ビデオがあるんだけど、見てみる? 石灰化を針で取るんだってさ!(何か、変だよね? というニュアンス)』

何と、そんな昔に(アメリカには)ST-MMTが存在していたのです。

その当時(日本では)「将来、石灰化の診断手技として(ST-MMTが)一般的なものとなる」など誰も想像していませんでしたし、そのビデオの事は、それっきり忘れていました

 

石灰化の外科的生検の時代

しかし、時代はすすみ私が〇〇公〇病院に赴任したころ(それでも、15年以上前ですが)には乳癌が急増し始めていました。

その当時(東北では稀な)乳がん専門病院化(実際は乳癌だけではありません。念のため)していたその病院には木〇先生、平〇先生という別格が存在したのです。

彼らは、(通常なら経過観察とされる)小さな石灰化も「外科的生検」で容易に診断していました。(それまで在籍していた大学病院では見たことがなく、最初は度肝を抜かれました)

どうやるのか?

⇒MMGで位置を割り出し、経験に基づいて(石灰化を起こしている)まさにその部位を見事に(外科的)生検していたのです。

ただ、(神業のような)両医師にとっても「外科的生検を気軽に行う」というわけにもいかず、対象は絞られていたのが実情(つまり癌を疑う症例に限られていた)

 

ST-MMTの時代

そんな中、ST-MMTの時代が幕を開けます。

2005  (今でも忘れられない)名古屋出張

平〇医師『当院でもST-MMTを導入することにした。 放射線技師も重要だから皆で(結構な大人数です)名古屋に出張だ!』

その当時「売り出し中の」愛〇県立が〇センターの岩〇医師 注 2 )(今では「重鎮」的な存在となっていますね)が自ら、いろいろ手ほどきをしてくれていたことを(14年も前なのに!)鮮明に覚えています。

注 2 )今でもそうですが、(当時も)とってもフランクな(そしてユーモアのある)医師でした。

 

東〇公〇時代のST-MMT

もともと乳癌症例数が多く、有名だった東〇公〇病院でしたから、(仙〇どころか)宮〇県内全域から石灰化症例が集まるようになり、

(そんな仙〇時代に)あっという間にST-MMT症例数は1000を超え(当時、東北No.1)、その後江戸川へ移動して5年間(もうカウントするのはやめました)かなりの症例数となっています。

 

特に、QandA効果もあり、「他院でできない」と言われた所謂「難関症例」を日常的に行うことで(時には2hくらいかかって採取したこともあります)「マンモグラフィーに写っている石灰化に採れないものはない」と確信するに至ったのです。

 

〇難関症例の条件

①位置 胸壁に近い(つまり引っ張り出しにくい位置)ほどやりにくい

②石灰化が淡い(ターゲットを見失いがちになる)

③乳腺が薄い(薄いと針が突き抜けてしまう)

 

まず、とにかく大変なのは①です。

「採取可能範囲まで」ににかく引っ張り出せないことには勝負になりません。

ここは技師さんの力に依るところも大きいのですが、やはり指揮を執る立場にある医師の判断が重要となります。

技師たちに『ここを、もっと引っ張れる筈だ』とか(逆に)『これ以上は限界だから、(ギリギリの位置だが)これで行う』など、経験値がものをいうのです。

 

②に関しては…

どんなに淡くても、(MMGで映っていたのだから)『結局、見える筈』まさにその通りなのです。

③は…

「生食法」や「底上げ法」を駆使すれば(実際には、それらを使う機会は殆どありませんが)解決します。

『今週のコラム 78回目 この間、何回も引っ張られたりして大変な思いをした患者さんですが、得られたのも(我々ではなく)「患者さんの勝利」なのです。』をご参考にしてください。

 

〇実症例の提示

他院で「難関症例」として「ST-MMTを諦めた」り、「実際にST-MMTをtryして、できなかった」症例。

そのような症例が紹介されると、さすがに私も身構えます。『今日は、結構大変だぞ。』と。

 

最近、立て続けに「難関症例」として紹介されたが、実際には大したことは無かった(普通にできた)3症例を提示します。(しかも結局、癌だったので記憶に強く残っているのです)

「他院と、当院では難関症例のレベルが違うことに愕然とした3症例」とも言えます。

 

 

症例 1

Aさん 20歳代後半 女性

2年前2mmの浸潤癌で温存術 断端陰性だが乳頭側に近接していた 注 3 )

定期検査のマンモグラフィーで、術後の(特に乳頭側)の部位に石灰化 注 4 )

主治医に「部位的に(端に近い)からST-MMTは難しい」とMRI撮影しフォローとなったが心配で当院を受診。

point

1.術後の部位なので、鑑別すべきは「(術後の)異栄養性石灰化」となります。

2.ただ、注 3 )及び注 4 )から、もともと乳頭側断端に(陰性ながら)riskがあり、まさに「その部位」に石灰化が出現している。

 

そして「当院の技師がST-MMTは皮膚に近く難しいと判断したため(ST-MMTは)施行できず」(紹介状から抜粋)とありました。

 

実際の私の感想

「皮膚に近いから難しい」とあるけど、それは大したことではない。(実際には殆ど問題になりません)

実際には乳頭に近いので「引っ張りだしやすい」し、「石灰化もはっきりしている」のだから難関でもないのでは?

⇒実際、難関ではありませんでした。 記録では15:30開始で標本採取が15:55となっています。

 

実際のMLO方向のマンモグラフィー

 

 

 

 

 

 

 

CC方向のマンモグラフィー

手術部位近傍なので皮膚が肥厚しているのが解ります。

 

 

 

 

 

 

 

症例 2 Bさん 40代半ば 女性

東南アジア在住

2018/10月の検診で左石灰化指摘

(現地で)ST-MMT3回トライするも「胸の厚み」や「石灰化が不明瞭」でできず。

 

実際にマンモを見るまでは…

(海外の医療技術の程度は不明とはいえ)3回もtryしてできなかったからには「本物の難関症例に違いない」と思っていた。

実際にマンモを見ると…

『そんなに難しくはないのでは?』

その理由は、「胸壁には近くない」し意外と「石灰化も淡くない」乳房の厚さにかんしては、「底上げ」や「生食」で対処できるし…

 

〇実際のST-MMT

「厚み」はギリギリ大丈夫(底上げも生食も不要)、石灰化も見失うことなく、15:30開始で標本採取はなんと「15:48」 全く難関症例ではありませんでした。

 

MLO方向

意外と石灰化は淡くない

 

 

 

 

 

 

CC方向

実際に採取してみると(ST-MMT標本参照)

結構、解りやすい(淡くない)石灰化でした。

 

 

 

 

 

 

症例 3 Cさん 40代後半 女性

2019年4月マンモグラフィーで3粒の石灰化、要精査

6月〇〇市立大学病院(中京圏)でST-MMTを試みるが「石灰化が少ない」「淡い」ため採取不能と言われ経過観察となる。

 

実際にマンモを見ると…

『これは、難関ではないな!』正直そう思ったし、その場で患者さんにも、そう言いました。『あっさり採れると思いますよ。』

その理由は、

・ポジションが「胸壁に近くない(引っ張り出しやすい)」

・(前医で)「淡い」とのことだが、(私から見ると)この程度の石灰化は「淡いうちに入らない(見失うことはない)」

〇実際のST-MMT

全く問題なく、ごく「普通に」採取できました。

 

MLO方向

私にとっては、普通な感じ(むしろ引っ張り出しやすそうなイメージ)

 

 

 

 

 

 

CC方向

「淡い」とは言っても、「見失うかも?」的なレベルではありません。

実際に「あっという間に」採れました。

 

 

 

 

 

 

今回、私が言いたかった(伝えたかった)ことは、唯一つ。

(他院で「採れない」と、言われても)「決して諦めるな!」