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今週のコラム 506回目 究極の乳腺外科医であるために 手術vol. 3 温存手術編

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昨日は暑くなく、屋上を堪能

右 カレーは本格派、南インドの豆カレー 感謝です。

 

左のお皿は、冷凍オクラも冷凍ホウレンソウもその上の「麦飯」も「冷凍海苔巻き鶏肉」も「サバの味噌煮」も全て「セブンイレブン」!

セブンイレブン恐るべし?

 

脱線ストーリー

何故、外科医となったのか?(言い換えれば、何故外科を選択したのか?)

突然ですが、少々お付き合いください。

日本の医師研修制度も、コロコロ変わるから(当時は)現在とは全く異なります。

当時、31年前…

『思えば遠くへ来たもんだ いつもこういうシチュエーションで頭の中に登場するフレーズ、世代だなぁ。(同世代の方達には「あー」でしょ?)

♯思えば遠くへみのもんた も、あるらしいですが。

 

当時の医師研修制度は卒業時点で3つに分かれていました。

1.外科研修医となる(東北大学では、入局せずに一般病院外科で外科研修医として3年間勤務し、研修終了後大学病院へ戻って「入局」する)

2.内科研修医となる(2年研修) 勤務形態は外科と同じ

3.その他(言わゆる、「マイナー科」これは特殊で、大学病院の医局に研修医として最初から「入局」

それが今の研修制度では「一般研修医(○科研修医ではなく)」として数年(ここも初期研修医と後期研修医があるらしい)してから、漸く「それでは、私は外科医になります!」という制度なのです。(らしい) つまり医師になって数年してから自分の特性?や相性?など、「じっくり」選択できるとも言えます。

 

つまり当時は、卒業時点で進路選択を余儀されていたのです。

話が煩雑になりすみません。

 

話を戻します。

私が外科医になった理由

それは… 続きは次回に。(こうご期待 と、言う程のものではありませんが)

 

 

○本文

究極の乳腺外科医

それは診断なのか?手術なのか? いえいえ、両方です。(ここが、消化器外科医のように、診断は消化器内科で、手術は消化器外科で。との大きな違いと言えます。

所謂、「ゆりかごから墓場まで(医療の場で「墓場」という表現は…ですが)」

from the cradle to the grave  もともと社会保障制度のスローガンですが、乳腺外科の診療を理解しやすいのでしばしば用いられます。

 

ある症例

『この結果が多くの方の目に留まり、どなたかのターニングポイントになれば…』

そんな、真摯な思いに後押しされ(今週のコラム 496回目でエコーの精度でAさんとして登場。その診断についてはそこで紹介していますが)ここでは手術の「精度」という観点で紹介します。

今週のコラム 503回目 手術 vol.1では 手術手技でも、その王道を紹介しましたが、今回は、その「精度」に光を当てました。

Aさん

まずは「おさらい」

1.診断の精度

①画像(エコー)診断

 

4mmの所見

その「縦長」がエコー中に目を止めた理由

♯エコーは動画作業なので「目が留まる」ことが「まずは」必要なのです。

 

 

②生検精度

巷?では、よく5mmだと「刺せない(狙えない)」もしくは、「刺したとしても、当たらないかもしれないから経過観察」が溢れかえっているようだけど…

 

本当に、ウンザリするよね。

見える者に「当たらない(もしくは)当たらないかもしれない」という発想から脱却してもらわないと…

言うまでもありませんが、私なら「絶対に」外しません。

♯なので、「確定診断希望メール」ではなく敢えて、「100%確定診断希望メール」としているのです!

 

 

で、勿論当たったんだろうね?

 

勿論。

そして後で(このAさんの)手術病理の結果を示しますが、浸潤径は「僅か」1.5mm

そして、私が行ったCELERO結果もinvasive ductal carcinoma(浸潤性乳管癌)

えっへん<(`^´)> つまり1.5mmの的に当てたということ。

病変の中心部分を正確に狙えば、「自ずと」そうなるのです。

 

◎解ってほしいのですが…

別に「自分の手柄話」をしたいのではなく(ちょっと?はあるかな?)その「あなたが直面している」その医師の診断でいいのか? それを真剣に考えてほしいのです。

5mmは無理』などと言っている「その」医師の診断でいいのか?

その考えを打破してほしいために「敢えて」あなたが「理想とすべき」医療があることを紹介しているのです。

 

2.手術の精度

 

2-1 正面写真

まず、これが実際の「切り出し図」です。

「部分」切除した乳腺全体のサイズが75x60x20mmと記載(病理医)ありますね?

 

 

 

2-2 スライス写真

これをスライスした写真がコレです。

上記「正面」の方向でスライスしています。

♯刺身を切るイメージですね。

スライスA(乳頭方向)~M(末梢側、この場合右乳腺の外側端)の中でH(とGにも僅かに)病変のマーキングがあります。

 

2-3

これを2-1正面写真に投影すると…

このようになります。

腫瘍は(DCISを含めた)全体で8mm

厳密に60mmと8mmの寸法で腫瘍全体(8mm)を赤丸で示しています。

乳頭の真裏(糸で印)はスライスB及びCの位置にあり、そこを超えて(右乳腺の)内側まで乳腺を切除していることが解ります。

 

 

2-4

全体に占める腫瘍の位置関係

 

これだと「十分すぎるほど」マージンがあるね。

術後(温存)照射必要?

 

 

そう思うだろ?

実際に(つい先日ですが)Aさんにも言ったんだよ。

勿論大原則は(温存手術は)術後照射が大前提となってはいるけど、この大きさ(非浸潤癌を含めた病変全体で8mm)では省略もできますよって。

 

 

それで、Aさんは?

 

 

少し?迷ってたけど、結局照射することにして(当院では16回)放射線科の画入り予約もとったよ。

でも、(もしかするとですが)上記2-4を見て

『やっぱり、要らないかな?』って、思うかもしれないね。

感覚は大事だと思う。

 

3.温存乳房内再発は何故起こるのか?

温存乳房内再発は「10年で(放射線照射を前提で)5%」と言われています。

ただ、それは以下のようなケースも含まれていることをよく認識してください。

 

3-1

腫瘍が「端に」よっていてマージンは陰性だとしても、近いケース

 

3-2

腫瘍が大きいが温存したケース

取り切れている(マージンがある)けど、やはり腫瘍が小さくて十分なマージンがあるケースと(温存乳房内再発率が)同じと言う訳にはいかないことは「感覚的に」このように視覚化すると解ると思います。

 

また術者側の問題として、乳頭直下まで切除しない温存手術では

 

3-3

このように、(乳頭直下まで)乳管内進展している部分が「取り残されて」いる場合は乳房内再発high riskとなります。

♯1腺管くらいだと、病理スライスで捉えきれこともあるのです。

つまり病理結果は「陰性」しかし実際には陽性

また、「skip病変」もあります。

何故なら(最初は)連続していても壊死を起こしてしまい「非」連続となることもあるからです。(石灰化はそのような壊死した癌細胞にできるわけだから実際に壊死がおこることも理解できます。)

 

実際には上記3-1~3-3のようなものまで含めての温存乳房内再発率なわけだから、Aさんのケース(写真2-4)が如何に温存乳房内再発率が低いことか。

 

特に3-3のケースを過去のコラムから、見返してみましょう。

エコー画像で示したもの(コラム 479)

石灰化画像で示したもの(コラム466)

 

エコー画像

 

詳細はコラム479に戻って確認してください。

明らかに過去の(温存手術部に)再発した癌です。

エコーではその乳管が写っており、初回の手術で(腫瘍より)乳頭側の乳管を切除しなかったために、その部分の乳管に残存していた癌細胞が数年かけて再発したのです。

 

石灰化画像

 

詳細はコラム466をご参照お願します。

初回手術(外国)で、病変部分だけを切除したため、数年後その乳頭側に残存していた癌細胞が増殖し(壊死し)新たに石灰化として認識された。

 

上記の模式図

初回の手術範囲(青色)

残存していた癌細胞が(壊死して石灰化を起こしていなかったため)乳頭側の乳管内に残存していた

これが数年後に「壊死して石灰化をおこしたため」乳房内再発として認識されたのです。

 

当院での手術の実際

これも「当院での診療」やコラム 458に記載ありますが、

このような乳管内進展から起こる断端再発のリスクを極限まで無くした切除範囲

 

 

 

 

 

上記のように記載すると、「乳頭も取るの?」みたいに考えがちですが、乳頭はあくまでも「皮膚」なので「皮膚浸潤」でもないかぎり切除は不要です。

 

これを図にすると

このようになります。

実際には乳管に癌細胞は残りませんが、乳頭を切除する必要は無いのです。

 

 

 

 

 

 

 

Aさんの症例 診断⇒手術

から、そのまま「真に安全な温存手術とは?」まで結構長くなりましたが…(時間もかかりました。)

いちど、このように纏めると見やすくて(そして、後日引用するさいに)『今週のコラム 505参照してください!

などと使いやすいので私にとっても「素敵なコラム」の一つとなりました。

 

究極の手術なんて言うと、

難関手術である「鎖骨下(特に再発)」や「鎖骨上」などが思い浮かぶけど、

誰にもできるかのように見える「温存手術」にこそ、その源流ありだね!

 

謎雄君、その通り。

一見簡単に見える手術も実は奥が深い。

外科医たる者、病変を取り切る

それに全身全霊をかけなくてはいけないのです。

「いい加減でいい手術などない」そういうことです。

 

次回は「全摘」についてのポイントにするか、(もしくは)20日生ライブ配信のBNCTにするのか?私自身も現時点では不明である。