こんにちは。田澤です。
「あるあるQ」で「乳腺症」についてコメントしてから、「乳腺症」についてのQが明らかに増加しました。
Q&A7698 乳腺症が怖いのです。
その『乳腺症と言われたら、全例MMTEしなくてはいけないのか?』で記載した分類(以下)
1.100%癌ではないと断言できる。
2.良性の可能性が高いが「癌ではない」とは言い切れない (これが、「乳腺症だと思うけど、経過観察」と言われるケース)
3.癌との鑑別が難しい(癌の可能性もありそう)
上記コラムでは(2どころか3さえも)MMTEしようとしない(その乳腺外科医)こそ「元凶」とコメントしましたが…
★もっと、問題なのは自分自身でエコーしていない(技師エコーをみるだけで)「US所見を(そもそも)上記1~3に正しく分類できるのか?」というもっと根源的な問題がありそうです。
超音波は(そもそも)それを行う人によって、いくらでも「怪しくも」(逆に)「怪しくなさそうにも」撮れてしまうのです。
〇本編
前回、再発治療を開始したBさんとCさん。まずはBさんから「その後」を見てみましょう。
・Bさん luminal(HER2陰性) 骨、リンパ節転移
先日、radiationを終了(7/22 ~8/26)し本日(9/3)より化学療法開始です。
私『今日からEC開始です。プリントは読んできましたか?』
Bさん『はい。(3年前に)TCやってるんだけど、何が違うの?』
私『E(anthracycline系抗がん剤)とT(taxane系抗がん剤)の違いです。 注 9 )』
注 9 )新規抗がん剤やCDK4/6阻害剤など、選択肢が増えている乳がん治療ですが、20年前からkey drugはanthracyclineとtaxaneなのです。
この2剤だけが「術後補助療法として適応がある」ことからも別格の存在であることが解ります。
・anthracycline系
E(Epirubicin)とA(Adriamycin 別名doxorubicin)があり、F(5-Fu)やC(cyclophosphamide)との組み合わせで
EC / FEC / AC / FAC などのregimenとして使用される。
・taxane系
docetaxelとpaclitaxelがある。(他にnab-paclitaxel 商品名 Abraxaneがあるが、添付文章に「本剤の手術の補助化学療法における有効性及び安全性は確立していない」と記載あり)
docetaxelは3週間に1回のregimenであり(毎週投与は認められていない)、paclitaxelは毎週のregimen(3週間に1回のregimenは効果が劣る)となる。
それぞれ単剤で使用されるが、docetaxelはcyclophosphamideと併用するregimen「T(docetaxel)C(cyclophosphamide)」として知られている。
Bさん『(3年前はtaxaneを使っているので)今回は、もうひとつのkey drugとしてanthracyclineを使うってわけね。副作用の違いは?(taxaneと)似てるの?』
私『かなり違います。 注 10 )』
注 10 )anthracyclineとtaxaneの副作用の違い
・最大の違い
anthracyclineは「消化器症状(吐き気)」がメインとなるが、taxaneは「だるさ、筋肉痛、(蓄積すると)痺れ、浮腫み」がメインとなる。
anthracyclineの嘔気は、患者さんから(かつては)『あの「赤」を見るだけで吐いてしまう』と「最強」と恐れられていましたが、Aprepitantなど強力な制吐剤で状況が一変しました。
もともと吐気に強い人にとっては、(taxaneの蓄積される様々な症状よりも)副作用がシンプルであり「楽」と感じるケースも増えているように感じます。
・脱毛
両者ともにありますが、anthracycline > taxaneのようです。(anthracyclineからtaxaneに変更した際に「髪の毛が生えてきた」とよく言われます)
・生涯投与量
anthracyclineには(蓄積性の)心毒性が知られており、Eでは900mg/m2の生涯投与量の制限があります。(taxaneにはありません)
心毒性のためにtrastuzumabとanthracyclineは同時併用はしません。(taxaneは行います)
例) EC x 4 ⇒ trastuzumab+docetaxel x 4 ⇒trastuzumab x 14 など
〇11/5
それほどの副作用もなく、順調にECが行われました。(9/3 1回目、9/24 2回目、10/15 3回目、11/5 4回目)
『いよいよ、今日で4回目です。今日の腫瘍マーカーCEAは4.5と正常値に入りました。おめでとうございます。』
放射線中はCEA上昇していますが、(放射線の効果は)数か月かかります。
ECにより急激に改善していることが解ります。
『わーっ、良かった。頑張った甲斐があります。』
『それでは、今後予定についてです。3週間後(11/26)~palbociclib + Fulvestrantを開始します。 現在は化学療法閉経の状態ですね?』
『そうなんです。術後TC2回目後から(閉経状態が)続いています。』
『もしも、(月経が)再開したら教えてください。その際にはLH-RHagonistも併用します。』
『副作用はどうなんですか?』
『随分、楽ですよ。白血球は下がりやすいですが(抗がん剤とは異なり)熱が出たり、具合が悪くなったりはしません。あとは軽度の口内炎くらいです。』
『良かった。続けられそうです。
EC中は、仕事休んだけど、再開するつもりです。palbociclibは大丈夫よね?』
『全然問題ありません。パンフレットと日誌渡しておきます。よく読んでおいてください。』
〇11/26 palbociclib開始当日
『今日から開始です。投与スケジュールは3週内服、1週休薬となります。Fulvestrantは最初の1か月は2週間毎、その後は4w間隔となります。』
最初の1か月だけ、2wで通院が必要ですが、そこからは4w間隔となります。
F : Fulvestrant
『解りました。次回は2週間後ですね?』
『その通りです。palbociclibも2週間処方します。1回1カプセル(125mg)です。次回(2週間後)も採血します。白血球(好中球)が低下していれば減薬となります。』
『了解です。』
〇12/10(2w後)
『どうでした?』
『全然大丈夫でした。採血結果どうでした?』
『wbc2200 好中球(50% 1100)でした。ぎりぎりGrade2ですが、3に近いです。放射線⇒抗がん剤に引き続いているので仕方がありません。減薬しましょう。 注 11 )』
注 11 )添付文章上Grade1及び2は、そのままの量で継続ですが… 経験上この値だと次はGrade3となり休薬に追い込まれます。
Grade3だとしてGrade2以上に回復するまで「休薬」となります。(回復まで長い期間が罹った場合、再開時に「減薬」となります)
『1カプセル(125mg)⇒4カプセル(25mg)となり125mg⇒100mgへの減量となります。』
左が125mg 、右が25mg のカプセルです。