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今週のコラム 514回目 乳腺外科医としての幅

こんにちは。田澤です。

ここ最近は(も?)いろいろなことが起こります。

数年前にしこりを見つけたがご高齢のために手術を断られ(当時91歳)、腫瘍が皮膚から潰瘍となり出血し始めると(これで何とかしてくださいとばかりに?)アドナとトランサミン(所謂、止血剤です)を処方され、いよいよ頻回に出血し始め家族も困り再度手術をお願いしても、(数年前に91歳で断った医者が)それより「数年、歳を重ねた」患者さんの手術にgo signを出すこともなく、ご家族はたいそう困り『そして僕は途方に暮れる(by 大沢誉志幸)』、かなり遠方(西日本)から、はるばるたどり着いのがこのお江戸

手術相談メールを経て、

高齢を重ねた患者さんをお江戸まで(駕籠で?)お連れするのも一苦労。まずは診察。

DSC_1460

 

♯ ショッキング画像にならないように、白黒にしてみました。

 

皮膚欠損潰瘍部は大きなしこりとなって(一見、手術不能に思えたが…)周りの皮膚が突っ張らずに余裕がありそうなことに注目。

 

私の出した結論は手術可能。

ただ手術待ちの1か月の間、いろいろありました(ご家族に)

出血して「なかなか止まらない」と外来受診もありましたし、近く(とはいっても隣県ですが)に滞在しつつだったのでその滞在先の近医へ駈け込んだり

私は私で、手術が近づくにつれ「その間の出血で少しでも貧血になっていたら麻酔科からNo! と言われてしまう」と心配し(もしもの際には直前に輸血をしてでも…)と考え手術少し前には採血したりして(結局輸血には至りませんでした)

ご家族も(私も)ハラハラしながら無事に迎えた手術。 本当によかった。ご家族の何年か越しの願いも叶ったのでした。

 

はたまた、ぐんぐん大きくなる葉状腫瘍。しかも若年!

手術まで1か月待ちでは、どうなってしまうのか(私にも)自身がない!

麻酔科医、何とかなりませんか~。

と、実現した土曜日手術(私の勘違いでなければ、数年前、自然災害で江戸川病院の電源がダメになり中止となった手術を土曜日にしたことがあったような気がしますが、それ以来となります。)

 

やはり、私が立ち上がらなければ! そんな思いの中、本日のコラムが幕を開けます。

 

〇本文

 

乳腺外科医としての「幅」とは?

 

まずは、この画像をみてください。

 紹介時のエコー

2cmの腫瘍

 

そこではMRIも撮影しています。

腫瘍は超音波でも(MRI同様に)乳管内への拡がりを認めます。

 

 

 

この方は紹介されてきたのですが、なんと「半年間、経過観察」したうえの紹介でした。

『えっ! 半年間経過観察??』

ちょっと、びっくりしました。

現時点で2cm(乳管内の拡がりまで合わせれば5cm以上あります)

流石に半年前にも十分に乳癌を疑うべき所見だっただろ!

と、(紹介時には、その半年前の画像所見が提供されてなかったので)半年前の画像を提供してください。と取り寄せました。

 

しかし、(送られてきた)エコー画像は「検診でひっかかり半年としたわけだから」当然何らかの所見がなくてはないのですが、正常なエコーしかなかったのです!

「隠したな!」半年前のその時点で当然「癌を疑うべき所見があったはず」なのですが、それを提供すると「やっぱり、半年前で十分癌の所見だよ」と指摘されるのを避けたようです。

 

半年間で、ここまで大きくなるような所見を癌と診断できずに「半年間育て、明らかに癌としか思えない」状態となって初めて癌と診断する。

その医師の乳腺外科医としての「幅」としてのstart

1.小さいうちは診断できない

 

そして、それらの医師の乳腺外科医としての「幅」のfinishは、

2.手術できるのは早期だけ

 

このような医師が、手術の対象として「厳選」するのが、このような

小さな」腫瘍

そして「転移なさそうな」リンパ節

 

 

そのような医師は、決してこのような症例を手術できるとは考えも及びません。

 

大きな腫瘍

奥にある「黒い部分」全体が腫瘍です。

皮膚は浮腫状に肥厚し、皮膚へ向かて浸潤している像があります。

 

 

 

 

 

 

大きな(転移した)リンパ節

 

 

 

 

 

リンパ節が「節外」浸潤を起こし「癒合」しています。

 

 

 

 

 

 鎖骨下(レベルⅢ)にも、こんな大きなんパ節が…

 

PETでみると…

 

 リンパ節は癒合しています。

 

このような症例に手術ができるであろうとは、「そもそも」彼らには想像ができないのです。

 

ただ、手術できる私にとってはたとえこの方が

 

このように「胸骨」や「肺門リンパ節」に転移していても

 

 

 

iliumに転移を認めても…

 

それらの医師のようには「この患者さんが、手に負えない状態には全く思えない」のです。

 

乳腺外科医としての幅

それは

start どんな小さなものでも診断し、 finish どんな大きな腫瘍やリンパ節の転移でも手術ができる こと。

 

その幅をもった私からみれば、上記のような患者さんも決して「治らないようには写らない」のに対し、

その幅を持たない医師にとっては、(同じ患者さんも)「治療の対象には思えないほどの重篤な状況に写る」

究極的に言えば、何故(そのような乳腺外科医は)簡単に治療を放り出す(余命を言い出したり、治らないから手術はしないなどと簡単に言う)のかその理由は

乳腺外科医としての幅があまりにも小さすぎて、自分の治療対象がとてつもなく狭い。そういうことではないでしょうか?

 

Coming soon !

さて、いよいよ次回の動画配信が来週に迫ってきました!

そこでお話をしてくれる方は、地元で「幅の狭い」医師により治療を(本人から見れば)投げ出されたが、諦めずに江戸川病院へたどり着いた「諦めざる人」です。

今まさに「治療の幅が狭い」医師から突き付けられた選択に悩む全国にあまたいらっしゃるはずの(潜在的な)諦めざる人たちへ響けー!!