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今週のコラム 342回目 その「手術不能」の判断が患者さんの運命を変えてしまう。

昨日の市川帰りのランニング中には少し雨が降りましたが…

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その後、雨は上がり無事に屋上を満喫!

最近はラーメンが旨過ぎて…

パンとのコラボで最強の「炭水化物コンビ」を結成しています。

平日は炭水化物控えているから、やっぱり食べたくなるのです!

昨日はタンドリーチキンをスパイスで一晩つけているので屋上できたらいいなぁ。

今、日曜日7:49 大丈夫そうです。(現時点では)

 

〇 本文

 

『Q&A 2022年05月16日4 リンパ節郭清について』からの抜粋

Q 今週主治医に会うのですが、主治医に手術できないと言われた場合其

方の病院で手術してもらうことは可能ですか?

 

A ⇒それは可能です。

鎖骨下郭清(レベルⅢ郭清)の再手術は、(正直言って)私にしかできないと思います。(主治医はやらないでしょう)

 

 

『何? そこまで自信満々? (言ってて)恥ずかしくない?』

 

 

 

私も(結構、色黒とはいえ (笑)日本人。

(外国人のようには)自己主張できないし、その点では生粋の日本人。

だからこそ、そこまで言うには、「積りに積もった」思いがあるのです。

 

皆さん、ちょっと想像してみてください。

手術終了後、患者さんに「術後の話」をするのですが…

(実際に、最近の患者さんへ以下のようにお話ししました)

★『本当に、うち(当院)に来て幸運でした。地元では「手術はできない」とのことでしたが、(ありえないことですが)もしも地元の医師が執刀していたら、結局(手が付けられずに)撤退したことでしょう。』

 

術中、患者さんの運命(少なくとも数年先の予後)は我々、外科医(術者)に委ねられています。

それを強く感じるのが(他で手術不能と言われて、当院へ)転院してきた方の手術

術後20年以上過ぎての鎖骨下再発。

術前(エコー)画像では、重要血管(鎖骨下静脈)の内腔は保たれ問題無さそうに見えていましたが…

 

実際に手術してみると…

『20年間の瘢痕、恐るべし』

リンパ節はガチガチに硬く癒合、(20年前の手術の影響による瘢痕により)鎖骨下静脈と一塊となっている!

リンパ節を剥がそうにも、鎖骨下静脈の壁が解らないので、(安易な操作では)血管に切り込んでしまうリスクあり。

そう簡単に手は出せない。

(私にしかできないような)直視下の視野での「リンパ節」と「鎖骨下静脈」と「私」の三すくみ状態!

こんな時に『取れない(撤退せざるをえない)かもしれない』

そんな弱気になったら、終わりです。

あらゆる弱気は(強い気持ちで)ねじふせて

 

 

 

術前エコー所見

 

 

 

 

術前エコーを解説すると、こうなります。

エコー像は「断面」ですから、リンパ節と血管(特に腋窩静脈)との間には「境界がある=剥離可能」なように見えます。

 

 

 

 

 

綺麗に視野を作れれば…

通常であれば、このような位置関係となり、

 

 

 

リンパ節の剥離① 癒着が無い場合

リンパ節を(持ち上げるだけで)腋窩静脈から剥離して容易に切除できます。

 

 

 

 

しかし、(今回のような)再手術だと、

(前回の手術による)瘢痕により「リンパ節と血管の境界が不明」となります。

実際、今回の術野はこんな感じでした。

リンパ節は見えるが、血管が瘢痕の裏にあり境界が不明!

 

 

 

この場合は、(上記①とは異なり)外れません。

無理やり図のように切り込むと…

腋窩静脈からの大出血=「血の海」となるのです。

 

 

〇 手術不能 inoperable

私が最初に、この言葉に振れたのはTVドラマ「白い巨塔」でした。

財前教授は胃癌の手術。

開腹した執刀医は、(その、あまりの惨状に)『手が付けられない、inoperable このまま閉腹します。

病室で目を覚ました財前に(手術不能で「開けて閉めただけ」なので、あまりに早い時間の帰室に気付かれないように)病室の時計の針を進めるという一幕です。

因みに、これをsecond look operationといいます。

 

 

 

 

 

手術不能 inoperable 同様のケースで(局所治療を)諦めている方は「全国的に」多いと推測しています。
そもそも初回手術でさえも、鎖骨下郭清を避けている医師が多い(QAや、大学病院から当院に手術助手に来てもらっている医師らの話からは「ほぼ全て」の乳腺外科医に鎖骨下郭清の経験がない!)
のに、ましてや「再発」となると「それらの医師が最初から手術を選択肢に入れない」ことは容易に想像(理解)できます。
鎖骨下領域は①「視野が悪く」 ②「危険な鎖骨下静脈に接している」という乳癌手術の領域では「唯一のリスク領域」と言えます。

懐かしの「染之助・染太郎」ではないですが、リスクを背負ってまで手術をしても
『これで、ギャラは同じなの』がネック? なのかもしれません。

話は少し脱線しました。

乳がん晩期再発 鎖骨下リンパの手術適応について

[管理番号:10129]
性別:女性
年齢:67
病名:再発乳癌
症状:自覚症状は無し
投稿日:2022年3月6日

西暦2000年に右乳癌で切除術、腹直筋皮弁術を同時に受けました。

ステージは2b腋窩転移で郭清
この時は確かエストロゲン受容体は低くプロゲストロン受容体のみプラスだったと思います。

術後10年で病院でのフォローは終了との事でその後は左に関しては定期的にマンモグラフィーを受けてましたが右のチェックは怠っていました。
今から思えばかかりつけ医を持たなかった事に悔いが残ります。

昨年の市のマンモグラフィーで左の精密検査をいわれ、乳癌で治療を受けた病院で両側のエコー
左は問題無し
右の鎖骨下リンパ節に数個の腫脹あり、細胞診を受けました。

1月造影CT検査で肺、肝臓、骨の転移は今のところは無いとの事
細胞診で悪性、鎖骨下なので病理検査は難しい、晩期再発なのでルミナールタイプと思われる。
1個の鎖骨下リンパ節は節外浸潤で小胸筋にくいこんでいるため全身療法の方針で
アナストロゾールのみの服薬となりました。

CDK4/6阻害剤に関してこちらからお聞したら希望があれば…との事副作用もありますからと言われました。

このまま薬だけでの治療で積極的に何かできないのかと思って先生の鎖骨下リンパ節の手術のYouTube動画を見つけ乳がんプラザを知り今回質問をさせて頂きます。

① 小胸筋に食い込んでいるものも手術適応になりますか。

②もし適応になりそうなら先生に診ていただきたいのですが治療中の病院にセカンオピニオンでの手続をしてからでないと診察は受けられませんか。

先生の治療の取り組みに希望を持ちたいと質問させて頂きました。

どうぞよろしくお願い致します。

 

田澤先生からの回答はこちら