皆さん、こんにちは。
〇新患患者さんの生検
現在、(秘書メール以外の)新患予約をしていない江戸川病院では「水曜日、午前中(8:30~11:30?)」が唯一の新患患者さんの受診の機会となります。
水曜日はもともとの予約(午前は抗がん剤、午後は術後病理説明)があるので、「その合間」に「1週間分の新患患者さん」を診ることになります。
それはそれは、混雑することになります。
水曜日の外来「そりゃ、もう大騒ぎさ 注) 」
注)港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカーの歌詞からインスピレーションを受けたタモリがギャクとしたといわれています。
かつて、(このコラムも書きましたが)0時を超えたのも水曜日でした。
ただ、「同じ轍ははまない」
私なりに対策を立ててきました。(そのうちの一つは予約を絞るという事ですが)それ以上に効果があるのが「新患患者さんの生検」です。
本来は、(生検が必要な場合には)「その場で生検する」これが東〇公〇病院時代からの伝統でした。
江戸川に来た当初も、そのスタンスでいたのですが、ただ患者さんが急増しながらも(それをやっていたので)とんでもない時間超過となってしまったのです。
「今では、どうしているのか?」
(私は)新患患者さんを、エコーしながら以下のように分けます。
1. 絶対に癌
2. 癌の可能性が高いが100%ではない
3. 良性の可能性の方が高いが癌の可能性もある
4. 癌ではない。
このうち、1の方にはエコーしながら「これは(残念ながら)癌です。確定診断のために、組織診しなくてはいけません。」と言うようにしています。
♯ (日本人的に)へんに「ぼかして」伝えると、患者さんの中には「癌であってほしくない→癌でないと思いたい。→癌でない筈だ。」と現実逃避からdrop outして来なくなる患者さんがいるからです。(過去に居たのです)
やはり、「癌という厳しい現実」に敢えて「逃げずに、向き合ってもらう」それが大事だと思っています。
その人たちだけは、(時間を気にしながらも)「その場でCNB(バネ式針生検)」しています。
この群は「病変がしっかりしている」ので診断はCNBで十分なのです。(CNBであれば止血時間も短いので)
それでは2, 3はどうしているのか?
2の場合は…
病変がやや不均一な部分があり、(1と比して)あいまいな所見」なのです。
私は(『私が生検をする以上、100%でなくてはならない』という絶対的スタンスなので)その病変に対して理想的なデバイスを選択しています。
この場合にはMMTEを選択します。(MMTEは不均一な病変でも広範囲に採取することで診断を100%行うことができるのです。)
ただ、MMTEは「広範囲採取する」ことと「かなり太い針で吸引圧もかけている」ので(止血も含めて)時間がかかるのです。
それで、(その場では行わず)生検日を予約して、その日は帰ってもらいます。
3の場合は…
基本的に「線維腺腫」など良性病変を想定しているので、やはり「生検日を後日に予約」しています。
このケースではCELEROで十分です。
「例えば、つい先日の水曜日にはどうだったのか?」
1は2名、2と3で7名位でした。その他30名以上は4でした。
1のお二人は、その場でCNB施行し、2,3の7名は(秘書さんにお願いして)後日、市川予約としました。(勿論2は「緊急性のある日程」で、3は「少し先の日程」としています)
このようにして、現在は6時までに(あの水曜日さえも)外来が終わるようにコントロールしているのです。
〇前回(基本1)では要約すれば「局所療法(術式など)」は拡がり診断(MRIなど)で決まり、「全身療法(薬物療法)」はサブタイプで決まるとお話ししました。
『術前に決めておかなくてはならないもう一つ重要なことは「腋窩リンパ節の取り扱い」です。』
『あぁ。脇のリンパのことね? 取り扱いってどういうこと?』
『まず腋窩リンパ節はエコーで見ます。7)大きく分ければ 「①転移なさそう」「②転移してるかも?」「③転移と判断できる(すべき)」に分けられます。(その判断には)それなりの経験は必要ですが)』
注7) ①2層性を保って(エコー所見では黒と白のツートンカラー)扁平ならば「転移なさそう」と判断します。
②逆に2層性を失い(エコー所見では真っ黒)で、腫大していれば「転移確実」と判断します。
③それに対して、2層性はあるが、皮質(表面の黒い部分)が厚くなって(ツートンではあるが)「カプセルの厚いツートン」だと「反応性?なのか転移?なのか」区別が困難となります。 ♯この③の場合には術前に腋窩細胞診をすることもあります。(ただ手技として比較的難易度が高いので上手くできない医師も多い)
『③の場合には最初から(センチネルリンパ節生検をせずに)腋窩郭清が選択されるし、①②の場合(②で細胞診陽性を除く)センチネルリンパ節生検を行うこととなります。』
『センチネルリンパ節生検って何?』
『(乳腺にある)腫瘍からリンパ管が脇(腋窩)へ流れるわけですが、その入り口のリンパ節をセンチネルリンパ節といいます。そのリンパ節を術中に色素で染色して(その色を指標として)摘出して、迅速診断(病理医にその場で診断してもらう)してもらうことです。』
『そして、どうするの?』
『それを予め話し合って決めておく必要があるのです。』
『どういうこと?』
『センチネルリンパ節の(術中)迅速診断結果がどの場合に追加郭清をするのか。予め同意しておくのです。(麻酔中に、患者さんを起こして確認するわけにはいかないから)』
『大きく分けると1. 微小転移(2mm以下)でも追加郭清する。 2. 微小転移なら郭清省略するが、肉眼的転移(2mm以上)なら郭清する。 3. 肉眼的転移であっても2個以内なら郭清省略する(術後照射が前提)』
『どれが、いいの? 先生のお勧めは?』
『最も一般的なのは上記2(微小転移なら郭清省略)です。当院でも2でやってます。 ただ、希望があれば1でも3でも対応はしています。(それを術前に事前に決めておくのです)』
『それでは私も2を希望するわ。」
『乳腺に関しては(MRIでも限局しているので)温存手術として、センチネルリンパ節生検も微小転移は郭清省略ですね。これで術式が決まりましたね。』
『それでは、今日は全身麻酔のための検査注8) をしていきましょう。次回はサブタイプの結果がでるので、そのお話しと説明同意書入院案内をおこないますね。』
注8) 全身麻酔のための検査とは、「採血、胸部レントゲン、肺機能検査、心電図」となります。 当院では65歳以上は心エコーも必須となってます。
今回は、ここまで。
次回はいよいよ、「サブタイプの説明」、その後が「説明同意書入院案内」です。