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今週のコラム 162回目 実際は、(数年後に)全く新たに発生ではなく、手術時にすでに潜んでいたのです。

今朝も寒かったですね。

東北では雪が降っているとか!(ラジオでのニュースなので映像が見れていません)

考えてみれば(12月9日なのだから)当たり前ですよね?

 

★夏日と雪

先日は(12月なのに)夏日!続出の日本列島。

そして(僅か数日後の)この寒さ、雪。

「何じゃこりゃ」

昭和の時代には、こんなことはありませんでした。

 

 

 

〇再発

乳癌の初期治療の段階では、皆さんに意識してもらいたくは無いのですがQandAを回答していると、これをきちんと理解しないことが、むしろ無駄な心配の種であることに気付きました。

 

(敢えて、目をつぶるより)正しく理解する方が精神的に安泰(無駄な心配に悩むことがない)

そういうことです。

 

1.局所再発と(全身)遠隔転移再発

QandAでもよく回答しますが…

まず、「再発」と一括りにせずに上記2つに明確に分けること。これが最も重要です。

①局所再発

乳腺(温存なら)や胸壁(全摘の場合)

そしてリンパ節(通常、腋窩~胸骨傍、鎖骨上まで)

②(全身)遠隔転移再発

血行性転移である(乳癌の高頻度の順に)骨、肺、肝、脳

 

2.再発の時期

①局所再発

基本的には「手術時の取り残し」となります。

ただし、「乳房内再発」の場合には純粋な「新規(癌の)発生」の可能性もあります。

①-1温存乳房内再発 断端陽性や(乳腺内)多発などがリスクとなります。

術後照射により以下のcase 1~3の(どれかに)なります。

Case 1)癌の残存→照射で消失

Case 2)癌の残存→照射で制御できずに(温存乳房内)再発

Case 3)最初から残存なし→照射は実は無駄な治療           ♯これらのうちcase2が温存乳房内再発となり10年で5%

 

①-2胸壁再発 全摘後であり、基本的には「手術時の取り残し」となります。

手術した時点で「癌細胞」が「皮膚側」もしくは「大胸筋側」に取り残され、これが(時間をかけて)可視化する。

ただし、術者の名誉のために補足すると、(術前の)組織診の際に「皮膚や(裏側の)筋に播種されてしまっている」場合など「不可抗力」なケースもあります。

 

①-3リンパ節再発 腋窩~鎖骨下、鎖骨上、胸骨傍

これも手術した時点で癌細胞が「潜んでいた」ケースです。

Case 1)センチネルリンパ節生検の失敗

本来(転移している)リンパ節を認識できず、転移

していないリンパ節を病理診断→郭清省略となった

Case 2)腋窩郭清不十分

最近「他院でレベル1郭清」→数年後レベル3再発という症例を手術しましたが…

この場合には(初回手術時に)レベル3に転移していたリンパ節を認識できずに残ってしまっていたわけなのです。

 

②遠隔転移再発

★実は、今回のコラムで強調したかったのはココです。

「遠隔転移再発」は「再発」という文字に騙されてしまいますが…

実際は、(数年後に)全く新たに発生ではなく、手術時にすでに潜んでいたのです。(そして、潜んでいた癌細胞がゆっくりと増殖して可視化した)

 

例を出すと…

2000年手術→2005年骨転移出現

この場合には2000年(手術の時点)にすでに骨に癌細胞が潜んでいた(画像で不明)

→5年間かけて(ゆっくり)増大して「画像で確認=遠隔転移再発」なのです。

 

このことが、「乳房温存でも全摘でも予後(遠隔転移再発)は同じ」という理論的根拠となります。

つまり手術は遠隔転移再発とは無関係なのです。

〇手術の時点で運命は決まっているのですが、薬物療法である「術後補助療法」によりそれを変えることができるかもしれません。