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今週のコラム 508回目 ステージⅣ乳癌への挑戦 (本日7/27ライブ配信に向けて)

25日、「鶏肉の会」は滞りなく行われ放射線科との連携はますます強固となりました。

 

〇本文

本日zoomで発表していただく「陽気なペガサス」さん。

■参加方法 ZOOM

■発言内容

③他院で手術できない(もしくは、手術する必要ないと言われ)「それでも自分は手術で取りたいのです」と当院で手術をされた方(ステージⅣ乳癌もしくは、鎖骨下、鎖骨上リンパ節転移など)

(以下はメールでやり取りしていく中で感じた率直な感想)

大手の病院は、治る見込みが薄くて手が掛かるステージ4よりも、標準治療で手離れが良いステージ1, 2の患者のほうが好都合

ステージ4の患者をおざなりにしてしまうところがあるのではないでしょうか。

当時は大手の病院どこに行っても見放されてしまったという気持ちになり、現実を突きつけられひどく落ち込みました。

★実際の体験については、病院名を伏せてお話しして頂きます。

 

経過

 

前医、診断時にPETで発見された「胸骨」転移

 

 

 

〇 当院での治療経過

 

1.手術先行

Bp+SN, pT2=25mm, pN0, luminal

  1. 術前抗がん剤無でも十分「温存可能」
  2. 胸骨転移病変の治療(放射線、薬物療法)は優先順位が高くない。

♯上記1, 2により手術先行で何ら問題無。

 

2.放射線照射

温存乳房+胸骨転移部 42.4Gy/16回

 

3.抗癌剤

anthracycline followed by taxane

ECx4 ⇒ docetaxelx4  終了時 術後8M

 

4.CDK 4/6 inhibitor +hormone therapy

関節痛、こわばり(もともとリウマチ+Letrozoleのside effect ?)

1 クールで休止し、評価へ

 

評価 PET 術後10M

 

胸骨病変に残存あり

(新規無)

 

 

 

 

5.(再)抗癌剤

bevacizumab/paclitaxel

3 cycles 目標でしたが、「痺れ」で 1+2/3 で終了

 

6.(再)CDK 4/6 inhibitor + hormone therapy

リリカ併用

8 クール途中でPET評価

 

評価 PET 術後1y9m

 

(目標であった)cCR 達成!

 

 

 

 

 

 

論点

1.オリゴ転移に対する局所療法の有用性を評価する試験では「オリゴ転移を有するステージⅣ乳癌に対しては原発巣切除を行うこととされており、その意義について再度評価されている。

それら、局所治療(手術、放射線)を組み合わせることで予後を改善させる可能性がある。

⇒(上記ガイドラインがあるのに、)それら大病院では何故「手術不可」としたのか?

これについての「陽気なペガサス」さんの感じた印象が、

大手の病院は、治る見込みが薄くて手が掛かるステージ4よりも、標準治療で手離れが良いステージ1, 2の患者のほうが好都合

ステージ4の患者をおざなりにしてしまうところがあるのではないでしょうか。

 

2.遠隔転移を「一まとめ」にしてステージⅣだから原発巣への手術は無駄(しない)とすることに対して

⇒まず(ガイドラインでも)生存率の上昇は得られないが「良好な局所制御が得られる」ので「局所制御目的の手術は推奨」となっている。

♯病態で全身療法を早急に優先すべき状況(肝転移が大きい、肝転移に伴う肝機能障害が進んでいるとか、呼吸に影響する程の多数で大きな肺転移を有する。など)であれば、「まずは薬物療法、その後手術するかどうかはその薬物療法の効果による」とするのは正しい。

しかしオリゴ転移である「陽気なペガサス」さんの胸骨転移では、たとえ「手術は(現段階では)しない」としたとしても

せめて、『ステージⅣだから、まずは(手術ではなく)薬物療法となる。その効果が高く転移をコントロールできたら、局所制御目的で手術を行う』となるべきでは?

 

〇 まとめ

私は薬物療法の進化を肌で感じています。

ほんの10年前までは、真に頼れる薬剤はanthracycline とtaxaneだけだった。

 

しかし、決定的に革命を起こした薬剤

ルミナールタイプに対しては CDK4/6inhibitor

HER2タイプに対しては trastuzumab-deruxtecan

 

最近登場した同級生(優等生)

更にルミナールタイプには、そのderuxtecanを纏ったdatopotamab deruxtecanが登場し、tripple negativeにはsacituzumab Govitecanが同時期に登場

♯ このsacituzumab Govitecanはとてもいい薬剤で、この年末にもルミナールタイプにも適応拡大するようです。(その場合 sacizutumab govitecan>datopotamab deruxtecanとなりそうです。 海外では差が証明されているので)

 

この薬物療法の進化によって再発治療も変化しており、

以前よりcCRを獲得する割合が増えて、かつその長期維持が可能

その長期予後を考えれば「局所制御がより重要」だと思います。(何故なら乳癌は体表面にあるので手が付けられなくなると、出血や悪臭で著しくQOLを損なうから)

 

今回の「陽気なペガサス」さんのお話しを聞いて、

ステージ4と言われて「消極的な治療に終始し、希望が持てない患者さん達に」その気持ちが届くこと。

やはり、患者さん自身の言葉こそ「より響く」そう思います。