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局所再発

局所再発と言っても実は一括りにはできません。それぞれについて記載します。

①(温存術後の)乳房内再発

これは基本的には(初回)「手術時の取り残し」と解釈されます。

『乳房内再発は(その際に)全摘すれば、最初から全摘したのと予後は同じ。』(これが大原則です)

それを(手術せずに)抗がん剤を勧めるなど「論外」⇒ QA5792 質問3」をご参照ください

 

何故、温存乳房内再発が起こるの?

 

 

 

一番多いのは、「乳頭側断端」からの再発です。

実際、上記「QA5792」でも、(位置的に)そのケースだと思います。

更に例を挙げれば『今週のコラム 203回目 難関症例のレベルが違うことに愕然とした3症例』の症例1も同様のケースです。

癌の乳管内進展を無視した術式だと、おこりえるのです。

 

 

乳癌は、乳管の細胞が癌化して発生するので、(ごく自然に)図のように乳管内を(特に)乳頭方向に進展します。

 

 

「乳管内進展を無視した」温存手術

乳頭側断端から再発(乳房内再発)してしまうことが理解できますね。

 

 

 

「乳管内伸展を考慮した」温存手術

温存乳房内再発のリスクを極限まで減らします。

 

 

 

「乳管内伸展を考慮した」温存手術(正面から)

乳腺の切除範囲をみると、「乳頭は大丈夫なの?」と思われそうですが、

あくまでも「乳腺の切除」なので(皮膚である)乳頭に何の影響もありません。

 

なるほど!

きちんと、乳頭裏まで切除すれば「温存乳房内再発」は極限まで少なくできるんだね。

でも、仕方がない。もしも「乳房内再発が起こってしまったら?」

 

 

その場合は、(抗がん剤などせずに)「残存乳腺全摘」です。

温存術後、照射している筈だから 注 1 )「再温存術」は原則行いません。

注 1 ) 何らかの理由で初回温存術後に照射していない場合には「再温存」の選択肢は残ってはいます。

★ 温存術後の乳房内再発は、あくまでも「全摘すれば、(最初から)全摘した場合と予後は同じ」なので、「抗がん剤うんぬん」の話を出すのは誤りなのです。

②(全摘後の)胸壁再発

これも、(基本的には)温存乳房内再発と同様に「手術時の取り残し」となります。

「全摘後に胸壁再発のリスクは限りなくゼロ」なのですが、以下の状況で「例外的に」起こります。

1.手術の不備

2.病変(癌)の胸壁浸潤(広い意味では上記1なのですが、肉眼的に胸筋浸潤が無い場合には胸筋は合併切除しないため)

 

この場合の治療は?

 

 

 

勿論、手術です。(十分なマージンをつける)

更に(初回手術後に、放射線していなければ)放射線も考慮されます。

 

②領域リンパ節再発(腋窩・鎖骨下・鎖骨上・胸骨傍)・(広義の)領域リンパ節(縦隔・頸部)

腋窩鎖骨下リンパ節(手術可能)と傍胸骨・鎖骨上・縦隔リンパ節(手術不能)に明確に分けられます。

1.腋窩鎖骨下リンパ節再発

これは、まず手術を前提とします。

ここで「手術を提案されなかった」場合に『本当に手術ができないのか?』と疑問を持つべきです。

今週のコラム 90回目  「本当に手術ができないのか?」と、当院を受診されたわけです。

今週のコラム 185回目 腋窩再発vol. 1 腋窩郭清が必要な場合には、是非「病院選び」に慎重になりましょう。その選択が第1のturning pointとなるのです。

今週のコラム 186回目 腋窩再発vol. 2 内側アプローチの肝(キモ)は、癒着していない奥(レベルⅡ)から郭清することで再手術であることの欠点(risk)の回避なのです

 

 

何故、手術を提案されないの?

 

 

 

それは、この手術が難易度が高いからなんだ。

まず「再発」だというだけで「腋窩静脈との癒着で手術はこわい(できない)」という意識が起こる。

実際は上記コラム186のように行えば安全にできるんだけどね。

 

何故、それができないのだろう?

 

 

 

当院みたいにQAで、そのような再発症例が集まっているから慣れるのだけど、

通常の病院では、ごくrare caseとなってしまうので(経験が浅く)こわがっているのです。

実際、私も江戸川に来るまでは「腋窩再発の手術」は殆ど機会がありませんでした。

もう一つは鎖骨下リンパ節の視野を作る難しさです。

 

これはlevel3(鎖骨下リンパ節)を直視下で郭清するための「視野」です。

この視野を「作る」どころか「見たことが無い」乳腺外科医は非常に多い(皆さんの想像を絶するくらい)

今週のコラム 239回目 視野を作れて一人前

 

 

★「リンパ節転移が多いと(手術が大変だから)術前抗がん剤ね」などとすることでレベルⅢ郭清をしない(避ける)ことが日常化されてしまっている弊害といえます。

⇒ QA8695「トリプルネガティブ」参照のこと

 

3.鎖骨上・縦隔リンパ節・胸骨傍・頸部

ここは照射が非常に良く効きます。

当院ではtomotherapyがあるので、日常的に行っていますが非常にコントロール良好。

ここに照射せずに「再発治療」と一括りにして(遠隔転移のように)ダラダラと全身療法だけするのは愚の骨頂。

「全身療法」と「tomotherapy」上手くバランスさせて、十分根治が狙えると思います。

注)部位によっては「保険適応外(自費?)」となるようです。(但し、非常に効果が高いので「やらないのは勿体無い!」)

これに関しては「放射線科医」とご相談を。

⇒ 今週のコラム 230回目 リンパ節再発 あなたは諦めますか?

 

〇更に「あるあるQ]の

71『リンパ節再発と言われたら、是非『8804 「鎖骨上、胸骨傍、縦隔リンパ節」再発 』を参照ください。』
を読んでいただくことをお勧めします。