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『Q&A 細胞診でクラス3 針生検結果待ち 4/26』を今朝回答していて…
そこに「癌の経過観察 ♯1」の元凶を見ました。
♯1 実際には癌なのに、(癌と診断されずに)経過観察されること。その期間は時に2年を超える。(広辞苑より)
癌の経過観察をされないためには、その実態を理解しなくてはいけません。
癌の経過観察を解剖すると、2つの問題点が鮮明となってきます。
1.画像診断の問題
例としてcategory3としてチェックされた以下の2症例(どちらも、先週水曜日予約外受診された方達)を供覧しましょう。
以下の2つの症例は『こんなに違うのに、同じカテゴリー3とは…』と、大変衝撃を受けたので記憶に鮮明に残ったのです。
症例1 明らかに「癌を疑うべき」症例
カテゴリー3ではなく、5(もしくは4)をつけるべき
「不整形」「前方境界線断裂」という2点からは、5とすべきと思いますが、4でも許容されるのは、その「サイズ」が原因となります。
これは「私category」では6(乳癌の可能性がかなり高い)となります。
♯前方境界線断裂に見えるので7(乳癌といいきれる)にしたいところですが、(そのサイズにより)実際に患者さんにも「乳癌の可能性が高いです」とは言いましたが、言い切りませんでした。
2つのシコリ(実際は全体像をみて行くと繋がっている部分がありそう)の1個1個が5~6mm,どうしてもエコー像では「小さいと」それが理由にカテゴリーが落とされる(良性よりとなる)傾向にあります。
これをカテゴリー3としていますが…
この不整形、及び前方境界線断裂で明らかに「癌」の所見です。
症例2 本来2(良性)として要精査とすべきではない症例
私自身のカテゴリー分類(ちょっと、ややっこしいですが)では
私cat.2 乳癌の可能性は極めて低い 例)扁平な(碁石のような)線維腺腫
上記と区別するために、本来のcat.3は以下となります。
因みに、この症例は組織診して線維腺腫と確認しています。
症例3 本来のcat.3
私cat.3 乳癌の可能性は「かなり」低いが可能性はある
例)扁平ではない(やや張りがある)線維腺腫や(腫瘍よりは)乳腺症?と思える所見
実際のカテゴリー3には、もう少し癌の可能性が高い「私cat.4」が含まれます。
症例4 歪な線維腺腫(CELEROで確認済)
私cat.4症例
♯上記(私cat.3と比べ)「歪」なことが解りますか?
◎つまり一般的なcat.3には「私cat.3」と「私cat.4」が含まれるのです。
この一般的なcategoryと「私category」が紛らわしいので以下に対照表を作成してみました。
私category 一般的なcategory
私cat.1 乳癌の可能性はない(断言できる)
例)全くの正常 ⇒ cat. 1
例)嚢胞、artifact ⇒cat. 2
♯まず、ここで「嚢胞やartifact」をcat.2にしている点が異なります。
私cat.2 乳癌の可能性は極めて低い
例)扁平な(碁石のような)線維腺腫 ⇒cat.3
私cat.3 乳癌の可能性は「かなり」低いが可能性はある
例)扁平ではない(やや張りがある)線維腺腫や ⇒cat.3
(腫瘍よりは)乳腺症と言える所見 ⇒cat.3
私cat.4 乳癌の可能性はあるが高くはない
例)歪だが(癌よりも)線維腺腫をより疑う ⇒cat.3
私cat.5 乳癌の可能性の方が(良性よりも)高い
例)小さくて癌と断言はできないが不整形
であり癌を(良性よりは)疑うべき ⇒cat.3
私cat.6 乳癌の可能性がかなり高い
例)スピキュラはないけど不整形、境界不明瞭 ⇒cat.4
私cat.7 乳癌と言い切れる
例)不整形でスピキュラがある、前方境界線断裂⇒cat.5
これを見て、決定的な違いは何なのか?
『検診でのcategoryはcategory3の範囲が広すぎる』まさにそこに尽きます。
上記3症例ともに検診ではcategory3としていますが、
症例1はcategory4とすべき(私categoryでは6相当)であり、
症例2はcategory2として要精査の対象から外すべき
症例3はcategory3で正解
症例4は私category4ですが、(一般的なcategoryでは)3で正解です。
私のように殆どの所見を(私categoryで言えば3以上)生検して、経験を積み上げると自然とcategoryが自然と(その乳癌であるリスクにより)より細分化されるのです。
結構、長い前置きになりましたが、上記を踏まえて『Q&A 細胞診でクラス3 針生検結果待ち 4/26』の医師の問題点を紐解くと…
(細胞診の精度の問題は、まずは置いといて)
QAの文章だけだから(無論、その画像は見ていないけど)
その医師の(最初は癌を疑っていない⇒細胞診でクラス3と出て、癌を疑い針生検を行った)その経緯から推測すると、その所見は一般的category3であり、私categoryではcat.4だったのだと思います。
そこでこの医師は(癌よりは良性の可能性を大きく評価してしまったがために)細胞診を選択したのだと思います。
最初から「より詳細な」画像判断ができていれば(細胞診ではなく)最初から針生検していたと思われるのです。
◎第1の画像診断での問題点は、その「過小」評価が(その上手くもない)細胞診の選択⇒(今回は、何とかクラス3が出たからよかったものの)検体不良⇒(癌なのに)経過観察となるのです。
「癌の経過観察」される、世の中の多くの方は画像評価の甘い医師が細胞診をして「検体不良」となることが元凶となるのです。
2.生検精度の問題
これは、なかなか解決できない問題
精度を上げるためには
①良性を良性と積極的に診断し無駄な(良性なのに、3か月とか半年で通院してもらうのを申し訳なく思う気持ちが必要)経過観察を極力しない
②自分が最後の砦だという強い使命感
特に「癌を強く疑わない限り」生検はせずに経過観察(放置?)をする医師には本当に困ったもの
それでは生検手技が上手くなりようがない。
やはり「数は正義」ただし、その上に更に「自分が最後の砦」という強い使命感は必須です。
当院で診断できなければ,(他で診断できるはずがないので)この患者さんの運命を誤らせるわけにはいかない!
とても重要なことです。
それでは最近の一例
前医(関西地方)で細胞診「良性」
患者さん自身が心配で当院で組織診(CELERO)でIDC:invasive ductal carcinoma
嫌になっちゃうよねー
生検の精度、これまた(画像診断以上に)根が深いねー。
その通り。
私みたいに、(前医で良性)⇒当院で乳癌の診断という経験が(この乳がんプラザのお陰で)沢山あると、「自分以外、誰も信じれない」のが実状。
生検に対する姿勢の問題があるので「その差は広がる一方」で解決しようがない。
やはり根底に「患者さんの不安(解消)のために、(もしくは)それほどたいした所見ではなくても、もしもそれが癌だった場合にその患者さんが負わされる不利益」をもう少し高い次元で捉えないといけない。
この章の最後に…
『Q&A 細胞診でクラス3 針生検結果待ち 4/26』の質問者の疑問に応える形で図を示します。
時間切れ… 明日朝 冒頭の屋上写真と一緒に完成させます