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今週のコラム 495回目 癌の経過観察をされないために

 

 

○ 本文

『Q&A 細胞診でクラス3 針生検結果待ち 4/26』を今朝回答していて…

そこに「癌の経過観察  ♯1」の元凶を見ました。

♯1 実際には癌なのに、(癌と診断されずに)経過観察されること。その期間は時に2年を超える。(広辞苑より)

 

癌の経過観察をされないためには、その実態を理解しなくてはいけません。

癌の経過観察を解剖すると、2つの問題点が鮮明となってきます。

1.画像診断の問題

例としてcategory3としてチェックされた以下の2症例(どちらも、先週水曜日予約外受診された方達)を供覧しましょう。

以下の2つの症例は『こんなに違うのに、同じカテゴリー3とは…』と、大変衝撃を受けたので記憶に鮮明に残ったのです。

症例1 明らかに「癌を疑うべき」症例

カテゴリー3ではなく、5(もしくは4)をつけるべき

「不整形」「前方境界線断裂」という2点からは、5とすべきと思いますが、4でも許容されるのは、その「サイズ」が原因となります。

これは「私category」では6(乳癌の可能性がかなり高い)となります。

♯前方境界線断裂に見えるので7(乳癌といいきれる)にしたいところですが、(そのサイズにより)実際に患者さんにも「乳癌の可能性が高いです」とは言いましたが、言い切りませんでした。

2つのシコリ(実際は全体像をみて行くと繋がっている部分がありそう)の1個1個が5~6mm,どうしてもエコー像では「小さいと」それが理由にカテゴリーが落とされる(良性よりとなる)傾向にあります。

 

これをカテゴリー3としていますが…

この不整形、及び前方境界線断裂で明らかに「癌」の所見です。

 

 

 

 同じものを「別角度」で捉えたエコー像

 

症例2 本来2(良性)として要精査とすべきではない症例

 扁平な「碁石」のような線維腺腫

 

私自身のカテゴリー分類(ちょっと、ややっこしいですが)では

私cat.2 乳癌の可能性は極めて低い 例)扁平な(碁石のような)線維腺腫

 

上記と区別するために、本来のcat.3は以下となります。

因みに、この症例は組織診して線維腺腫と確認しています。

症例3 本来のcat.3

これが(私自身のcat.3)に相当します。

 

私cat.3 乳癌の可能性は「かなり」低いが可能性はある

例)扁平ではない(やや張りがある)線維腺腫や(腫瘍よりは)乳腺症?と思える所見

 

実際のカテゴリー3には、もう少し癌の可能性が高い「私cat.4」が含まれます。

症例4 歪な線維腺腫(CELEROで確認済)

 

 

私cat.4症例

♯上記(私cat.3と比べ)「歪」なことが解りますか?

 

 

 

◎つまり一般的なcat.3には「私cat.3」と「私cat.4」が含まれるのです。

この一般的なcategoryと「私category」が紛らわしいので以下に対照表を作成してみました。

私category                         一般的なcategory

私cat.1     乳癌の可能性はない(断言できる)

例)全くの正常            ⇒ cat. 1

例)嚢胞、artifact                                        ⇒cat. 2

♯まず、ここで「嚢胞やartifact」をcat.2にしている点が異なります。

私cat.2 乳癌の可能性は極めて低い

例)扁平な(碁石のような)線維腺腫  ⇒cat.3

私cat.3 乳癌の可能性は「かなり」低いが可能性はある

例)扁平ではない(やや張りがある)線維腺腫や ⇒cat.3

(腫瘍よりは)乳腺症と言える所見          ⇒cat.3

私cat.4 乳癌の可能性はあるが高くはない

例)歪だが(癌よりも)線維腺腫をより疑う ⇒cat.3

私cat.5 乳癌の可能性の方が(良性よりも)高い

例)小さくて癌と断言はできないが不整形

であり癌を(良性よりは)疑うべき   ⇒cat.3

私cat.6 乳癌の可能性がかなり高い

例)スピキュラはないけど不整形、境界不明瞭 ⇒cat.4

私cat.7 乳癌と言い切れる

例)不整形でスピキュラがある、前方境界線断裂⇒cat.5

 

これを見て、決定的な違いは何なのか?

検診でのcategoryはcategory3の範囲が広すぎる』まさにそこに尽きます。

上記3症例ともに検診ではcategory3としていますが、

症例1はcategory4とすべき(私categoryでは6相当)であり、

症例2はcategory2として要精査の対象から外すべき

症例3はcategory3で正解

症例4は私category4ですが、(一般的なcategoryでは)3で正解です。

 

私のように殆どの所見を(私categoryで言えば3以上)生検して、経験を積み上げると自然とcategoryが自然と(その乳癌であるリスクにより)より細分化されるのです。

 

 

結構、長い前置きになりましたが、上記を踏まえて『Q&A 細胞診でクラス3 針生検結果待ち 4/26』の医師の問題点を紐解くと…

 

(細胞診の精度の問題は、まずは置いといて)

QAの文章だけだから(無論、その画像は見ていないけど)

その医師の(最初は癌を疑っていない⇒細胞診でクラス3と出て、癌を疑い針生検を行った)その経緯から推測すると、その所見は一般的category3であり、私categoryではcat.4だったのだと思います。

そこでこの医師は(癌よりは良性の可能性を大きく評価してしまったがために)細胞診を選択したのだと思います。

最初から「より詳細な」画像判断ができていれば(細胞診ではなく)最初から針生検していたと思われるのです。

◎第1の画像診断での問題点は、その「過小」評価が(その上手くもない)細胞診の選択⇒(今回は、何とかクラス3が出たからよかったものの)検体不良⇒(癌なのに)経過観察となるのです。

「癌の経過観察」される、世の中の多くの方は画像評価の甘い医師が細胞診をして「検体不良」となることが元凶となるのです。

 

2.生検精度の問題

 

これは、なかなか解決できない問題

精度を上げるためには

①良性を良性と積極的に診断し無駄な(良性なのに、3か月とか半年で通院してもらうのを申し訳なく思う気持ちが必要)経過観察を極力しない

②自分が最後の砦だという強い使命感

特に「癌を強く疑わない限り」生検はせずに経過観察(放置?)をする医師には本当に困ったもの

それでは生検手技が上手くなりようがない。

やはり「数は正義」ただし、その上に更に「自分が最後の砦」という強い使命感は必須です。

当院で診断できなければ,(他で診断できるはずがないので)この患者さんの運命を誤らせるわけにはいかない!

とても重要なことです。

 

それでは最近の一例

 

前医(関西地方)で細胞診「良性」

患者さん自身が心配で当院で組織診(CELERO)でIDC:invasive ductal carcinoma

 

 

 

 

嫌になっちゃうよねー

生検の精度、これまた(画像診断以上に)根が深いねー。

 

 

 

その通り。

私みたいに、(前医で良性)⇒当院で乳癌の診断という経験が(この乳がんプラザのお陰で)沢山あると、「自分以外、誰も信じれない」のが実状。

 

生検に対する姿勢の問題があるので「その差は広がる一方」で解決しようがない。

やはり根底に「患者さんの不安(解消)のために、(もしくは)それほどたいした所見ではなくても、もしもそれが癌だった場合にその患者さんが負わされる不利益」をもう少し高い次元で捉えないといけない。

 

この章の最後に…

『Q&A 細胞診でクラス3 針生検結果待ち 4/26』の質問者の疑問に応える形で図を示します。

時間切れ… 明日朝 冒頭の屋上写真と一緒に完成させます