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今週のコラム 466回目 手術2 乳頭直下まで切除する意義

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うにとトマトのパスタソース

先週の日曜日、連続パスタです!

 

 

 

これも、また旨かった。

「オマール海老」といい、「うに」といい海鮮はパスタに合いますね。

 

 

 

○本文

乳房温存手術(乳腺部分切除)

乳腺「部分」切除というと「全摘よりも小さいから楽、誰がやっても同じ」だと思ってませんか??

 

ここで、ある症例を提示します。

 

2017

石灰化がMLOでは乳頭より「上側(頭側といいます)」にCCでは乳頭より「外側」にあります。

外国で非浸潤性乳癌として「乳房温存手術」施行しています。(術後は照射のみ)

 

 

(もともと当院の患者ではありませんでしたが、その後帰国した際に当院で経過希望となりました)

毎年マンモグラフィー及び超音波してました

 

 

これは昨年(2023)

超音波も含め「異常無し」

因みに(前医では)手術部位に(目印として)クリップ入ってます。

 

 

 

と、今年も撮影したところ

 

まずはMLO view

手術部位の乳頭側に「新たな」石灰化!!

 

 

 

 

こちらはCC view

CCで見ても乳頭側に新たな石灰化が映っています。

 

 

 

これは、(温存乳房術後の)乳頭側再発だ!(私でなくても)簡単に想像つきます。

 

 

ST-MMT標本

画像が悪くてすみません…

病理診断は、やはり「非浸潤性乳管癌」

 

 

◎何が、このような局所再発を招いたのか?

 

2017 手術時の状況

乳管内に発生した癌が乳管沿いに拡がり

石灰化を起こしています。

 

 

 

 

このような部分切除が行われたのです。

♯これは「外国での手術だから」では、決してありません。

日本でも殆どの部分切除は、このような所謂「lumpectomy」が行われています。

 

 

そのため、断端(もしくは)それをskipしてその「乳頭側」に残存した乳癌が(7年の時を経て)再発したのです。

 

 

断端部からの再発

 

 

 

 

 

これが「正しい」部分切除です。

(石灰化病変に限らず)部分切除では、末梢は「完全に端まで」乳頭側は「乳頭を超えて」切除しています。

♯皆さん「乳頭を超えて」と聞くと「乳頭も切除するのか?」と想像するようですが…

違います。

乳頭は(そもそも)皮膚なので切除する必要はないからです。

あくまでも内部の乳管を乳腺のマージンをつけて切除するのです。

 

 

どう考えても、この方がいいよね。

なのに、何故皆きちんと「乳頭を超えた切除をしない」のだろうか?

 

簡単に「乳頭を超えて切除」と言うけれど…

乳頭部付近まで「きっちり」剥離をすすめなくてはならない。

実際の「末梢は完全に乳腺の端~中枢は乳頭裏を超えての剥離操作(皮膚から乳腺を剥がす操作)」は、余程慣れていないと時間がかかるし、(単純に)剥離範囲が広い=(出血しやすい術者にとっては)「出血も多くなるし、手術時間もかかる」=(できるだけ剥離範囲を小さくしたい)切除となりがちなのです。

 

完璧な手術とは、(丁寧=出血させない)な操作でありながら、根治性を最優先した手術範囲を保ち、かつ手術時間を短くできる手術です。

何故なら「手術時間が長い=麻酔時間が長いことによる患者さんへの負担」だけではありません。

手術時間が短い手術は術者や(助手、器械出し看護師を含むスタッフ全体に)集中力が持続できるのです。

★手術時間が長くなることを嫌って、「丁寧さに欠ける=出血に無頓着」もしくは、「手術操作を省く=いい加減な手術(根治性に難あり)」をするうちは一流とは言えません。