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今週のコラム 467回目 手術3 きちんと腋窩郭清されているか?

沖縄から、宮崎から

 

昨日はカレーが無性に食べたくなって(そんな日、ありますよね?)

いただいたカレー達から2つをチョイス

感謝です。

 

土曜日屋上

 

そして気持ちよく晴れた屋上へ

カレーはパスタで(カレー用の深皿を買わなきゃと。こぼれそう…)

最近セブンのパンは、このクロワッサンサンドがお気に入り。

サウナスーツで走って(その分、汗かくので)糖質ゼロビールが更に旨い!

○今日はパスタでなく、ご飯(「こんらく米」のハーフ)にしてシーフードも入れようかな。なんて考えているだけで涎が…

 

charisma

(辞書的には)人の心を引き付ける様な強い魅力のことや、その魅力を持っている人のこと

昨日、土曜日(土曜日はいつもよりも更に長く走るので)走っている最中に色々なことを考えます。 ♯基本的にFM聴きながらですが、あまり興味ない番組だと(Tokyo FMさん、すみません。全部が好きという訳では残念ながらないのです)その間はイヤホンを外して考え事したりします。

(以下、その際の思索)

仙台時代(東北公○病院を退職してから、まる11年を過ぎました)

その病院に当時(東○大学、婦人科教授を退職して)新院長に就任した○○院長

乳腺外科の外来時間終了が非常に遅い事にまずは驚き、「これは問題がありそうだ。クレームがある(多い)のでは?」と早速(職員に)患者さんへの聞き取りを行いました。

そして私はH医師と共に院長に呼び出されました。

『院長からの呼び出し?』警戒しつつ話を聞くと…

(以下、私の覚えている限りの全文)

いやー、常態的に外来が夜の7時、8時までで「4時間待ち」の現状と知って「これは問題だ」と、調査したのだけどね。

結局、

患者さんからは『H医師やT医師(無論私です)の診察を受けられるのなら、4時間待っても構わない。 待っている間は(近くの)仙台三越♯で買い物したりしてます』

♯ 東北公○病院は仙台市のど真ん中にあります。

ちょっと、驚いたけど君らcharismaなんだね。患者さんから指示されているのだから君たちの想うようにやったらいいよ。寧ろ応援するよ。

 

当時、年間400件に達した(私が在職した10年間で250件⇒400件に増加していきました)症例を2人で診療していました。

私が赴任するまでは、そのあまりのハードな環境(仕事量も人間関係も)で(かつて)誰も半年と保たなかったポジションで(結局)ちょうど10年在職しました。

今でも思い出すのが、赴任して最初の正月(8月赴任だから赴任から4か月)には「大丈夫か?」と年賀状(当時、乳腺外科として独立してなく外科の中で「乳腺専門」という立場でしたが、私の様子を見て、一般外科の同僚が皆心配してくれていたのです)

 

そんなことを思いだしたので、久しぶりに…

東北公○病院のホームページを見てみました。

6人??

何と、現在「乳腺外科」として6人も在職している。(プチ○研○明かい! と、ちょっと突っ込んだりして…)

その中で5人が乳腺専門医で外来も担当している。

今では、あの当時のような7時、8時も当たり前!みたいな外来ではなく「キッチリ予約通り」なんだろうなぁ。

患者さんには確かに快適な環境。

 

ただ、こんな「プチ○研○明(しつこい?)」みたいな環境でcharismaが生まれるだろうか?

H医師と二人で400件手術し、抗癌剤もやり(抗癌剤はもっぱら私の担当でしたが…)そんなハードな環境でこそ「圧倒的な経験」となり、そんな医師こそ患者さんが求めるものなのではないか。

今の東北公○病院に(かつてのような)特別感が今でもあるのか?(病院を批判しているのでは決してありません。あくまでもOBとしての率直な感想です)

当時から(きっと今でも)東北1の症例数を誇っていると思いますが、「この症例数なのだから、この位医師がいてもおかしくない」それは至極尤もですが…

ただ、「普通の病院になっちゃったなぁ」(OBとは、かくもウザいものです…)

♯蛇足 (ついでに)外科から「乳腺外科」と「消化器一般外科」に分裂していましたがその「消化器一般外科」にかつての同期(大学も医局も)の井○がいる!それも外科のNo.2として外科部長。

まぁ確かに我々の年齢からすれば当たり前とはいえ…最期に顔を見たのはおそらく20年以上前… 岩手県立中○病院で短期間一緒に働いたのがあぁ、懐かしい。

江戸川病院に赴任すると同時に医局から完全に出ているので、ホームページに載っている他の医師達は名前も聞いたことないし(消化器一般外科のトップの植○先生だけが、私の公○病院時代に唯一在籍していた先生)まるで浦島太郎状態!

過去を懐かしむのって(私も)年取った証拠かなぁ。

 

○ 本文

前回fundamentalとして「手術2」だったので、同様にfundamentalとしての「手術3」とします。

ここでいうfundamentalとadvancedの違いはfundamentalはあくまでも一般的な手術手技の中での重要なことに対して、advancedは(私にしかできない)というと誠に恐縮ですが、ある意味特殊な手技や症例に対して触れたものとご理解ください。

 

「きちんと腋窩郭清されているか?」

ちょっと、意味深な題ですよね。

まずは基本をおさらい。

腋窩郭清=レベル1+2

鎖骨下郭清=レベル3

腋窩鎖骨下郭清=レベル1+2+3

 

今回焦点を当てるのは(鎖骨下郭清ではなく)一般的には標準術式と言える「腋窩郭清」です。つまり上記でいうレベル1+2です。

 

リンパ節

リンパ節は手前~奥へ向かって

Ⅰ,Ⅱ、Ⅲとなります。

 

 

 

どこを境にするかって?

 

 

実際には、この上にまず小胸筋が被さりますが…

この小胸筋の外縁までをレベルⅠ

小胸筋の裏をレベルⅡ

小胸筋(の内縁より)奥がレベルⅢ

 

実際の身体では、この上に更に大胸筋が被さります。

 

 

これが実際の状態となります。

つまり小胸筋、大胸筋の2枚の筋肉に覆われており

これを持ち上げなくてはリンパ節は見えないわけです。

♯レベル1の一部は大胸筋を持ち上げなくても見える。

 

実際の郭清のために…

大胸筋を持ち上げ…

そうすると、レベル1が全て露わになります。

 

 

 

 

 

更に、(その裏にある)小胸筋を持ち上げると

レベル2も全て見えるかに思えますが…

実際には(実はこのままでは)レベル2の一番奥(レベル3に近い部位)は見えません。

 

 

何故なら…

 

 

小胸筋内縁(奥側)には血管があり、小胸筋を完全に持ち上げるには、この血管の処理(結紮)が必要となるからです。

 

 

 

★実は、この血管処理こそが「多くの乳腺外科医の鬼門」となり(結果として)その先の鎖骨下郭清を断念させる原因となります。

この血管は視野のかなり奥に位置するためアクセスするのが(慣れないと)結構大変であり、この血管の処理を誤ると(当然)出血し(視野が極めて悪いため)大変な危機に曝されるのです。

「この血管を処理しない限り完全には小胸筋を持ち上げられず(無論、この血管を処理することなく無理やり持ち上げれば、その血管が引きちぎれて…となります)」そうとて、「この血管を処理すること自体がリスクそのもの」となってしまい結果として(巷での腋窩郭清は)実際にはレベルⅠ+α(レベルⅡの入り口のみ)となっているのです。

 

この鬼門を乗り越えない限り「完璧な腋窩郭清はなしえない」し、(その更に奥にある)鎖骨下郭清は夢のまた夢に終わるのです。

 

蛇足

『鎖骨下郭清すると、患肢浮腫のリスクが上がる』という都市伝説について

この図のレベルⅠの中で(ひっそりと)赤くしたのは「患肢浮腫」について説明するためです。

巷で「鎖骨下まで郭清すると浮腫のリスクが上がる」と言われているのは全く「事実無痕」です。

何故なら腕から来るリンパ管の殆どは(赤い細いラインで示したように)レベルⅠの深い部位を通って血管に戻ります。

特に(赤く示した)thoracodorsalis veinの根部にあるリンパ節

通常はこの部分まで転移することは少なく、(その場合)ここ(腕からのリンパ管が多く入ってくる部位)には触れません。

結果として患肢浮腫のリスクは少ないわけです(無論ゼロとはいいません)

ただし、この根部まで転移があった場合には、(これらリンパ管のある)深部まで郭清せざるをえません。(転移リンパ節を残せば、それ自体がのちのちリンパ浮腫の原因となります)

すると「患肢浮腫」のリスクが格段に上がるわけです。

 

★つまり鎖骨下郭清をすること自体が患肢浮腫のリスクを上げるわけでは無いのです。

実際にに鎖骨下リンパ節(レベルⅢ)自体は非常に狭い範囲(小胸筋と腋窩静脈と胸壁に囲まれた親指程度の範囲です)であり、リンパ管とは無関係なのです。

鎖骨下郭清すると浮腫のリスクが高いと思っている医師は完全に見誤っています。

実際は、単純に「鎖骨下まで(画像上)明らかに転移している症例は、(画像上、そこまで疑われない症例と比べて)レベルⅠも深部まで転移している確率が高い

結果として「鎖骨下郭清している症例はレベルⅠ深部も郭清している割合が高い=(レベルⅠ深部を郭清するわけだから)患肢浮腫の割合も高くなる」のが事実なのです。

 

全ての鎖骨下リンパ節転移している症例がレベルⅠ深部まで転移しているとは限らない(当たり前ですが)そのようなケースでは(鎖骨下郭清しても)無論患肢浮腫のリスクとはなりえないのです。