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今週のコラム 451回目 fundamental5 乳頭分泌 補足

暑かった! 土曜日午後3時屋上

 

梅雨入り下、屋上の風邪が心地よい。

「焼けてますね!」と言われる所以です。

ニンニクトマトパスタ+ほうれん草

♯冷凍ホウレンソウ200g一袋

冷凍オクラも200g 、納豆、卵、キムチが夏バテ防止に効きますね。

 

○ 本文

1.単孔性

動画配信でもコメントしましたが…

肝(キモ)は「この図」の理解です。

 

 

乳癌は「一つ」の乳管細胞(乳管の壁の細胞)に(遺伝子エラーが起こり)癌細胞となり増殖したものです。

複数個所に「同時にエラーが起こり、複数個所に癌が発生する」可能性は限りなくゼロとなります。

つまり癌(乳管内病変)が原因となる分泌は「単孔性」となるわけです。

♯ 多孔性の原因の殆どは所謂「乳腺症」によるもの

乳腺症とは(更年期に向かう)卵巣の不安定性により不安定なホルモン分泌により、「乳管の増生」「線維化」が生じるもの

これにより分泌液が複数個所で詰まり貯留し、圧迫により「複数個所」から分泌される。

★十数本独立した乳管系があるのに、その「1本だけ」に上記乳腺症変化が起こることこそ考えにくいですよね。

 

2.分泌液の性状

①赤、黒、茶、黄色

乳管内病変で分泌が起こるのは腫瘍からの出血と黄色い分泌となります。

よって、「赤、黒、茶、黄色」だけとなります。

②ミルク

ミルクを分泌する癌はありません!

断乳後5,6年分泌が続くことも稀ではないし、授乳と無関係なミルク分泌は脳下垂体腫瘍(prolactinoma)であり乳癌とは無関係です。

③緑色、無色透明、オレンジ

これらは乳腺症に伴うものです。

 

3.継続性

乳管内腫瘍からの分泌は継続性であり一過性ではありません。

腫瘍は正常な構造ではないため「健康な細胞の傷と異なり、修復されず」出血が継続するのです。

それに対し、「妊娠出産授乳」に伴う「一過性の血性分泌」は、過剰な増殖に伴う乳管の破綻であり、(腫瘍ではないので)この傷は修復され出血は止まるのです。

 

血性分泌があると、心配のあまり「直ぐに受診する」人が多いですが、その分泌が『一過性なのか?継続するのか?まずは様子を見ましょう』

と、私が言うのは上記のような理由があるからなのです。

殆どの血性分泌は「妊娠出産授乳期」もしくは「月経により」生じる「傷」からのものであり、それは(様子を見れば)一過性で終わってしますのです。

 

そもそも(自覚するようなしこりがあるのなら話は別ですが)もしも乳管内病変だとしても「非常に小さい=エコーでも見えない」ものなので、『全く緊急性がない=継続するのか?確認すべき』ものなのです。

 

4.診断

乳管造影できない(=乳管腺葉区域切除が上手にできるわけがない)乳腺外科医ばかりとなってしまい、大変憂慮する事態と言えます。

(乳管造影できないと)手持ち無沙汰となり無駄に「分泌液細胞診」や「MRI(でた!何にでもMRIを撮影し、MRIで所見が無ければ許されると信じているMRI崇拝医師!)」を撮影して、様子見ましょうとなります。

 

癌(乳管内病変)が原因でなければいいのですが、もしも癌が原因の場合には「様子を見る=病変を大きくする」ことになります。

また、(特に)血性分泌が継続する場合には「精神的」にもいいものだとは思えません。

♯乳管内病変には(悪性)癌と(良性)乳管内乳頭腫があります。

血性分泌(無論、単孔性で継続性)の場合には癌の可能性が高まるし(更に、高齢となれば更に高まります)、そうでない(黄色、無論単孔性で継続性)場合には乳管内乳頭腫の

可能性が高くなりますが、いずれ分泌自体が気になる(量が多いと、毎日下着を汚染するなど)のであれば診断と治療を兼ね備えた乳管腺葉区域切除一択となります。

 

5.乳管造影

乳管腺葉区域切除の前に、そもそも(癌であれ、乳管内乳頭腫であれ)乳管内病変が存在していることを確認するのがスマートと言えます。

分泌乳管の拡張

分泌している乳管に造影剤を入れるために、まずはブジ―(細い針金)で(少しずつ太いものにしていくことで)孔を広げていきます。

 

 

 

造影剤の注入

(分泌している)孔を上記で拡げたところで造影剤を注入します。

 

 

 

これが実際の乳管造影の画像ですが、

「乳管内病変」があると造影剤が(それにより堰き止められ)それ以上入れなくなり「途絶」となります。

これにより「そこに」乳管内病変があることが確認できるのです。

 

中枢性欠損

この場合には、乳頭近傍の病変となりますが比較的「小さな」病変であることが多い。

 

 

 

末梢性欠損

この場合には(末梢は枝分かれして拡がっているので)病変自体も広範囲となることが多い。

 

 

6.乳管腺葉区域切除

まずは、この分泌乳管(乳管内病変のある乳管)を色素で染色します。

 

 

(その乳管のある方向の)乳輪に沿って(約1/3周性に)皮膚切開します。

♯皮膚切開はこれのみで無論乳頭を切除するなど、とんでもありません!

 

この皮膚切開から、染色された乳管を(その色素を頼りに)乳頭皮膚直下から(乳頭は取りません!)末梢まで完全に切除します。

♯乳管内病変は(その同一乳管内に)複数存在していることも多いので、その乳管系(乳管系はそれぞれ独立して十数本存在しています)だけを完全に切除する必要があるのです。

 

7.実際の標本