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今週のコラム 359回目 olaparib(商品名 lynparza)の術後補助療法への適応追加 2022.8

今日は土曜日。3連休の初日でしょうか?

私的には土曜日は市川外来があるので、明日から「2」連休となります。

台風が気になるところですが…

 

何と、タイムリーなことに昨日9月16日に『オラパリブの術後補助療法について(4.5センチの腫瘍 【質問5】)』が届きました。

と、いうことで…

 

土曜日 天気予報は午後から雨でしたが幸い気持ちいい秋空

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土曜日 天気予報は午後から雨でしたが幸い気持ちいい秋空

 

 

 

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最近のコラムでスパークリングワインよく出ているから…

と、遠路はるばる受診されたうえに地元からお土産!

奥出雲 まるで神話の中に迷い込んだような、素晴らしい一滴ならぬ一本でした。

 

 

 

〇本文

CDK4/6 inhibitor(abemaciclib)に引き続き、olaparibの術後補助療法への適応追加となりました。

まずは、皆さん頭の整理をしてください。

薬物の保険適応には①転移再発乳癌 ②術後補助療法 があることに「常に」注意が必要です。

★保険適応には臨床試験が必要となります。

イメージしてもらいたいのですが、

①の場合だと厳に腫瘍が存在しているのだから、その「効果の判定」が比較的容易に対して、

②の場合には現時点では腫瘍がない状態、つまり「少なくとも数年かけて、少しずつ発生する」再発を比較するのだから、差がでるまで「根治強く」待つ必要も出てくるし、(①に比較して)差が出にくいともいえます。

なので「あらゆる」抗がん剤は、まずは「転移再発乳癌」で適応が通り、その後「術後補助療法として適応拡大」されるのは、選び抜かれたエリート薬剤と言えるのです。

★ trastuzumab, pertuzumab, abemaciclibなどの歴史を紐解くとわかります。

★★ 対して「転移再発乳癌」だけで適応が止まっている(術後補助療法に適応がない)薬剤は、沢山あります。

例)capecitabine, TS-1などの経口抗がん剤や、注射薬では(とてもいい薬ですが)eribulin, bevacizumabや(大していい薬ではないですが)gemcitabine, vinorelbineなども術後補助療法の適応はありません。

 

まずは、上記を理解してもらう(もしくは、再確認してもらう)ことから始めましょう。

 

 

 

それで、今回のolaparibに話が戻るんだね?

 

 

 

さすが謎雄君!

その通り。

 

〇 olaparib(lynparza)の適応の流れ

1.手術不能または再発乳癌 2018/4月

BRCA変異陽性、HER2陰性、anthracycline及びtaxane既治療  今週のコラム 139回目参照

 

★今回の保険適応追加収載は以下の2となります。

2.再発高リスクの術後補助療法 2022/8月

BRCA変異陽性、HER2陰性

再発高リスクについて

★適応条件として「再発高リスク」は添付文章で、『 国際共同第III相試験(OlympiA試験)』を参照するようになっています。

具体的には、

①術前抗がん剤歴のある方

non-pCRのtripple negative

non-pCRかつCPS+EG score ≧3のluminal(HER2 negative)

 

②術後補助化学療法歴のある方

pN1以上もしくはpT2以上のtripple negative

pN2以上のluminal (HER2 negative)

 

 

それで、今回の適応追加(上記)2.再発高リスクの術後補助療法 2022/8月って対象者多いの?

 

 

 

 

それがね。それほど多くないんだ。

実際にBRACAnalysisを行ってみると陽性率が想像以上に低いんだ。

なので、実際に術後補助療法(1年間)としてOlaparibを使用する人はかなり少なくなりそうだね。

寧ろ、最近多い「私って遺伝性乳癌なのかしら?」って調べたがっている方に保険適応でBRACAnalysisが使えることの方が「実際には」インパクトあるかなぁ。