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今週のコラム 252回【病理結果報告書の見本はこちら】全体版

本日の music time line は 「1978」

その日の放送が何年なのか知らされずに、いきなり冒頭で「その年の曲」が流れるのですが、今日はキャンディーズでした。

私達、お別れ何ですねー♫

ちょっと、がっかり。レミオロメン来ないかなーって、いつも番組冒頭はドキドキなのです。

当時は「資生堂」と「鐘紡」のCMタイアップ対決だったとか。

あの矢沢永吉の「時間よー止まれー♫」流れ、更に堀内孝雄の「君の瞳は一万ボルト、地上に降りた最後の天使♫」

あー、懐かしい。

歴代のCMソングで、どれが一番?なんて(とても壮大過ぎて決められないけど)今思い浮かんだのは

鐘紡のCM lady navigation(Bz)

 

〇 本題

乳プラ改変のデザインとしてbメロ♪さんの

『【 用語の意味などはこちらをクリック】【病理結果報告書の見本はこちら】みたいなリンクがあると、しょっぱなにくじけずに入れるかもしれません。』

は、大変参考になります。

と、いうことで今回は(いずれ、後者のリンクにいれるべき)サンプルを解説します。

case. 1

1-1 針生検

病理組織学的判定

Adequate, malignant: Mucinous carcinoma, invasive. the left breast

所見

組織学的には4本の乳腺組織であり、すべてに浸潤性粘液癌組織を認めます。

本標本では以下の所見を認めます。

Histologic type, invasive mucinous carcinoma, mixed type.

hypercellular variant: Histologic grade 2:Nuclear grade 3: Structural atypia score 2: Nuclear atypia score 3: Number of mitotic figure 7/10 HPF: Fibrotic focus -: Fat invasion +: Tumor necrosis – : Tumor-infiltrating lymphocyte +: ly0, v0: perineural invasion – : Non invasive component –

1-1 針生検の解説

Adequate, malignant: Mucinous carcinoma, invasive. the left breast

適正標本(組織がきちんと採取されている)、悪性:浸潤性粘液癌(左乳房)

注 1 )粘液癌は粘液状の癌巣に癌細胞が浮遊している

特殊型に属すが、それ程「特殊=稀」ではない。全体の4%を占める

『今週のコラム 247回目 診断(検診で「何かある?」と言われた方、「これって、しこり?」と感じた方へ)vol. 3 「乳癌」』の≪組織型≫を参照のこと

組織学的には4本の乳腺組織であり、すべてに浸潤性粘液癌組織を認めます。

針生検で4本採取し4本的中ということです。

ここで2本採取1本に癌組織などでは何とも心許ない。その医師の技量を垣間見れます。

Histologic type, invasive mucinous carcinoma, mixed type. hypercellular variant:

組織型は浸潤性粘液癌で混合型。 癌細胞の比較的豊富なタイプである。

注 2 )粘液癌は浸潤性乳管癌の成分を含む「混合型」と含まない「純型」に分けられる。

更に「純型」は篩状や乳頭状などの形態を認めるhypocellular variantと充実性の形態を示すhypercellular variantに分類される。

上記のように、本来hypercellularとは「純型」に対する分類ですが、「混合型」でも記載されることがあります。

Histologic grade 2:Nuclear grade 3: Structural atypia score 2: Nuclear atypia score 3: Number of mitotic figure 7/10 HPF

組織学的グレードは2 細胞学的グレードは3 その中身は構造異型が2点 細胞異型が3転 細胞分裂が2点(顕微鏡での検鏡10視野で7個の細胞分裂)

注 3 )組織学的グレードと細胞学的グレードは前者が「構造異型の点数」+「細胞異型の点数」+「細胞分裂の点数」に対し、

後者は「細胞異型の点数」+「細胞分裂の点数」となります。

以下、ご参考に

『核グレード』は①核異型の点数+②核分裂の点数の「2項目の和」です。

①核異型 弱い:1点

    中間:2点

    強い:3点

 ②核分裂 5個未満(10視野で):1点

    5~10個  〃   :2点

    11個以上  〃  :3点

○『核グレード(NG) 核異型の点数+核分裂の点数』

    2点、3点 :核グレード(NG)1 

    4点    :  〃    2

    5点、6点 :  〃    3 

ここに「構造異型度(腺管形成スコア)」を加えて

①核異型の点数+②核分裂の点数+③腺管形成の点数の「3項目の和」としたものが「組織学的グレード」です。

①核異型 弱い:1点

    中間:2点

    強い:3点

 ②核分裂 5個未満(10視野で):1点

    5~10個  〃   :2点

    11個以上  〃  :3点

 ③腺管形成 腫瘍の75%超で明らかな腺管形成:1点

       〃 10~75%     〃     :2点

       〃 10%未満   〃     :3点

 ○『組織学的グレード(HG)核異型の点数+核分裂の点数+腺管形成の点数』

    3点~5点:組織学的グレード(HG)1

         6点、7点:   〃       2

    8点、9点:   〃       3

Fibrotic focus -: Fat invasion +: Tumor necrosis – : Tumor-infiltrating lymphocyte +: ly0, v0: perineural invasion – : Non invasive component –

線維化巣無し、脂肪織浸潤有 腫瘍壊死無、腫瘍周囲間質に浸潤したリンパ球有 リンパ管侵襲0 静脈侵襲0 傍神経侵襲無 非浸潤癌の部分無

注 4 )この辺りは病理医の領域で、臨床的には「参考程度」です。

癌細胞の周囲環境に注目するという視点からfibrotic focus: FFとtumor-infiltrating lymphocyts: TILsがあります。

周囲に線維化巣があると予後が悪く、リンパ球が浸潤していると予後が良いという考え方があります。後者は「リンパ球が癌細胞を攻撃している:癌免疫」としては想像しやすいですね。

脈管侵襲(ly, v )や傍神経侵襲も、客観性に乏しく、「参考程度」としましょう。

1-2 手術標本

臨床診断 left breast cancer

病理組織学的判定

Invasive carcinoma, special type, mucinous carcinoma, (mixed type), of the left breast, mastectomy

所見

検体は〇x△x□mm(皮膚 〇x△mm)の左乳腺切除標本です。

肉眼的に割面F, Gを中心として、周囲との境界がやや不明瞭な黄白色、充実性腫瘍を認めます。

組織学的には同部を中心として浸潤癌を認めます。病変の主体は粘液湖の形成が目立つmucinous carcinomaであり、粘液湖内部には乳頭状構造を呈する腺癌が浮遊しています。

tubule-forming typeの浸潤性乳管癌の成分もあります。

周囲に乳管内成分を伴いますが、構造成分はcomedo-typeのpapillo-tubular ca.よりなり、微小石灰化は乏しいです。

腫瘍の大きさは浸潤径として標本上45x42mm(割面C-H)に及びます。

周囲脂肪織に広範な浸潤を認めますが、皮膚浸潤は確認できません。

乳管内伸展が広範に見られ、割面CからHに及びます。

脈管浸潤は、リンパ管、静脈に見られます。

断端は標本上陰性と判断します。

なお、参考として腫瘍細胞における細胞学的にみた核グレード分類については、核異型スコア:3点 核分裂像スコア:2点より核グレード:3(5点)と判断します。

組織学的グレードにおける腺管形成の評価が難しいですが、腺管形成スコア:2点(腺管形成10-75%)と考え、組織学的グレード:Ⅱ(7点)と判断します。

郭清リンパ節

Ⅰ+Ⅱ 8/20    Ⅲ 0/3  合計(8/23)

Invasive carcinoma of the left breast, mastectomy:

-special type, mucinous carcinoma(mixed type: + invasive ductal carcinoma, tubule-forming type)

45x42mm(浸潤径)/60x45mm(全体) pT2, pN2

1-2 手術標本の解説

病変の主体は粘液湖の形成が目立つmucinous carcinomaであり、粘液湖内部には乳頭状構造を呈する腺癌が浮遊しています。

tubule-forming typeの浸潤性乳管癌の成分もあります。

⇒ 乳頭状構造をしているので(針生検結果とは異なり)hypocellular variantとなります。(本来純型の分類ですが)

またtubule-forming type(旧分類:乳頭腺管癌)の浸潤性乳管癌を伴うため「混合型」となります。

周囲に乳管内成分を伴いますが、構造成分はcomedo-typeのpapillo-tubular ca.よりなり、微小石灰化は乏しいです

⇒浸潤癌は(そもそも)非浸潤癌が浸潤して起こりますが、中には殆ど非浸潤癌が見当たらないこともあります。

このケースでは普通に非浸潤癌(乳管内癌)成分もあり、その部分は乳管内で壊死を起こすタイプ(comedo- type)の乳頭腺管癌成分からなる。

壊死を起こすと、(そこに)石灰化を起こす(壊死型石灰化という)ことも多いが、石灰化はあまり目立たないとコメントがあります。

周囲脂肪織に広範な浸潤を認めますが、皮膚浸潤は確認できません。

乳管内進展が広範に見られ、割面CからHに及びます。

⇒乳癌は乳腺の中に発生し、「まず」周囲の脂肪織に浸潤(浸潤癌の場合には当たり前)し、「やがて」皮膚まで到達すると「皮膚浸潤」となるのです。

乳管内進展とは腫瘍の中心部(浸潤部)から(主として)乳頭方向に乳管内を拡がっている(非浸潤癌)部分が広範囲だということ。

郭清リンパ節

Ⅰ+Ⅱ 8/20    Ⅲ 0/3  合計(8/23)

ⅠとⅡを何故分けないかというと、小胸筋膜を切離し、小胸筋の裏(Ⅱ)を郭清する操作と(その外側である)Ⅰの郭清操作は連続だからです。

Ⅲは小胸筋を外側へ牽引した、その奥(内側)なので、別操作となります。

この場合、(術前エコーで)レベルⅡまでの転移を認めたので(その先である)Ⅲまで郭清し、(幸いにも)Ⅲには転移が無かったということです。

合計にしているのは、術後のステージではpN1(1~3個)pN2(4~9個)pN3(10個以上)に分けるためです。

Invasive carcinoma of the left breast, mastectomy:

-special type, mucinous carcinoma(mixed type: + invasive ductal carcinoma, tubule-forming type)

45x42mm(浸潤径)/60x45mm(全体) pT2, pN2, pStage3A

これが、最終的な総括となります。

因みに

ステージ3A:pN2

ステージ3B:T4

ステージ3C:pN3


case 1としましたが、結構長くなりました。

【病理結果報告書の見本はこちら】として、「全体」版はこれにしましょう。

次回は「抜粋版」として、いくつか「よくあるもの」を抜粋して紹介します。

実際には「全体版」に目を通して全体を把握しつつ、閲覧者が実際に自分の病理レポートを読み解くためには「抜粋版」をいくつか見るというようになるイメージです。