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今週のコラム 504回目 生検の実態(本日ライブ配信の補足)

昨日も天気よかったのですが、用事があり屋上にあがれず…(パスタ旨かった)

今日も天気よく暑そうだから、屋上写真は今日撮ろうと思ってマス。

鰻が食べたいから、鰻になるかな?

ただ、この暑さでサウナスーツで走ると「あっさり」系が食べたくなるかもしれません。

どうなるかは、こうご期待?

 

○ 本文

turning pointは、実は幾つもあることに気付きました。

1.診断 早期発見されるのか?

せっかく「小さく」発見されたのに「発見」されても「診断」されない。

そんな悲劇が起きないように…

 

2.手術 理想的な手術がされているのか?

①センチネルリンパ節生検の精度の問題

⇒「のち」の腋窩再発のリスク

②温存術の場合 乳管を乳頭直下まで確実に切除しているか?

⇒「のち」の温存乳房内再発のリスク

③全摘の場合 胸壁浸潤が疑われた場合に、その部分もきちんと切除されているか?

⇒「のち」の胸壁再発のリスク

④腋窩転移がある場合 きちんと「鎖骨下」まで綺麗に郭清されているか?

 

3.再発治療

再発は「治らない」と(担当医に)諦められていないか?

再発は(当然ながら)患者さん誰一人として「同じ」はありえません。

それなのに「再発はどうせ何をやっても治らない」から、「楽な治療から…」みたいで本当にいいのか?

 

勿論、全員とはいいませんが、

局所治療(手術、放射線)、全身治療(抗癌剤)を駆使してcCRを作り(その状態を)サブタイプによって異なりますが、日常的に負担でない治療の継続で長期間維持する。

その先にこと「根治の可能性」があるのであって、「病変をcCRにしない限り、その可能性に蓋をする」こととなります。

薬物療法の進歩は、(それまでの)再発したら「何をしても同じ」という概念を変え続けている。

再発治療は「効く」治療こそが鍵。 「楽な」治療でお茶を濁す必要はありません。

長く続いたanthracycline一人横綱の時代 そこにtaxaneが出て術後の補助療法を変えた。

次はbevacizumab その強力な効果と高い奏効率は別格

CDK 4/6 inhibitorはluminal typeの再発治療を大きく変えたgame changerと言っていい存在。

『抗癌剤でいくら頑張ったって、その後のホルモン療法じゃ、すぐに再燃するよ』

そんな悩み一掃してくれたのです。

HER2 typeに対するtrastuzumab-deruxtecaneには(その絶大な効果に)驚かされました。

このtrastuzumab-deruxtecaneの兄弟ともいうべきdatopotamab-deruxtecane(ダトロウェイ)そしてtripple negativeで最初に適応を通したsacituzumab-govitecan(トロデルビ)

現在はtripple negativeだけでの適応であるsacituzumab govitecanは近々、luminal typeにも適応が通るようです。

海外ではdatopotamab deruxtecaneよりもsacituzumab govitecanの方がより強い効果があることが証明されているので、luminal typeにとって(CDK 4/6 inhibitorで維持するまでの)cCRを狙える薬剤として「とても、とても」期待できます。

 

抗癌剤が効くからと言って「薬物療法一辺倒」になってはいけません。

可能であれば局所治療を駆使して「相手(癌)をより小さくして」こそ、協力な薬剤の「更なる」効果を期待するのです。

 

 

と、「再発治療」の記載が長くなってしまいましたが

「診断」「手術」「再発治療」それら全てにturning pointがあるのです。

今回の配信は、この「診断」の中でも最も重要である「生検の実態」について迫っていきたいのです。

 

今回の「配信出演者」は「当院で早期発見された」というケースではなく、診断された後に(時はコロナ禍)手術する病院として当院に辿りついたので今回の配信で「生検の実態」とするのは、少しずれがあるのですがご容赦ください。

出演者からの手記の中の

『「私では、癌かどうかわからない。」と、自身で癌の診断が出来ず。「大学病院を紹介します。」』

と言う記載に引っかかった(言い換えれば、腹がたった)からです。

 

 

 

この医師のように「18mm」で診断ができない。(言い換えれば生検ができない?)というのは、もちろん論外ですが…(存在意義が不明)

巷には、せっかく「小さく発見」されても「小さいと診断されない」という(私から見ると)とんでも無い悲劇が起きている。

 

 

症例1

この計測では10mm

何故、前医でこれを「外す」のか?

 

 

 

 この角度だと8mmだが…

そもそも、「癌を疑う」エコー像だし(8mm位あると、結構「良悪の鑑別」が画像でも解りやすくなる。)

♯5mmだと、なかなか画像だけでは「はっきり」しない。

「はっきりしない」から(針を刺さずに)経過観察ではなく、「はっきりしないから、こそ」針生検で決着をつける

この発想が必要だと思います。

結局、前医では(まずは)細胞診 ←(画像上、癌を疑うのだから)「最初から針生検しろよ!」といいたい。

細胞診もクラス3(鑑別困難)⇒この結果で「癌の可能性がある」から針生検となり、

針生検では「検体不良inadequate」となって(確定診断希望メールから)当院受診。

CELEROで(画像通り)浸潤性乳管癌の診断となったわけです。

 

 

私にとっては、いとも簡単な針生検(CELERO)ですが…

何故、皆下手糞なのか…

理由は複数あるとは思いますが、それを考えても仕方がない。

それが事実、それ「こそ」が事実。

「今そこにある危機」を自覚することが重要なのです。

 

 

症例2

小さいけど(7mm)「かなり不整形」

これ、癌だろ?(私がエコーしての第一印象)

結果は(印象通り)浸潤性乳管癌

 

この方は、前医で細胞診「クラス3」

症例1の前医とは異なり「それじゃー、針生検しよう」とならずに、何故か経過観察

何故? 画像怪しいだろ? 診断すべきは

 

 

 

当院でのCELEROは、やはり浸潤性乳管癌

 

 

 

小さいうちに診断する意義

それは(当たり前ですが)圧倒的な予後です。

 

QAから「懐かしい」症例を

QA 387『ADHと診断されました』 

 

5mm

だけど不整形ですよね?

結局当院で組織診(当時はMMTEかもしれません)

非浸潤性乳管癌の診断で2015手術 ちょうど10年くらいです。

手術病理で非浸潤性乳管癌確定 放射線のみ、薬物療法なし

つい先日受診され、「勿論」再発なし。

 

その2か月くらい後QA744『嚢胞の中に白っぽい丸い影』

これも、やはり当院で非浸潤性乳管癌の診断(先の症例の)2か月後に手術

♯たまたまですが、お二人とも大阪の方です。

やはり照射後、薬物療法なし。

 

 

この3年後2018 毎年の当院での検診で

(倍率が大きいのは)市川のエコーだから

これも6mm  非浸潤性乳管癌

手術後(対側同様に)放射線のみ

その後も1年に1回通院していますが、(当然ながら)無再発です。

 

ちっぽけなんだから「診断しなくてもいい」ではありません!

ちっぽけだからこそ、(その時点で)根治と言えるのです!

 

それを、「大きい乳癌は見逃すと大変なことになる(非難されるどころか、下手すれば裁判になる)」位の気持ちで診療しているから、そうなる(小さい病変を診断できない)

根本の問題はそこにあります。

 

1期でも5%程度は再発するわけだから、それを0%にすることこそ使命なのです。

 

○付録 これ(この画像でも)癌の症例 どちらも「つい最近」です。

 

これ、非浸潤性乳管癌

5mm  特に不整形でもない(今までの画像と比較してください)

あなたなら経過見ますか?

ここで手術したら「間違いなく」根治なのです。

 

 

 

 

別の症例

これは上記と比べると「不整形」ですよね?

やはり5mm

かなり拡大しているから「それらしく」見えますが、やはり「この大きさ」だと画像だけで「癌を確信」とまではなかなかいきません。

 

「癌と確信できないから経過観察」ではなく癌だと『画像では確信できないからこそ組織診で決着すべきなのです。