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今週のコラム 172回目 このように(元あった範囲に)点在して残存するのです

水泳、池江選手。驚きましたね。

前日にアルビレックス新潟の早川選手の「急性白血病」からの復帰をNHKで見たばっかりだったので、正直ニュース自体もそうですが、そのタイミングに驚きました。

詳しくは知らないけど、もしかして当の池江選手も「あの番組を見て、背中を押された?」

医師とはいえ学生時代の30年前の知識では不治の病(いい方が古い?)というイメージでしたが、あの「渡辺謙」が復帰して元気にしている姿が「治療の進歩」を証明しています。

頑張ってください。

 

「Q&A 管理番号7167 術前療法の可否について」を回答していて、「術前抗がん剤が適応となる症例と、そうでない症例」について解説が必要だ!と思いました。

 

術前抗がん剤をすることにより「縮小して温存可能な症例」と、どんなに効果があったとしても「縮小しても温存不可能(すべきではない)症例」があるのです。

 

『そもそも、術前抗がん剤って、どういうときにするの?』

 

 

 

 

 

『まずは「手術不能状態」ですね。

これは、手術しようにも「手が付けられない」状況 注 1 )です。

それ(抗がん剤)しか選択肢が無いということです。』

 

注 1 )皮膚浸潤を広範にきたした「手術不能」症例

[caption id=”attachment_41663″ align=”alignleft” width=”150″] DSC_0233[/caption]

 

腫瘍が皮膚浸潤をおこし、(更に)皮下の広範なリンパ管侵襲により真っ赤(みかん皮様)となっています。

一見、「炎症性乳癌」にも見えますが実際には、明確な腫瘤を形成しているのでその定義には当てはまりません。

♯ 炎症性乳癌は通常腫瘤を認めず、皮膚のびまん性発赤、浮腫、硬結を示すものを指す(乳癌取り扱い規約 第18版)

 

 

『なるほど、「手術したくても、できない」ってことだよね?

それでは「手術ができるのに、敢えて(手術を先行させずに)術前抗がん剤をするのはどういう時なの??』

 

 

 

『それが、今回のテーマだね。

それは、ズバリ君に答えてもらおう。』

 

 

 

『ズバリ、それは腫瘍が(今は大きすぎて温存困難だけど)「小さくなれば温存ができる可能性がある人」なのだ。

だから、腫瘍が最初から小さい人は適応とはならないよ。』

 

 

 

 

『なるほど!

でも、「小さくなっても温存ができない人」もいるってこと?』

 

 

 

『そうなんだ。

小さくなっても「温存可能な症例と、温存してはいけない症例」とがあるんだ。

それでは、それらの違いについて説明しよう。』

 

 

 

 

症例 1 縮小すれば温存可能な症例

 

 

 

 

症例 2 縮小しても温存不可能(してはけいない)症例

 

 

 

 

〇症例 1 が何故、温存可能なのか?

 

この腫瘍はイラストにすると、こうなります。

 

 

 

 

これは、一つの腫瘍が膨張性に大きくなっていったものです。

 

 

 

 

つまり、(抗がん剤が効けば)このように中心性に小さくなっていきます。

 

 

 

 

こうなれば、温存可能となります。

 

 

 

〇何故症例 2 が(抗がん剤が効いても)温存不可能なのか?

 

この腫瘍は、イラストにすると、こんな感じになります。

 

 

 

 

正常乳管を示します。

 

 

 

 

癌の発生

まず、癌が乳管内に発生します。

 

 

 

乳管内を拡がっていきます。(乳管内癌=非浸潤癌として乳管内に増殖していくのです)

 

 

 

 

乳管内をどんどん広範囲に広がり、ついには複数個所で浸潤します。

そして、一見一つの塊のように見えるようになったのです。

 

 

 

ここに抗がん剤が効いても…

このように(元あった範囲に)点在して残存するのです。(症例 1 とは異なり中心性には小さくならないのです)

 

 

 

見上げてごらんー♫

これは、まるで「星座」のようではありませんか?