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今週のコラム 156回目 「物は言いよう。」ですね。

カショギ氏殺害

久しぶりの時事ネタです。

それにしてもムハンマド皇太子!「全てを掌握する男」

人間、権力を持ちすぎると碌なことになりませんね。

権力が無ければ「普通のナイスガイ」なのでは?

 

◎アベマシクリブの登場(発売) 11月30日か(予定)

CDK4/6阻害剤としてパルボシクリブ1周年を迎える直前、同系統のアベマシクリブが登場します。

 

何故、同系統が?

使い分けはどうなの?

気になるところです。

 

★選択肢は多いに越したことはない。

 

パルボシクリブは昨年12月発売以来、11か月近く。

担当者(fizer)は(何と!)私の仙台時代にも担当していた顔なじみでもあり、突っ込んで色々情報提供してもらい安心して使っていました。

 

一方でアベマシクリブの担当者(イーライリリー)は、今回まで殆ど面識無く(私は、ゲムシタビンは使わないため)

アベマシクリブ発売前に、徹底的に両担当者に「使い分け」について議論を挑みました。

 

1.投与間隔

 

 

 

 

 

 

パルボシクリブは3週内服1週休薬に対し、アベマシクリブは休薬無し。

ここで面白いのは、それぞれの担当者が「その違い」を「自社製品のいいところ」と捉えているところ(思わず笑ってしまいました)

 

私 「パルボシクリブと何が違うの? セールスポイントは何?」

 

イーライリリー氏 「アベマシクリブは、”休薬無し”なんです。」

 

私 「えっ? そこがセールスポイント? 患者さんにとっては、休薬=休息だから、休薬が無いことは寧ろ嫌なことですよ?」

 

イーライリリー氏 「そうではありません。休薬しないからこそ効果が期待できるんです。そして何故、パルボシクリブが1週間休薬しなくてはならないかというと、白血球(好中球)減少するが故なんです。当社の製品(アベマシクリブ)は安全に継続して内服できる=効果がいい。そういうことなんです。」

 

◎後日

私 「アベマシクリブ(の担当者)は、”休薬無”を売り込んでたけど。」

 

Fizer氏 「いやー、(あちらは)そう来ましたか。患者さんにとっては”休薬がある方がいい”ように思います。当社の製品(パルボシクリブ)は休薬しても効果があるんです。」

 

★ 同じ内容を

イーライリリー社は「休薬せずに続けられるから効果がある」といい、fizer社は「休薬無しでは患者さんが大変」と主張しています。

皆さん。物は言いよう。」ですね。

 

2.服薬

パルボシクリブは1日1回ですが、アベマシクリブは1日2回

回数は少ない方が楽ですよね?

 

3.副作用

添付文章を読むと「山ほど」記載されていますね。

ただ、実際に起こるものは?

〇パルボシクリブ(この1年だけでも私には多数の使用経験があります)

好中球(白血球)減少症:(私は)ほぼ抗がん剤で叩いたのちに使用するので、どうしても減量投与になりがちです。(自覚症状は殆どありません)

(それ以外は)脱毛も含め、殆ど困る副作用がない。

 

 

( 拡大 )

脱毛もグレード3は無く、殆どが1

口内炎や悪心もグレードが低い(軽症)であることが一目瞭然です。

♯ これは(私自身の)11か月の使用経験のimpression通りです。

 

 

 

 

 

 

 

 

★ここが、最大のチャームポイントとなります。

数年前に発売された(経口分子標的薬である)エベロリムスとはここが最も違います。

(効果があったとしても)副作用が強ければ継続困難となるのです。(私はエベロリムスは「その理由で」使っていません)

 

〇アベマシクリブ

これは発売前だから(無論)使用経験がありません。

当然のことながら、イーライリリー氏には「ここ」を重点的に突っ込みました。

 

問題となるのは「下痢」

8割に起こり(酷いのは1割)最大の問題となります。

ただ(イーライリリー氏によれば)止痢剤で十分対処可能

 

4.効果

本来、一番重要なことのようですが…

効果は、両薬ともに『FDAの優先審査指定で承認された』というお墨付きであり、 「直接比較がない」上に、臨床試験(一次も二次も)の患者背景が異なるのです。

つまり、優劣の議論はできない。

 

5.サブ解析

患者背景が異なることは敢えて承知の上で、「使い分け」を想定すると…

 

「軟部組織(リンパ節など)や骨転移」にパルボシクリブは強く、

「内臓転移」にアベマシクリブは強い。

そして内分泌一次抵抗性(ホルモン療法による補助療法2年以内に再発)の方にもアベマシクリブは強い。(比較しているわけではないので、これはどうかな?)

 

6.結論

高齢者や副作用に弱い患者さんには、アベマシクリブはつらそう。(下痢がこわい)

パルボシクリブで好中球が低下して減量投与となっている(だけど「若くて、体力がある」)患者さんにアベマシクリブを試みる価値あり。(イーライリリー氏曰く、『好中球減少症はパルボシクリブよりも軽い筈』)

骨転移と内臓転移の使い分けも参考に。

 

12月からはパルボシクリブは(2週間処方の)縛りがなくなります。

アベマシクリブは、この1年間は「2週間処方の縛り」があります。