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8/16 講演 「乳がんの最前線」を終えて

皆さん、こんにちは。

8月16日(土曜日)には、暑いさなか、しかもお盆の時期にもかかわらず、沢山の市民の方に参加していただき、ありがとうございました。

 

日常診療の中で、皆さんが疑問に思っていたり、知りたいと感じている内容を「気にされる症状」「良くある質問」として盛り込んでお話ししました。

教科書にはない、私が多くの患者さんを実際に診療して必要だと思う内容にしましたので、参加された方の乳がんについての理解の一助となってくれれば幸いと思ってます。

 

講演終了後、会場より質問していただいたお二人の方には、その場でお答えさせてもらいました。ご質問ありがとうございました。

 

講演内容をこのブログに全て入れることはできませんが、上記質問と答えについて,以下に掲載いたします。

 

質問①術前化学療法の適応、また化学療法をする場合に入院は必要か?

回答)

適応1.手術先行では「乳房温存」が困難であり、術前化学療法施行により(腫瘍が小さくなり)「乳房温存」が可能となるケース

適応2.リンパ節転移が高度の場合

適応3.(化学療法の適応があるので、どうせ術後に化学療法するのだから)術前に施行するケース

入院は必要ありません。術前化学療法のメニューは保険診療の適応上ほぼ限定されており、アンスラサイクリン(FECなどとして)及びタキサンであり、(HER2陽性の場合は)それにハーセプチンを加えます。これらは投与時間の面でも副作用の面でも外来で通常行われています #施設によっては、初回のみ入院という場合もあります。

 

・適応1に関しては、現状では腫瘍がやや大きく、無理やり温存すると術後の変形が大きくなる場合に、「乳房切除」でなく「乳房温存」をご希望された場合に当てはまります

・適応2に関しては、リンパ節転移が高度である場合、「そのまま手術」より「化学療法にを行い、リンパ節やその周囲の節外浸潤のような癌細胞を消失してから手術」する方が手術によるリンパ管損傷(患肢浮腫)のリスクを低減させる可能性があります。

・適応3に関しては、「どうせ化学療法をやるのだから」という表現は奇異に感じるかもしれませんが、●乳がん治療のゴールは手術ではなく、手術後の長期的再発が無いことです。

化学療法の適応がある場合(講演でも少し触れましたが、luminal B, HER2, TNなどのサブタイプやリンパ節転移が高度な場合となります)には、

◎「手術後の長期的再発がないこと」をゴールとした場合には、順番として「手術⇒化学療法」と「化学療法⇒手術」どちらにせよ、化学療法がいつかは必要となります。

この場合、順番はどちらでもいいのですが、術前化学療法(化学療法を先行)とする利点としては、化学療法の効果を確認できる(手術前であれば、腫瘍の縮小を実感できる)事があります。◎これは、患者さんのモチベーションに繋がりますし、今後万が一再発してしまった場合の化学療法の感受性の情報ともなります。

 

質問2、石灰化と言われフォローされていたが、「石灰化が減った」と言われた。今後はフォローは必要か?

回答)

(勿論、実際にその石灰化を拝見しなければ確実なことは言えませんが)石灰化の画像所見は癌のリスクより「カテゴリー1~5までに判定」します。

#カテゴリー1(良性と言い切れる)~段階を踏んで~カテゴリー5(癌の疑いが高い)まで5段階評価となります。

●フォローされてきたということは、これらの中で「カテゴリー2」か「カテゴリー3」なのだと思われます。(カテゴリー4や5の場合は癌を疑い、生検の対象となっているはずです)

「カテゴリー2や3」であり、石灰化が減少したということは、(癌のような)増殖性疾患では無い。とほぼ判断できます。(通常は乳腺症でしょう)

ただ、年に1回の乳がん検診は所見の有無にかかわらず、推奨されます(全く新しく癌の発生の可能性は常にありますので)

◎参考のために、カテゴリー分類表を載せます。

表を覚える必要はありませんが、「石灰化の形状」と「石灰化の分布」の組み合わせでカテゴリー分類をしていることを確認できます。

石灰化カテゴリー分類

9月6日には、江戸川区との共催で「早期で克服!乳がん」という講演をいたします。

内容的には「早期発見=検診や診断」に絞ったものとします。

Q&Aでは、ご質問を随時募集しています。
図1