[管理番号:7521]
性別:女性
年齢:45歳
病名:乳癌
症状:ステージⅢA
田澤先生
毎日、こちらのサイトでどれだけ慰められ、学び、そして絶望の底から救われているか・・・言葉ではとてもいい表せないほど、本当に田澤先生のことを神様のように崇め、感謝しています。
こちらで学んだ後、自分のことを考えると、愚かすぎて、自分を責めることしかできません。
私の経緯を下記に記します。
30代後半から毎年マンモグラフィーかエコーのどちらか受診。
実はたぶん5年以上前から、右下外側部Dに1センチほどのしこりを感じていました。
健診の都度、申し出ていたのですが、触診・エコー共に経過観察と言われ生検などしてきませんでした。
「エコーに写ってないよ」とか「様子を見ましょう」と言われて、「あ、大丈夫なんだ!よかった!!」と呑気に安心してしまいました。
今考えると、ちょうどあばら骨の中に入り込むような場所で「ここです」と指し示しても、うまく伝えられていなかったのだと思います。
自分なりに、別の所なら違う結果が出るのかしらと考え、毎年乳腺外科クリニックや市の健診(マンモ)に変えていたもの、今となっては間違いでした。
2016年のチェックで「このしこり大丈夫でしょうか」と診察の際に若い先生に尋ねると「それは骨ですね」とのことで、バカな私は「ああ、軟骨なのか!!!」と合点して、
それからすっかり安心してしまいました。
田澤先生が再三いわれているように、白黒つくまで決着をつけるべきでした。
病気を自分で見つけ出す気合いが足りませんでした。
2017年はマンモ+エコー(技師)で異常なし。
そして2018年は市の健診マンモだけで異常なしでした。
(今まで、残念ながら医師のエコーを受けられたことは一度もありません)
5月の健診で、初めて技師さんのエコーの手が、例のしこりの上で止まり、その上の脇の下でも止まり、乳癌の疑いとのことでCNBをしました。
グレードG3 ki67 46% 2.5cmほどの乳がんとのことでした。
脇のしこりは1センチ弱に肥大しているものが3個あるが、
転移かどうかはわからないとのことで、ステージⅠもしくはⅡA。
温存手術+放射線治療をやんわりと勧められ6月手術。
センチネル生検をしましたが、転移が見られ、リンパ節レベル1と2の一部を郭清。
以下病理結果です。
【病理結果】
浸潤性乳癌 硬癌
浸潤部 20mm×10mm×10mm
全体 25mm×15mm×11mm
腋窩リンパ節転移 センチネルリンパ節5/6 他2/4 計7/10 (センチネルのサイズ
5mm×2, 2mm×3)
脈管内 リンパ管侵入が目立つ・静脈侵入あり
核グレード 3
核異形度3+ 核分裂像 18コ/10HPF
エストロゲン 100%
プロゲステロン 100%
ハーセプテスト 1+
MIB-1 25%
断片は陰性
ステージⅢA
今度からFECとタキソテール、リュープリンとタスオミン、放射線照射、ホルモン療法を順次行う予定です。
①「腫瘍サイズにしては、リンパ管侵入が目立っている。
とても顔つきの悪い癌。
これから全摘することは過剰診療になるからやらないが、再発の可能性が高いかもしれない」と医師から言われました。
断片は陰性とのことですが、マージンが少ないようにも感じ、これだけリンパ節に転移していたなら、全摘すべきだったか・・・と「また失敗してしまったのか」と悔いています。
乳癌が発覚した際、全摘を覚悟していたのに、温存でいけると聞いて欲を出したのが間違いだったでしょうか?手術直後、「余裕をもって、多めに切除できた」と医師からいわれましたが、病理結果ではそれほど「余裕」など感じないのですが、田澤先生でしたらどれぐらいのマージンを取られるのでしょうか?腫瘍の場所は右下外側部Dです。
②温存手術の切除方法なのですが、私は腫瘍の直上の皮膚を含めた切除をされると思っていたのですが(手術説明の時のイラストでもそのように解釈しました)実際は乳房の横からの切除でした。
放射線照射をするからがん細胞が残っていても問題ないと担当医師はいってくださいましたが、皮膚の辺りに残されたかもしれないがん細胞が不安です。
綺麗に手術してくださった先生には申し訳ないのですが、綺麗さよりも命だけ優先であることを、もっと言うべきだったのか・・・と考えてしまいます。
乳房をどんなふうに切って、どのように取り出すんですかとまで確認するなんて、考えもしませんでした。
田澤先生は部分切除の際、どのようにメスをいれられるのでしょうか?正解を知りたいです。
③また、センチネル陽性後のリンパ節の郭清について、担当医師からはレベル1,2のとれるところは取った。
全部ではないと言われています。
そこで疑問なのですが、管理番号1477「リンパ節転移」でご回答されているように、センチネル微小転移で腋窩郭清を省略する場合については理解しましたが、田澤先生のコラム191回目 乳癌診療の基本Ⅱ vol.9のように全摘&リンパレベルⅢまでの郭清をされるときは何が基準なのでしょうか?例えば、2ミリ強の陽性のリンパ節がレベルⅢにあったら、それは郭清されるべきなのですか?私の場合、エコー、MRI,CTなどで、ここまでリンパに転移しているとは思われていませんでしたが、手術中にセンチネル陽性で追加郭清しました。
リンパはつながりの順番ごとに陽性になる以外には本当にないのでしょうか?一個飛ばしで陽性とか、
横のラインで陽性とか・・・もっと奥まで取ったらもっとあるのではないかと思ってしまいます。
手術中に郭清をここまでにしようという判断はどのように行われるのですか?どのような状態だったらレベルⅢまで郭清されるのでしょうか?取り残しがないと言い切れるのは、どのような状態のことですか?
④管理番号6039, 6041の数年経過してしまったケース・・・。
私の場合もこちらの方に
似ているのですが、今からでも過ちを挽回できる方法がありますでしょうか。
やはりステージⅢだと、遠隔転移につながっていらっしゃる方が多く、もう不安でたまりません。
化学療法の後にでも、田澤先生のコラム191回目 乳癌診療の基本Ⅱ vol.9のように、田澤先生に全摘&リンパⅢまでの郭清を行ってほしいと考えるのは、過剰でしょうか?
突然の宣告に加え、遠隔転移が恐ろしく、発狂しそうな恐怖に怯えながらこの二か月暮らしてきました。
たくさんの疑問、不安満載の、めちゃくちゃな質問になってしまい、
失礼がありましたらご容赦ください。
これから心を強く持って、子供たちが大きくなるまで生きるために最善を尽くしたいと存じます。
お忙しいところ恐縮ですが、田澤先生からのアドバイスを今度の指針にしたいと存じます。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「これだけリンパ節に転移していたなら、全摘すべきだったか」
→リンパ節転移と乳腺の切除(部分切除/全摘)は別物です。
つまり「腋窩をどの程度郭清するのか?」と「乳腺の術式(温存か?全摘か?)」は全く無関係なのです。
「田澤先生でしたらどれぐらいのマージンを取られるのでしょうか?」
→2cmマージンです。
「田澤先生は部分切除の際、どのようにメスをいれられるのでしょうか?正解を知りたいです。」
→いろいろなやり方があり、何が正解というものではありません。(私は腫瘍真上としています。マージンを直視下にきちんとしたマージンをとりやすいため)
「③また、センチネル陽性後のリンパ節の郭清について、担当医師からはレベル1,2のとれるところは取った。全部ではない」
→小胸筋内側までは郭清していないようです。
「全摘&リンパレベルⅢまでの郭清をされるときは何が基準なのでしょうか?」
→画像なり術中所見でレベル1まで(転移が疑われる)なら、(その先の)レベル2までであり、(それが)レベル2までならレベル3まで郭清する。(つまり「一つ先まで」が基本です。)
「例えば、2ミリ強の陽性のリンパ節がレベルⅢにあったら、それは郭清されるべきなのですか?」
→勿論
「手術中に郭清をここまでにしようという判断はどのように行われるのですか?」
→肉眼所見(硬く触知など)で判断します。
「どのような状態だったらレベルⅢまで郭清されるのでしょうか?」
→術前画像診断(エコー)でレベル2まで転移がうたがわれるケース もしくは(実際に手術してみて)転移を疑うリンパ節(硬く触知)がレベル2にあるケースです。
★無論レベル3まで転移を疑ったらレベル3まで郭清しないと「取り残し」となります。
「取り残しがないと言い切れるのは、どのような状態のことですか?」
→術中所見で転移を疑うリンパ節の1つ先まで完全に郭清した場合には「取り残しがない」といっていいでしょう。
「化学療法の後にでも、田澤先生のコラム191回目 乳癌診療の基本Ⅱ vol.9のように、田澤先生に全摘&リンパⅢまでの郭清を行ってほしいと考えるのは、過剰でしょうか?」
→必須ではありませんが…
温存乳房内再発のリスクを回避するために、実際にそのようにする人はいらっしゃいます。
質問者様から 【質問2 】
田澤先生、どうか手術をお願いいたします。
性別:女性
年齢:45歳
病名:乳癌 ステージⅢA
症状:再手術が必要ではないかと不安
「数年経過したステージⅢA病理結果と今後の治療について」というタイトルで質問させていただきました。
未熟なたくさんの質問に、わかりやすいご回答をいただき、ありがとうございました。
主治医から「部分切除したけど、リンパ管・乳管への侵入が目立っていた。
顔つきの悪い癌だから、再発の可能性が高い」と言われたことが頭から離れません。
また、リンパ節の郭清が田澤先生のなさるより、浅く少なかったことも、不安でたまりません。
主治医は、常に忙しく、診察室へ入った瞬間から、すぐに診察を終わらせようとするプレッシャーを出しているので、こちらも何とか焦って質問をするのですが、「怪しいところはちゃんと取っている。
あとは抗がん剤と放射線でやるしかない。」とまるで取り合ってもくれません。
せっかく手術をしたのに、失礼にも手術内容への不安をいってくる患者でご迷惑なのだなと申し訳なく感じています。
「全身に見えない癌細胞がもう散らばっている。
遠隔転移があったら、もうこちらでは治せないから。」と何度も釘を刺されて、また恐怖が募ります。
私はただ、生きていたいです!!どうしても、今できるすべてのことをしておきたいです。
田澤先生、お力を貸してくださいませんか。
先生の手術で、私の今までの失敗を取り戻させていただきたいのです。
6月のCTで遠隔転移はないという結果をもらっています。
今後、抗がん剤ワンタキソテール3週×4回 FEC3週×4回、その後放射線照射の予定が組まれ、ワンタキソテール一回目を受けたところです。
神の手術で、全摘、リンパ節レベルⅢまでの郭清を希望します。
もし診察&手術をお受けいただける場合、どのタイミングが良いのでしょうか?術前ステージⅠから病理結果
ステージⅢAになり、抗がん剤が始まったばかりという状況です。
地方におりますので、
薬物療法や放射線照射は現在の病院に通院できると助かりますが、田澤先生に従います。
どうか、最後のターニングポイント、お受けいただけますように・・・。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
私は、このQandAをしているお陰?で、実に様々な症例を経験します。
症例数では圧倒的に仙台時代の方が多いのですが、「腋窩再発」をはじめとする「局所再発」に接する機会は比べ物にならない位、ここ(江戸川)に来てからが多いのです。
つまり通常の診療をしている限り(それが、どんなに症例数が多くとも)私ほどにはイレギュラーな症例に触れることはできないという自負があります。
その経験からすると、「中途半端な手術は(局所)再発の原因となりうる」ことは日々、実感しています。
質問者の状況
・温存手術で断端は陰性
・腋窩も(程度はともあれ)郭清している
この状況で「何故、再手術が必要?」
その執刀医もそう考えるのも当然ですし、(仙台時代の私であれば)そう思ったでしょう。
ただし、全国から来る腋窩再発や胸壁再発などの手術をしていると、全くそうは思わなくなっています。(いや、寧ろ「初回治療こそ、ターニングポイント」その思いがあります)
最大限の「リスク回避(この場合には、温存乳房内再発と腋窩再発)」を考えるのであれば、手術しましょう。
乳腺は全摘して、腋窩は「内側アプローチ」からレベル2,3を郭清し、(初回手術時の)瘢痕まで綺麗に郭清しましょう。『今週のコラム 186回目 腋窩再発vol. 2 内側アプローチの肝(キモ)は、癒着していない奥(レベルⅡ)から郭清することで再手術であることの欠点(risk)の回避なのです』をご参照のこと。
「全摘、リンパ節レベルⅢまでの郭清を希望」「もし診察&手術をお受けいただける場合、どのタイミングが良いのでしょうか?」「薬物療法や放射線照射は現在の病院に通院できると助かりますが、田澤先生に従います。」
→Ki67=25%ですので…
「抗がん剤は必須なのか?(意味があるのか?)」という問題はありそうです。
(pN2だから、「やれることは全てやる」というスタンスは決して否定はしませんが)
当院で手術をうけるのであれば,(術後、再開するのかは別として)抗がん剤はこのまま中止して手術としましょう。
手術申し込みメールしてください。(日程などを案内します)
★術後に関しては…
抗がん剤をやるとすれば当院通院は可能でしょう(その医師は自分の手術にケチをつけられたように感じて、術後抗がん剤を断る可能性あります)
放射線は(その病院でなくても)地元でも探せますし、当院に入院して行う方もいらっしゃいます。
どちらも煩雑だとは思いますが、(あくまでも一時のことなので)後悔しないように選択すべきだと思います。