[管理番号:6039]
性別:女性
年齢:45歳
こんばんわ。
3年前、42歳の時に初期の乳がんと診断され、ホルモン治療をしています。
その時に、こちらのページを知っていたらいかに勉強になり無知による不安も減ったのではないかと思います。
こちらのページで勉強させて頂き
ふとした疑問があるので教えて頂きたく、よろしくお願いいたします。
1、初期治療の段階で遠隔転移はないと拝読しました。
私も癌と診断されたさいに、何も知らぬまま全身検査をし、遠隔転移はありませんでした。
リンパ転移は2(3ミリ、5ミリ)こありました。
なぜ、同じ転移なのにリンパ転移は初期治療の段階でも存在し、遠隔転移はないのでしょうか?
単に乳房からの距離の問題ですか?
2、私はリンパ転移2個ありましたが、みつかる時期が3年前より遅くなれば、リンパへの転移数も必ず増えていたのでしょうか?
2個のまま、大きさも転移数もかわらない可能性もあるのでしょうか?
3、血管に侵入した癌細胞は必ず臓器などにうつり、増大するのでしょうか?
免疫力などにより死滅することはないのでしょうか?
4、遠隔転移は腫瘍が小さいほうが
癌細胞の数も少ないから血管に入る確率が
減るから、腫瘍系と遠隔転移は相関してるのですか?
同じような理由で腫瘍系とリンパ転移も相関してるのでしょうか?
お忙しいなか申し訳ありませんが、
ご教授お願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「なぜ、同じ転移なのにリンパ転移は初期治療の段階でも存在し、遠隔転移はないのでしょうか?」「単に乳房からの距離の問題ですか?」
⇒解釈は2通り(正解を知る人はいません)
1.遠隔転移(血行性転移)は成立しにくい(癌細胞が血管の中に侵入しても、臓器に生着する確率が低い)
リンパ節転移(リンパ行性転移)はリンパ管の中に癌細胞が侵入すると、すぐに「リンパ節」にtrapされます。
リンパ節はリンパ管を流れてくる外敵(ウイルスなど)をtrapして体中に拡がらない様に(その場で)処理する役割がありますが、癌細胞もtrapされるわけです。
その中で(どの程度の割合かは不明ですが)生き残った癌細胞が(リンパ節内で)増殖し、リンパ節転移が成立します。
一方で、血管内にはそのようなtrapされる部位(脾臓には似た役目がありますが)がなく、(実際に脾臓転移は殆ど起こりません)かなりの「偶然」と相当な数の攻撃「(下手な鉄砲)数打ちゃ、当る」的に「かなりの低率で成立する」と考えられています。
2.そもそも(血管より)「リンパ管へ癌細胞が入り易い」
ただし、所謂「脈管侵襲」を見る限り「あまり差は無さそう」に思えます。
「2、私はリンパ転移2個ありましたが、みつかる時期が3年前より遅くなれば、リンパへの転移数も必ず増えていたのでしょうか?」
⇒その可能性は高いと思います。
少なくとも「5年」すれば、大変なことになっていただろうことは、「そのような(数年単位で放置して)リンパ節が鎖骨下を超えて⇒鎖骨上⇒頚部や縦隔まで転移している患者さん」を年に数回は診察している経験上、確信しています。
「2個のまま、大きさも転移数もかわらない可能性もあるのでしょうか?」
⇒それであれば、誰も「早期発見の重要性」など唱える医師はいなくなります。
「3、血管に侵入した癌細胞は必ず臓器などにうつり、増大するのでしょうか?」
「免疫力などにより死滅することはないのでしょうか?」
⇒最初に解答した「解釈1」のように…
殆どは死滅すると思います。
「生着しない」癌細胞は、(最終的に)免疫で死滅する(癌免疫)ことは間違いありません。
「4、遠隔転移は腫瘍が小さいほうが癌細胞の数も少ないから血管に入る確率が減るから、腫瘍系と遠隔転移は相関してるのですか?」
⇒統計学的に「腫瘍径」と「リンパ節転移」は予後と相関(=遠隔転移の確率と相関)していることが解っています。(だからステージの「唯二の因子」となるのです)
つまり「解釈が先」ではなく、あくまでも「統計学的に予後(=遠隔転移の確率)と相関する」⇒(解釈するとすれば)「質問者のおっしゃるとおり」となると想像します。(誰も真実をしっているわけではありません)
「同じような理由で腫瘍系とリンパ転移も相関してるのでしょうか?」
⇒正にその通りです。
「腫瘍径」同様に「リンパ節転移」が直接「血管に入る⇒血行性転移の成立」わけではないのです。