みなさん。こんにちは。
9月になりました。
6月!から始まった長い夏も、さすがに帰り支度をしているようです。
『6724 HBOCの同時再建、術後の放射線治療に関する相談』を回答していて今週のコラムに取り上げようと考えました。
時代の流れとして…
「今週のコラム135,139」でコメントしたように、(現時点では)化学療法歴のある「手術不能または再発乳癌」限定とはいえ、BRCA遺伝子変異に対してその検査(BRACAnalysis)及び治療(Olaparib 商品名lympaza)の適応承認
いやがおうでも、BRCA遺伝子変異が注目されているのです。
・今週のコラム 135回目 対象者をBRCA変異のある転移再発乳癌に絞った臨床試験がOlympiADなのです。
・今週のコラム 139回目 202x年には、術前診断時のサブタイプの検査が「ER, PgR, HER2, BRCA」となるのです!!(おそらく)
これに呼応するかのように「乳癌診療ガイドライン 2018年版」ではHBOCについて多くのページを割いています。
ただ、ここでも(♯6724の回答にコメントしたように)「保険適応外」を簡単に推奨してしまうところは、眉唾ものの「大統領令」にサインばかりしている(どこぞの)トラ〇プと重なります。
それでは、ガイドラインを子細に見ていきます。
1.術式の選択について
全摘を「弱く」推奨する。
これは、「温存乳房内再発のリスクが高い」可能性があるからと解釈できます。
実際には「高い」エビデンスはないため、それで「弱く」推奨となっています。
医師側から「温存の提案」をすることは現に慎み、「患者さん側からの強い要望」が無い限りは全摘となるのです。
2.放射線について
2-1 全摘の場合
照射による有害事象の増加の報告は無いため、通常の癌と全く同様の適応
2-2 温存の場合
(1に関連して)決して推奨される術式でありませんが、(もしも行った場合には)考慮してもよい
放射線感受性が高く2次癌を誘発するリスクも危惧される。
3.リスク低減乳房切除(RRM:risk reducing mastectomy)について
3-1 (乳癌未発症者における)両側リスク低減乳房切除(bilateral RRM: BRRM)
「弱く」推奨する。
乳癌発症リスクは低下(当たり前!)するが、生存率向上は有意とはいえない。
3-2 (乳癌既発症者における)対側リスク低減乳房切除(contralateral RRM: CRRM)
「強く」推奨する。
乳癌発症リスクも生存率向上も有意。
- 保険外診療であるRRMを推奨していることこには(『今週のコラム 136回目 決して適応外診療を勧めることはありません。今回のガイドラインの記載には正直、迷惑であり驚いています』と同様に)呆れるばかりです。
- ただ、「カペシタビンの術後補助療法」では、保険外診療であることに配慮(遠慮?)して「弱く」推奨にとどめているのに対し、CRRMに関しては「強く」推奨していることには呆れるばかりです。
- エビデンスがあるからといって、「適応外診療」を推奨するのは、明らかに間違っています。