[管理番号:6724]
性別:女性
年齢:36歳
田澤先生はじめまして。
HBOCの同時再建、術後の放射線治療に関する相談です。
36歳女性。
2018年2月左乳がん診断
ステージⅡ
トリプルネガティヴ
悪性度3
ki67 43%
発見時のサイズは22mmくらい
エコーではリンパに腫れがあるけれど細胞診ではリンパ転移は確認されず術前抗がん剤でFEC+アブラキサンを4クールずつ
現在アブラキサン3クール目です。
しこりはほぼ見えないほど小さくなりました。
術前抗がん剤をしている間に遺伝子検査を受け、BRCA1に変異が見つかりました。
10月にセンチネル+全摘手術を予定しています。
相談内容は、2018年5月にHBOCのガイドラインが変わったということで、今後の治療や術式をどう考えていけばいいのかということです。
①健側の予防的切除はどう考えればいいのでしょうか。
どのくらい推奨されているのですか?
②術側は全摘でもHBOCの場合リンパ転移が1つでもあれば術後に放射線治療が必要になったのでしょうか。
③主治医から「術後に放射線を当てる可能性がある。
再建するなら放射線治療の前。
放射線後にインプラントは使えない。
つまり、自家組織による同時再建で行ったほうがいい。」と言われたのですが、この場合の同時再建に関して田澤先生はどうお考えになりますか?
④術後にインプラント入れ替え終わってから放射線治療という選択肢はないのでしょうか?
⑤同時再建をしない場合、放射線治療を行ったあとからの二次再建は合併症リスクが高いのですか?
⑥自家組織での同時再建の場合広背筋を使うことになるのですが、ボリュームが足りないから太ももの脂肪を使うと言われましたが、これは保険適用なのでしょうか。
⑦同時再建してしまうと再発を見つけにくいということはありますか?
⑧今回の2018年5月のHBOCに関するガイドラインでは一体何がどう変わったのでしょうか。
2018年の5月に新しく変わったというガイドラインの正しい情報が分からず、何がどう変わったのか把握できませんでした。
多くの質問となってしまいましたが、田澤先生、ぜひご教示いただけますでしょうか。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「術前抗がん剤でFEC+アブラキサンを4クールずつ」
→アブラキサンは本来「術前、術後に使用すべき薬剤ではない」のに、何故使うのだろうか?? ネットでアブラキサンの添付文章を一度見てください。
私には全く理解できません。
「10月にセンチネル+全摘手術を予定」
→何故、最初から全摘を予定しているのに「術前抗がん剤をしている」のか??
これも、私には全く理解できない治療方針です。
★ということで、申し訳ありませんが…
質問者が受けている診療は、私には到底受け入れられません。
その意味では、今回は回答しますが(あまりにも考え方の異なる)担当医との違いに、(かえって)混乱する場合には(私の)回答は忘れてしまった方がいいかもしれません。(念のため)
「①健側の予防的切除はどう考えればいいのでしょうか。どのくらい推奨されているのですか?」
→「強く」推奨されています。
★ただし、「保険適応ではない」ことにご注意ください。
苦言を呈すれば…
今回のガイドラインは「保険適応外」を簡単に「推奨」しているところが大問題です。(カペシタビンの術後治療など、とんでもないことです)
「②術側は全摘でもHBOCの場合リンパ転移が1つでもあれば術後に放射線治療が必要になったのでしょうか。」
→全く違います。
むしろ、HBOCの場合には「放射線による2次癌」の問題があるので「温存でも放射線しない」選択肢まで出しているくらいなのです。
★全摘後の放射線治療にかんしては、(HBOC以外と)全く同様です。(つまりリンパ節転移4個以上なら推奨されるということです)
「この場合の同時再建に関して田澤先生はどうお考えになりますか?」
→放射線照射を前提として考えているのはおかしい(上記)
通常の再建(インプラントでも時価組織でも)でいいでしょう。
「④術後にインプラント入れ替え終わってから放射線治療という選択肢はないのでしょうか?」
→インプラントの場合には、通常そのようにするのがスタンダードです。
「⑤同時再建をしない場合、放射線治療を行ったあとからの二次再建は合併症リスクが高いのですか?」
→違います。
単純に(照射後は)皮膚の問題からインプラントを使った2次再建は、仕上がりに満足がいかない可能性があるので、自家組織再建が一般的に勧められます。
「⑥自家組織での同時再建の場合広背筋を使うことになるのですが、ボリュームが足りないから太ももの脂肪を使うと言われましたが、これは保険適用なのでしょうか。」
→不明です。
脂肪は(のちに)溶けてしまうだけで無意味だと思います。
「⑦同時再建してしまうと再発を見つけにくいということはありますか?」
→ありません。
「⑧今回の2018年5月のHBOCに関するガイドラインでは一体何がどう変わったのでしょうか。」
→上記通りです。
保険適応外なのに「強く推奨」とは…
本当に無責任な人たちです。