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今週のコラム149回目 ここで重要なのは(FEAを)「放っておくと癌になる=前癌病変」との理解でいいのか?

みなさん。こんにちは。

まだまだ暑い日が続きます。

あれっ? 何処かで聞いたような?

 

レミオロメンでした。

「まだまだ暑い日が続くみたいだよ」(電話)

何でもすぐに調べられる。(ネットって素晴らしい!)

 

今では、こんな公衆電話もすっかり見かけませんね。

研修医の頃は「命綱」だったものですが…

 

 

全米オープン

大阪なおみが優勝しました。

凄い!

錦織の準優勝から4年。

優勝を逃した錦織と、すんなり優勝してしまう大阪の違いはさておき。

とってもすごいこと。

おめでとうございます。

 

 

6751経過観察は1年後を本当に信じていいものですか?(9月1日投稿)」を回答していて…

私は、所謂「前癌病変」と言われている(一部誤解)「ADH」や「FEA」について数多くのコメントをしてきたつもりでした。(最近では今週のコラム 134回目 これでADHならば「ADHは確定診断」してもいいのです。(FEAも同様)』)

 

ただ、その後にこのQが来たので「十分ではないのだな?」と、再度取り上げることとしたのです。

 

まずは、「今週のコラム134回目」からの抜粋

 

○乳管内増殖性病変

WHO(2003)  ductal intraepithelial neoplasia(DIN)分類

UDH    Usual ductal hyperplasia(UDH) 通常型乳管過形成

DIN1A  Flat epithelial atypia(FEA) 平坦上皮異型

DIN1B  Atypical ductal hyperplasia(ADH) 異型乳管過形成

DIN1C  Low grade DCIS(grade 1) 非浸潤性乳管癌・低度異型

DIN2   Intermediate grade DCIS(grade 2) 中度異型

DIN3   High grade DCIS(grade 3) 高度異型

 

★ 乳管内増殖性病変DINはDIN1A(FEA)-1B(ADH)-1C~2~3(DCIS)と連続しています。

実際のところADHは「小さいだけの」癌ですから、ADH→DCISというのは時間の問題(単純に、時間とともに大きくなるだけの話です)

それではFEAは?

 

ここで重要なのは(FEAを)「放っておくと癌になる=前癌病変」との理解でいいのか?

という問題です。

 

針生検(マンモトームを含む)は、あくまでも「病変全体からみれば一部しか、見ていない」そういう意識が必要なのです。

 

最近の実際の症例を紹介しましょう。

40代女性A 前医より右乳癌で紹介(その際に左の病変を針生検して良性と診断していた)

初診時

Aさん

「先生、前医で左は良性と言われたんですけど不安なんです。大丈夫? できれば先生にもう一度診断(マンモトームなど)してほしいんです。」

 

前医での(左側の)病理レポートでは「良性:萎縮性乳腺」となっています。

「解りました。診察して必要なら私がマンモトームしましょう。」

 

そこで、診察します。

まずは右側(癌を確認し)、それから左側。

「なるほど、ここですね。確かに触診でやや硬く触れます。気になりますね。」

「超音波でみると、典型的な腫瘤非形成性病変です。これは、(前医で行った)ばね式針生検では不十分な可能性があります。」

 

これが「右」の乳癌です。

不整形の「腫瘤」だということが解りますね。

 

 

 

 

 

これが「左」です。(前医でのばね式針生検では良性でした)

上の写真(右乳癌)とは異なり、「明らかな腫瘤を形成していない」ことが解ります。

これは典型的な「腫瘤非形成性病変」と言えます。

 

 

そこでMMTEの登場です。

 

★ここで脱線

私は結構使うので(充電切れがないように)MMTE本体を江戸川と市川に2台ずつ(計4台)持っています。

症例数が多く、充電切れが相次いだため、DEVICOR MEDICAL JAPANから(異例な)提供があったのです。

 

本社であるDevicor Medical Products(「Leica biosystems」の一部門です)から

(症例数が多く、早期発見に積極的に使用しているとして)「認定証」を貰っています。

 

12日後…

「ADHでした。これは小さいだけの癌です。右と一緒に左も手術します。」

Aさん

「解りました。ショックだけど、見つけてもらってよかったです。」

「MMTEはかなり広範囲の採取ですが、病変全体を評価しているわけではありません。今回手術することで、それ以上の病変が見つかる可能性も十分あります。(左についての)術後療法については、手術病変次第ですね。」

 

手術後4週間後(病理結果の説明)

右は○○でした。 (ここでは省略します。)

「左ですが、低異型の非浸潤癌(low grade DCIS)でした。」

Aさん

「やっぱり、癌の診断でしたか。でも浸潤癌でなくてよかった。大きさはどのくらいだったのですか?」

「70mmでした。」

Aさん

「70mm? 随分大きい!」

「病変の範囲は広かったのですが、とても大人しい(low grade)ものです。勿論取り切れています。」

Aさん

「とても、そんなに切除したように見えないのだけど?」

「脂肪を残しているからです。乳腺だけ切除する分には意外と変形しないものなのです。」

 

 

(参考に)

WHO分類は2012に改訂されています。

  • これに伴い、Columnar cell lesion(CCL)という病理診断が増えています。

WHO(2012) Intraductal proliferative lesions

Usual ductal hyperplasia(UDH)

Columnar cell lesions(CCL) – flat epithelial atypia(FEA) =CCL with atypia

Atypical ductal hyperplasia(ADH)

Ductal carcinoma in situ(DCIS)