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今週のコラム 139回目 202x年には、術前診断時のサブタイプの検査が「ER, PgR, HER2, BRCA」となるのです!!(おそらく)

梅雨明け

驚きですね。まさか、6月に梅雨明けなんて…

私の好きなFMスカイロケットカンパニーで「マンボーやしろ」が先週月曜日に言っていた。

「こんなに暑くて、天気がいいんだからスカロケ的には今日で梅雨明けだ! 梅雨明け宣言だ! だって、時々あるだろ? 気象庁が ”実は梅雨、明けていました” ってやつ。」

あはは…。 6月だよ! いくらなんでもねー。(その時には100%ギャグとしてでした。 本人が一番びっくりしていることでしょう。)

今朝のFM 「いのちの森 voice of forest」 (もちろん収録なのですが…)「日本全国、梅雨真っただ中ですが…」

そうだよね。

まさか、7月1日の時点で「関東が梅雨明」など、予想外だったはず。

「今年の夏は長くなりそうだ」

(恰好つけではなく)普通にそうなりますね。

 

PRESIDENT MOOKの「頼れる病院ランキング 2018」が送られてきました。

何故?(順位に載ってますよ!ということなのかもしれないが…)

手術件数が「288 全摘148 温存140 乳房再建0」になっている。

何処調べの数字?

実際は(昨年2017は)「363  全摘154温存201乳房再建14」ですが…(トップページの手術実績を参照のこと)

本に数字を出すなら、きちんとしてほしいものです。(出版社に説明を求めています)

 

FMから流れたshort story

「じゃー、会社行ってくるよ。」

「ダーリン。お隣の旦那さんは、出かける際には奥さんにキスしていくそうよ。ねー、あなたもそうしたら?」

「うーん。俺はかまわないけど、隣のご主人許してくれるかな?」

 

 

オラパリブ

Olaparib(商品名Lynparza)

PARP(poly ADP ribose polymerase)阻害剤

PARPはDNA修復にかかわる酵素

(以上、「今週のコラム 135回目 対象者をBRCA変異のある転移再発乳癌に絞った臨床試験がOlympiADなのです。」より抜粋)

 

適応承認が、いよいよ近づいてきました。

この薬剤はかなりのインパクトがあります。

「パルボシクリブ」は「久々の大物登場」と称しましたが…

オラパリブは(間違いなくパルボシクリブを圧倒し)、その衝撃は(eriblinどころか)あの「ハーセプチン以来の大物」級です。

 

○適応

1.近々(承認間近です)

これはOlympiAD試験に準ずるので(正確にいうと「適応承認前」なので、確かではないのですが)「現状」BRCA遺伝子陽性の転移再発乳癌となります。

実際に対象者がどのくらいとなるのか?

この試験がらみで、いろいろなデータ(ただし海外)が出ているのですが、対象者(BRCA遺伝子変異保有者)は全乳癌の10%(TNの20% ルミナールタイプの5%前後)位のようです。

また、更に(この10%は)「再発乳癌」を対象とすると「30%位」まで上昇するようです。(繰り返すようですが、以上は海外のデータであり、日本のデータはありません)

 

現状、適応対象が「BRCA遺伝子陽性の転移再発乳癌」ですから、その適応は「再発患者さんの実に30%」となるのです。

効果の数字(奏効率)を考えると、(これら対象患者さんにとっては)いずれ「アンスラサイクリン」「タキサン」の次のラインとなるでしょう。(その意味では「カペシタビン」や「TS-1」「ビノレルビン」は相手になりません。)

副作用が軽微であることや、経口であること。特に「トリプルネガティブ」に対して有効であることを考えると、(HER2陽性患者さんに、ハーセプチンを行うように)トリプルネガティブ患者さんには(この検査を当然のように行い)オラパリブを用いるのが当たり前となるでしょう。

 

2.将来

更に、現在進行中の「OlympiA試験(再発ではなく、術後補助療法をターゲット)」の結果が出ると(おそらく、有意差は出るでしょう)術後補助療法としても適応拡大となります。(そもそも、OlympiAはそれが狙いなのですが)

 

この意味が解りますか?

現状、術後補助療法として適応がある抗がん剤(分子標的薬も含む)は非常に限られています。『今週のコラム76回目 「手術不能乳癌と転移再発乳癌」は添付文章では「手術不能又は再発乳癌」と一括りにされていることからも解るように、『手術不能乳癌と転移再発乳癌の扱いは一緒』なのです。』をご参照のこと

(以下のみが、補助療法で適応があります)

①アンスラサイクリン及びタキサン

②ハーセプチン(HER2陽性の場合)

③UFT(ただし、一般的には用いられません)

 

☆将来(近未来)には、ここに「オラパリブ」が肩を並べるのです。(正確に言えば、①とも③とも異なり②に立ち位置が近いといえます。)

HER2陽性は全乳癌の15-20%前後、BRCA遺伝子変異は10%前後となれば、「ハーセプチンほどではないが、(対象者が)かなりの規模」となるのです。

これは、乳がん治療の地図を書き換えるほどの「激変」です。

 

(参考に)

私には、どうしても「trastuzumab(ハーセプチン)」と重なります。

trastuzumab

2001  (HER2陽性)転移再発乳癌に適応承認(日本)

この適応承認前にアメリカから「ハーセプチン」を個人輸入して治療されていた再発患者さんを、今でも鮮明に覚えています。

(脱線しますが)

当時、1990年代後半(東○大学病院時代のことです)

外科研修医として(一般)外科研修を3年間終了し、東○病院第2外科乳腺グループ(乳腺班と呼ばれていました)の一員となったばかりで「乳がんの右も左も解らない」そんな時期です。

その患者さんは、大学病院の特別個室に長期入院してハーセプチンを30回以上投与していたのです。(ご主人が公認会計士で経済的に恵まれていることも聞いていました)

その当時は「HER2検査(当時「ハーセプテスト」と呼ばれていました)」の存在がようやく一部に知られてきたころで、(ハーセプチンの無い時代だったので)単純に「予後不良因子」という位置づけでした。

勉強不足の「新入医局員(研修が終わり医師としては5-6年目でしたが)」であった私にとっては、「ハーセプチン?何、それ?」意味不明でした。

そんな「存在自体が驚きであった」ハーセプチンですが、更に驚いたのがその「投与回数」です。

『「ハーセプチン」って抗がん剤のようだけど、それを30回とか身体大丈夫なの?? 』素人?ながら大変驚いたものです。

何故なら、その当時の抗がん剤と言えば(タキサンもアンスラサイクリンも登場前の)CMFの時代でしたが、一般の抗がん剤は「副作用の蓄積」と「効果の耐性」によりそんな回数はありえないのです。

そしてその数年後、大きな期待のもと2001を迎えたのです。

それまで「予後不良因子」として知られていたHER2陽性が、「治療が奏功するサブタイプ」へと我々の認識が変化していったのです。

 

2008 (HER2陽性)術後補助療法への適応拡大

今では、「サブタイプ」として術前診断時に「ER, PgR, HER2」を検索するのが「常識」ですが、2008までは「ER, PgRのみ」であり、(再発しない限り)「HER2検査自体、適応外」だったのです。(まだ、10年しか経っていませんね。)

この「術後補助療法」への適応拡大は、実に「再発率を半分」にしたのです。

(2001以来)「抗がん剤が効くことは効くけど、再発率はやはり高いな!」という位置づけであった「HER2陽性」が、これにより「ルミナールタイプと予後で肩を並べた」のです。

☆術後補助療法への適応拡大のインパクトがお判りでしょうか?

医療費(国も)への負担も「半端無い(再発しない人にも使うことになるので、再発治療とは数が全然違うのです)」が、予後改善効果も「半端無い」のです。

♯だから、「術後補助療法への適応は厳しく」殆どの抗がん剤の適応は「転移再発限定」となるのです。

 

話をオラパリブに戻します。

と、いうことはオラパリブも

2018 (BRCA変異)転移再発乳癌に適応承認

202x(BRCA変異)術後補助療法への適応拡大

202x年には、術前診断時のサブタイプの検査が「ER, PgR, HER2, BRCA」となるのです!!

 

 

BRACAnalysis  myriad社

このBRCA遺伝子の検査(将来、サブタイプの検査として標準となる?)

検体:血液検査

生殖細胞系列のBRCA1またはBRCA2遺伝子を調べ、「オラパリブ」投与の可否のための検査である。

具体的には、検体の遺伝子の配列を調べ(sequencing)以下に分類する。

①病的変異

②病的変異疑い

③臨床的意義不明のバリアント(VUS)

④遺伝子多型の可能性

⑤遺伝子多型

上記のうち、①②が適応となるのです。

 

副作用

まだ(乳がんでは承認前だし)すでに適応が通った卵巣癌でも適応承認されたばかり(2018/4月承認)なので、実臨床でのデータ(この場合には卵巣癌患者さんのものです)は乏しいのですが…

1.貧血

2.吐き気

♯ (乳がんで使用する)今までの化学療法では「貧血」は殆ど無かったので、「実際、どうなのか?」注目しています。

吐き気は、一般的な制吐剤(メトクロプラミド、ドンペリドン)で対処可能とのこと(製薬会社担当者による)