こんにちは。田澤です。
「しまった!」
昨日、大阪で講習会があったので(開始が朝早かったので大阪に前泊しました。)pm5時過ぎには、新幹線の中。
すっかり「安部礼司」を聴くのを忘れてしまった!(「空飛ぶタイヤ」を読みふけっていました。大型トレーラーのタイヤが脱落したアレです。当時話題になった「ハブ」を覚えています)
と、いうことで「今週のコラム」が遅くなってしまいました。
再発治療に対する抗がん剤
管理番号6533「遠隔転移の化学療法について」を回答していて、感じた事。
化学療法が先か、ホルモン療法でだらだらやってからか?
Key Wordは「いい状態を維持」です。
ホルモン療法でダラダラと病勢悪化を待ち、(病勢悪化することは予想していたことなのに)「この状態では抗がん剤は体に負担だからしないほうが良い」とは…
★結局、最初から「抗がん剤をしない」ように工程表を作成していることになります。
矛盾があるとはおもいませんか?
この質問者にも共通することですが、
皆さん(及び、ある種の医師)の考えの中に「抗がん剤は負担だ。私にはできないかもしれない。」という意識があるようです。
ネットを見ると「闘病記」なる「こんなにも抗がん剤はきつい」という文字ばかりが「一人歩き」しているのでしょう。
☆実際は…
抗がん剤には、かなりの種類があるのです。
「きつい」ものもあれば、「そうでもない」ものもたくさんあります。
特に再発治療に有効な抗がん剤は「きつくない」のです。
1.Bevacizumab + paclitaxel
投与スケジュール
Day1) bevacizumab + paclitaxel
Day8)paclitaxel
Day15)bevacizumab + paclitaxel
Day22)休み
これを「3投1休」と表現します。
・これは非常に「効果と副作用のバランス」がいい薬剤です。
効果は絶大であり(当院では、手術不能乳がんの大多数が、この3クール投与で手術可能となっています)それに比して副作用は軽微です。
・bevacizumabは分子標的薬であり、これ自体には一般的な抗がん剤の副作用(吐き気や脱毛)は一切ありません。(鼻血や高血圧が回を重ねると出てきますが、許容範囲といえます)
・paclitaxelは毎週投与なので、副作用は大したことがありません。(気を付けるのは「便秘」くらいであり、その他「脱毛」は3回目投与以降に「痺れ」は6回目以降に出ますが、「強烈」ではありません。)
・また「高齢者」には(bevacizumabはそのままで)paclitaxelだけ減量(8割程度)とすれば、「なんのことも無く」継続投与可能なのです。
2.Eriblin
投与スケジュール
Day1) eriblin
Day8) eriblin
Day15) 休薬
「2投1休」です。
・この薬剤も非常にバランスがいい薬剤です。
効果と副作用は(1に比べると)「効果は(若干)劣るが、副作用はより軽い」と理解するといいでしょう。
3.アンスラサイクリン、(EC, AC)
投与スケジュール
Day1) ファルモルビシン(アドリアマイシン)+エンドキサン
Day8) 休薬
Day15) 休薬
これは「1投2休」とは表現せず、「3週に1回投与(triweekly)」と表現します。
・伝統的にKey drugとして抗がん剤の中心的薬剤
・術後補助療法の主役
・副作用(吐き気)がネックであり、「効果と副作用のバランス」は上記(1、2)には及ばない。
・蓄積性の非可逆的心毒性があり、生涯投与量に制限がある。
4.ドセタキセル
投与スケジュール (3と同じ)
・アンスラサイクリンと並んでKey drug
・術後補助療法の主役
・副作用(強烈なだるさ、筋肉痛及び蓄積性の浮腫、痺れ)があり、(3同様)上記(1、2には)及ばない。
その他
・ビノレルビンやジェムシタビン、経口(TS-1、カペシタビン)がある。
・正直言って、これらの薬剤は「効果と副作用のバランスが逆転」していると感じる。
・(私は)積極的にこれらを勧めることがない。
再発治療にスタンダードはありません。
(抗がん剤を使わず)「ホルモン療法でダラダラするやり方」も無論あります。
ただ、上記薬剤の特性を上手く使うべきだと(私は)思います。
患者さんが積極的ならば
効果と副作用のバランスがとれた抗がん剤で「いい状態を維持」するやり方があることを知ってもらいたいのです。
例)
1.あくまでも「ホルモン療法」から開始し、(病勢が悪化したら)「抗がん剤も考慮しましょうね」パターン
ホルモン療法→「病勢が、次第に悪化。病変の進行に伴う症状が出現」→(この状態で)抗がん剤を開始しようとしても(身体がきつくて)減量せざるをえない→効果が今一つのまま病勢悪化
2.抗がん剤を開始し、「画像上、CR:complete response 完全緩解(を狙う)」→(病状がいい状態を)ホルモン療法で維持→(ホルモン療法で病状再悪化したら)抗がん剤の再登場
このケースは『今週のコラム 123回目 QOLを保ったまま(胸部Xpも正常だし、無症状)、副作用も問題なく継続できる。』を参照してください。
たしかに、2であっても(ホルモン療法で)「永遠に維持はできない」かもしれません。(永遠に維持=根治は再発乳癌では数%以下なのです)ただ、逆に言えば「0%ではない」のです。
☆再発治療で「根治を目指しましょう」とは(私も)言いません。
ただ「長期コントロールの先には(もしかして)根治があるかもしれない」
そう思うのです。