Site Overlay

妻が乳癌と診断されました。 遠隔転移の可能性は高いですか。

[管理番号:8618]
性別:女性
年齢:45歳
病名:乳癌
症状:胸骨あたりの痛み、疲れやすい、腰が痛い、体重が減ってます
投稿日:2020年6月9日

妻が乳癌と診断されました。

エコーの結果が以下の通りです。

1.AC領域に51mm×48mm×20mmの低エコー腫瘤
形状不整形
境界明瞭粗ぞう 一部不明瞭
不均質
後方エコー 不変
前方後方境界腺圧排、一部断裂様
内部に微小~粗大石灰化多数
内部に動脈性血流
2.C領域に8mm×7mm×4mmの低エコー腫瘤
A領域に5mm×4mm×4mmの低エコー腫瘤
B領域に9mm×8mm×6mmの低エコー腫瘤
上記は全て悪性を疑います。

リンパ節
左腋高に12mm×10mm×9mmの辺縁不正な低エコー腫瘤悪性ん疑います
左腋高に11mm×8mm×11mmの辺縁不正な低エコー腫瘤悪性を疑います
左胸骨傍に11mm×9mm×5mmの辺縁不正な低エコー腫瘤
腹部大動脈にも扁平型のリンパ節数個

以上のエコー結果でした。

遠隔転移の可能性が高いですか。

腫瘍も大きく、心配でたまりません。

現在、CT MRI 検査してます。

明日針生検です。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「遠隔転移の可能性が高いですか。」
⇒乳癌は(皆さんが想像するよりも)「遥かに」初診時に遠隔転移があることは少ない。

 私であれば、余程でない限り(そもそも)CTもPETも撮影しません。
 『今週のコラム 55回目 乳癌は「この状況」となっても「遠隔転移」を(めったには)起こさないのです。』をご参照ください。

「:胸骨あたりの痛み、疲れやすい、腰が痛い、体重が減ってます」
⇒これらの症状については以下のコラムを是非、ご参照に(乳癌が原因で体重減少など起きませんよ。)

 『今週のコラム111回目  大事なことは、これら①~④の病気など世の中には無いのです。それは(我々医師には)自明なことなのです。
 『今週のコラム 153回目 喉がイガイガするとか咳が出る→それは風邪です。

 

 
 

 

質問者様から 【質問2 】

診断の結果、ステージ3 c となりました。
性別:女性
年齢:45歳
病名:乳癌
症状:胸のしこり、左腕のむくみ
投稿日:2020年6月12日

先日は、遠隔転移の可能性について質問させていただきました。

先生のおっしゃる通り、遠隔転移はありませんでした。
ありがとうございました。

しかし、診察の結果、遠隔転移はありませんでしたが、
腫瘍の大きさが6cm×4cm×2cm その他1cm以下の腫瘍が3つ腋高リンパ節転移あり(数はわかりません)
さらに、胸骨内側リンパ節転移あり(数はわかりません)
ステージ3 cと言われました。

病理検査の結果は(下旬)日に出ます。

胸骨傍リンパ節転移は稀なのか、あまり情報がなく、また、ある論文では、胸骨傍リンパ節転移がある場合は予後不良で、ほとんど再発していると書いてありました。

主治医からは、術前化学療法を6ヶ月行い、その後手術、術後治療と放射線治療と言われました。
胸骨傍リンパ節は放射線治療を行うということでした。
また、胸骨傍リンパ節の放射線治療は技術的に難しいようで、癌専門の病院で治療してもらうのも一つの方法ということでした。
ちなみに妻が通院しているのは大学病院です。
そこで質問です。

質問①
胸骨傍リンパ節転移の治療は放射線治療と薬物療法しかないのでしょうか。
胸骨傍リンパ節郭清などは無理なのでしょうか。

質問②
胸骨傍リンパ節への放射線治療は技術的に難しいのでしょうか。

質問③
胸骨傍リンパ節転移があると、予後はかなり不良で再発の可能性はかなり高くなるのでしょうか。
放射線治療だけでは根治は難しいということでしょうか。

質問④
ステージ3 cは個人的にかなり厳しい状況なのだろうと予想していますが、根治はかなり厳しいのでしょうか。

質問⑤
治療の手順としては、腫瘍も大きく、腋高リンパ転移、胸骨傍リンパ転移のステージ3 cということで、術前化学療法→手術→術後治療→放射線治療があたりまえなのでしょうか。
ちなみに妻は身体が小さく、乳房も小さく、6cmもの腫瘍があるようには見えません。
体重も40kgくらいです。
抗がん剤で体力が落ち、その後の手術も心配です。
やはりステージ3 cでいきなり手術はないのでしょうか。
術前化学療法が利かす、そのまま手術できずなどということもありえるのでしょうか。

以上、長々とすみません。

本来であれば一週間ほど間を空けて質問しなければならないということですが、胸骨傍リンパ節転移に関する情報が少なく、田澤先生の意見をお伺いしたいと思い、質問させていただきました。

妻には根治してほしいですし、少しでも長く生きてほしと願っており、少しでも可能性の高い方法で治療できたらと考えています。

申し訳ありません。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。

「質問①
胸骨傍リンパ節転移の治療は放射線治療と薬物療法しかないのでしょうか。
胸骨傍リンパ節郭清などは無理なのでしょうか。」

⇒放射線での治療となります。
 この部位は通常のリニアックでは(有害事象の問題で)難しいのでtomotherapyがいいと思います。

「質問②
胸骨傍リンパ節への放射線治療は技術的に難しいのでしょうか。」

⇒上記(tomotherapyであれば問題ありません)

「質問③
胸骨傍リンパ節転移があると、予後はかなり不良で再発の可能性はかなり高くなるのでしょうか。
放射線治療だけでは根治は難しいということでしょうか。」

⇒それは異なります。放射線で十分制御が期待できます。

 ★誤解してほしくないのですが、ステージはステージなので「胸骨傍+だから」というわけでなく、ステージに見合った再発率とはあります。

「質問④
ステージ3 cは個人的にかなり厳しい状況なのだろうと予想していますが、根治はかなり厳しいのでしょうか。」

⇒根治する確率の方が高いと思います。

「質問⑤
治療の手順としては、腫瘍も大きく、腋高リンパ転移、胸骨傍リンパ転移のステージ3 cということで、術前化学療法→手術→術後治療→放射線治療があたりまえなのでしょうか。」

⇒何故、術前抗がん剤をしようとするのか不明

 手術前に抗がん剤しても、やることは一緒。(因みに予後も一緒)
 それよりも、「抗がん剤を先行」させることで「手術不能に追い込まれるリスク」がある方が(私は)気になります。(抗がん剤は効くとは限らないから)

 是非、『今週のコラム 238回目 「残存した転移性リンパ節」が、術後数年し再発するかもしれませんよ。』を熟読ください。
  更に、『江戸川病院での診療』の中の『江戸川病院での手術』の中の『その2.腋窩鎖骨下郭清の習熟度』も参考にするといいでしょう。

「やはりステージ3 cでいきなり手術はないのでしょうか。」
⇒手術先行がいいと思います。(上記)

「術前化学療法が利かす、そのまま手術できずなどということもありえるのでしょうか。」
⇒それが一番心配なのです。

「妻には根治してほしいですし、少しでも長く生きてほしと願っており、少しでも可能性の高い方法で治療できたらと考えています。」
⇒まずは、きちんとリンパ節転移の状況を教えてもらうことです。

 実際に手術するのはレベル3までなので、以下を教えてもらいましょう。
 1.レベル1および2が腋窩静脈から外せる状況なのか?(そうだと推測しますが)
 2.レベル3の転移が(あるのなら)どのくらいの大きさで何個あるのか?

 上記を、執刀医自身がエコーで判断できないようならば、そんな執刀医に最善の治療を任せられるのか?

★ 「手術(レベル3まで)」⇒「胸骨傍リンパ節を含めた放射線(tomotherapy)」
⇒「サブタイプに応じた全身治療」
 

 
 

 

質問者様から 【質問3 】

ステージ3 cの治療について
性別:女性
年齢:45歳
病名:乳癌
症状:乳癌 病理検査中
投稿日:2020年6月15日

田澤先生、回答ありがとうございます。

とても参考になりました。

次の診察のとき、主治医に手術先行も含めて詳しく聞いて見たいと思います。

24日に病理検査の結果が出ます。
リンパ節転移の数についても合わせて聞いてみます。

質問させていただきます。

質問①
主治医からは術前抗癌剤を提案されていますが、病理検査で、抗癌剤が効くのかわかるのでしょうか。

質問②
術前抗癌剤を始めたとして、手術不能になるのはどのような場合でしょうか。
(薬が効かず遠隔転移、妻の体力低下、腫瘍の増大などでしょうか)

質問③
手術を田澤先生にお願いする場合、どれくらい先になりますでしょうか。
また、住まいが東北地方ですが、術後の治療はどのようになるでしょうか。

質問④
ステージ3 cと言われ、早く治療に入りたい思いばかりあります。

田澤先生のコラムや回答を拝見し、焦っても仕方ないというのはわかりますが、治療が始まるまで何かできることはないでしょうか。

長々とすみません。
また、立て続けに質問してしまい、申し訳ありません。
よろしくお願いいたします。

 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。

昨日は掲示板で私自身のモヤモヤした感情を吐き出しました。
質問者の『妻には根治してほしいですし、少しでも長く生きてほしと願っており、少しでも可能性の高い方法で治療できたらと考えています』に強く感銘したからです。

本来、再質問には1週間以上空けてもらっていますが、そういうことなのです。

「質問①
主治医からは術前抗癌剤を提案されていますが、病理検査で、抗癌剤が効くのかわかるのでしょうか。」

⇒わかりません。
 強いて言えば…
 HER2陽性ならば「ハーセプチン及びパージェタが効きそう」程度の参考にはなります。

「質問②
術前抗癌剤を始めたとして、手術不能になるのはどのような場合でしょうか。
(薬が効かず遠隔転移、妻の体力低下、腫瘍の増大などでしょうか)」

⇒体力低下などありません。(乳癌手術に体力は不要 90歳代でも手術できる)
 シンプルに

 腫瘍が増大して皮膚に広範囲に浸潤もしくはリンパ節が血管に浸潤し(めったにありませんが)摘出不能

「質問③
手術を田澤先生にお願いする場合、どれくらい先になりますでしょうか。」

⇒そのための緊急枠があります。(1か月以内)

「また、住まいが東北地方ですが、術後の治療はどのようになるでしょうか。」
⇒抗がん剤は(遠方でも)通院する方も大勢いらっしゃるし、地元で探すこともあります。

 放射線は(連日なので)入院して行う方も多い。

「田澤先生のコラムや回答を拝見し、焦っても仕方ないというのはわかりますが、治療が始まるまで何かできることはないでしょうか。」
⇒治療としてはありません。
 ただ、この乳がんプラザをよく読むことです。(知識は時に武器となります)

「手術相談」メールはこちらをクリックしてください。