[管理番号:10404]
性別:男性
年齢:45
病名:浸潤性乳管癌
症状:
投稿日:2022年6月29日
【現在までの経緯】
45歳男性。
2ヶ月ほど前から、右乳首付近に気になるしこりを発見し、乳腺科のあるクリニックを受診。
エコー、マンモグラフィー、細胞診を行い乳管癌の疑いと診断。
針生検含め更なる検査実施できる病院へ紹介状を書いていただき、そちらでのエコー、マンモグラフィー、針生検、血液検査などの結果、浸潤性乳管癌と診断されました。
MRIは当初枠取りはされたものの、主治医の判断で今のところ実施していません。
来月手術が決まっております。
【術前組織生検の結果】
ステージⅠ 1.7cm
限局性
リンパ節転移 なし
遠隔転移の評価 なし
ホルモン受容体 ER(+) PgR(+)陽性
HER2タンパク 1+ 陰性
Ki67 45%
浸潤性乳管癌
サブタイプ ルミナールB(HER2陰性)
【術後の治療予定】
局所
△放射線
全身
◎ホルモン療法
△抗がん剤治療
【先生にご意見をお伺いしたい内容】
①センチネルリンパ節に転移があっても転移個数が1個または微小転移であれば郭清省略すると言われましたが、郭清しなくて予後の再発、転移などに影響は無いと考えてよいのでしょうか。
②術後5週間程度で、病理結果がわかると言われています。
予後不良なタイプと言われる、ルミナールB HER2 陰性、Ki67 45でしたので、予めOncotyoe DXを依頼して、術後5週間後の最終病理結果がわかる時に、Oncotyoe DXもわかっているほうがその後の治療にすすみやすいのではないかと思ったのですが、主治医からは、術後結果をみてから考えましょうと言われました。
Oncotyoe DXを術後5週間後から、依頼した場合、結果が出てからだと、抗がん剤治療をするのが遅すぎにはならないでしょうか。
Oncotyoe DXをやりたい旨、再度主治医にご相談したほうがよいでしょうか。
③最近、左右の胸の間の骨に痛みがあります。
(しこり部分とは別)
CT MRIをやっていないのですが、症状を伝えて再度診察をしていただいたほうがいいでしょうか。
次は手術前日まで通院の予定は無い状態です。
④遺伝性乳がんを調べる検査(HBOC)は、(再発出ない限りは)あくまでも「遺伝子変異があったら、対側予防切除を希望する場合」が適応条件で、男性の場合「対側予防切除は該当しない」ので検査の適応は無いとおもいますが、前立腺がんや脾臓がんの発症リスクを知るために実施しておいたほうがよいものなのでしょうか。
男性の乳がんで、且つ年齢40代ということであまり例を見つける
ことができず、アドバイスいただけると幸いです。
よろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは田澤です。
①センチネルリンパ節に転移があっても転移個数が1個または微小転移であれば郭清省略すると言われました
⇒微小転移ならば郭清省略、(たとえ1個でも)肉眼的転移(2mm以上)であれば追加郭清を(私なら)勧めます。
郭清しなくて予後の再発、転移などに影響は無いと考えてよいのでしょうか。
⇒微小転移であれば、影響ありません。
②術後5週間程度で、病理結果がわかると言われています。
予後不良なタイプと言われる、ルミナールB HER2 陰性、Ki67 45でしたので、予めOncotyoe DXを依頼して、術後5週間後の最終病理結果がわかる時に、Oncotyoe DXもわかっているほうがその後の治療にすすみやすいのではないかと思ったのですが、主治医からは、術後結果をみてから考えましょうと言われました。
Oncotyoe DXを術後5週間後から、依頼した場合、結果が出てからだと、抗がん剤治療をするのが遅すぎにはならないでしょうか。
⇒術後補助療法を「慌てて急いで行う」必要は「全く」ありません。
OncotypeDXを術後5週間後にオーダーしても「全く」問題ありません。
★因みに当院でも術後4週間で病理説明をして、その時点で(希望者及び該当者には)OncotypeDXをオーダーしています。
③最近、左右の胸の間の骨に痛みがあります。
(しこり部分とは別)CT MRIをやっていないのですが、症状を伝えて再度診察をしていただいたほうがいいでしょうか。
⇒遠隔転移の可能性は殆どないのでCTは不要だと思います。
またMRIは「そもそも」男性乳癌の場合不要です。(MRIは乳腺内の拡がりをみるためなので、全摘の場合全く無意味です)
④遺伝性乳がんを調べる検査(HBOC)は、(再発出ない限りは)あくまでも「遺伝子変異があったら、対側予防切除を希望する場合」が適応条件で、男性の場合「対側予防切除は該当しない」ので検査の適応は無いとおもいますが、前立腺がんや脾臓がんの発症リスクを知るために実施しておいたほうがよいものなのでしょうか。
⇒不要です。
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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2022/7/7
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質問者様から 【質問2】
男性乳がん ルミナールB HER2陰性 の抗がん剤治療について
性別:男性
年齢:45
病名:男性乳がん 浸潤性乳管がん(充実型) ルミナールB
症状:
投稿日:2022年9月2日
乳房全摘での手術を終え、先日、術後の病理結果が出ました。
【術後病理結果】
浸潤性乳管がん(充実型)
ステージⅠ
サブタイプ ルミナールB(HER2陰性)
がんの浸潤径 1.2cm
脈管浸潤 なし
リンパ節転移 なし
センチネルリンパ節(0/3)
温存手術の断端 (-)
ER (+)5+3=8
PgR (+)2+3=5
HER2タンパク 0 陰性
ki67 55%
tf 2
na 2
mc 3
hg 2
ng 3
【今後の治療予定】
局所
無治療
全身
抗がん剤治療(TC 3週に1回×4)→検討中
ホルモン治療 →まだ開始していません
【先生にご意見をお伺いしたい内容】
①組織学的グレード2、核グレード3、ki67 55%と活発ながんである。
(予後不良になる要素と認識してます。)
リンパ節転移やがんのサイズは1.2cmと大きくなく、ルミナールBでホルモン治療が有効なタイプではある。
医師からは、ホルモン治療は必須、抗がん剤治療は辛い副作用などもあるから絶対に必要とは言わない。
ただ、まだ40代で体力もあり抗がん剤治療も乗り切れるし、これからの20年30年を考えてやる選択はあると言われました。
OncotyepDXで抗がん剤の上乗せ効果を確認出来ないか聞いたところ、まだ保険治療になっておらず、無償提供プログラム中だが、男性は適応外とのことで、出来ないそうです。
OncotyepDXができない中で、抗がん剤治療をやるべきか悩んでいます。
先生でしたら、抗がん剤治療をすすめますか?
②ホルモン治療だけの場合と、抗がん剤治療もやった場合な、5年生存率、10年生存率、再発率はどれぐらいとみたらいいのでしょうか。
男性乳がん、且つ40代ということで分からないことも多く、ぜひアドバイスいただきたく、よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは田澤です。
当然ながら…
男性乳癌での大規模臨床試験は存在しないので、「基本的に」女性同様に行うことが推奨されています。
私自身は(ここ江戸川に赴任してから8年以上経過し、その間男性乳癌も10例程度は経験していますが)全てホルモン療法(全てtamoxifen only)であり化学療法をしたことがありません。
★幸い、皆さん無再発で「男性乳癌はしこりが小さいうちに自覚できるので早期発見が多く、故に予後がいい癌」と捉えています。
その意味で、もしも質問者が私自身の患者さんであれば(やはり早期だし)一瞬の迷いもなく「tamoxifen 5 years」としたでしょう。(抗がん剤の提案はしません)
ただしガイドラインを見ても「男性乳癌でも多遺伝子アッセイ(OncotypeDX)の有効性」についても言及しているとおり、患者さん自身が気になるのであれば「OncotyepDX無償提供プログラム」を行ってもいいでしょう(男性除外などの規定は無い筈です)
ご参考に。
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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2022/9/10
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質問者様から 【質問3】
男性乳がん ルミナールB HER2陰性 の治験について
性別:男性
年齢:45
病名:浸潤性乳管がん(充実型)
症状:
投稿日:2022年11月21日
乳房全摘での手術、術後TC×4回を終えました。
【術後病理結果】
浸潤性乳管がん(充実型)
ステージⅠ
サブタイプ ルミナールB(HER2陰性)
がんの浸潤径 1.2cm
脈管浸潤 なし
リンパ節転移 なし
センチネルリンパ節(0/3)
温存手術の断端 (-)
ER (+)
PgR (+)
HER2タンパク 陰性
ki67 55%
組織学的グレード2
核グレード3
【今後の治療予定】
ホルモン治療 5年
【先生にご意見をお伺いしたい内容】
ホルモン治療5年に関し、以下2つを提案されています。
治験は割り振られた結果タモキシフェンになる可能性もあるのですが、先生でしたら治験を勧めますか。
遠隔転移、局所再発など
最大限可能性を下げられることを考えた時にどちらの選択が望ましいか、是非ご意見伺いたくよろしくお願いします。
①タモキシフェン
②ジレデストラント(第Ⅲ相治験)
※割り振られた結果タモキシフェンを飲む可能性もあり
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
治験する理由がありません。
ご参考に。
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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2022/11/29
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質問者様から 【質問4】
男性乳がん ルミナールB HER2陰性 の局所再発について
性別:男性
年齢:47
病名:
症状:
投稿日:2024年03月29日
いつもありがとうございます。
2022年7月 乳房全摘
2022年9-11月 抗がん剤治療(TC ×4)
2022年11月 ホルモン治療開始(タモキシフェン×5年)
2023年6月 術後1年検診初見なし
2024年3月 局所再発
【初発術後病理結果】
浸潤性乳管がん(充実型)
ステージⅠ
ルミナールB(HER2陰性)
がんの浸潤径 1.2cm
脈管浸潤 なし
リンパ節転移 なし
センチネルリンパ節(0/3)
温存手術の断端 (-)
ER (+)5+3=8
PgR (+)2+3=5
HER2タンパク 0 陰性
ki67 55%
組織学的グレード2
核グレード3
【腫瘍マーカー】
CEA
抗がん剤前 2022年9月 0.5
抗がん剤終了1ヶ月後 2022年12月 0.7
術後1年検診 2023年6月 0.9
CA15-3
抗がん剤前 2022年9月 7.7
抗がん剤終了1ヶ月後 2022年12月 8.7
術後1年検診 2023年6月 6.9
【先生にご意見をお伺いしたい内容】
術後1年8ヶ月後、抗がん剤後1年4ヶ月後に、手術跡の2cm下部に5mm程度の脂肪腫のようなしこりを発見
エコーでは脂肪腫ではとの診断だったものの、1ヶ月後の定期診察の際に、念の為針生検をしたところ悪性であることが判明
①局所再発?
初発時に全摘したものの取り残し(主治医からは針生検をした際に散らばり取り残りがあったのではと)、そこから再度1年強をかけて、しこりが5mmぐらいまで大きくなり浸潤し、皮膚上からも触れられる大きさになったということで、これは局所再発(胸壁再発)と考え、腫瘍を摘出すれば、完治を目指せると思ってよいのでしょうかそれとも1つ局所再発したらもう遠隔転移も遅かれ早かれすると覚悟した方がよいのでしょうか(初発時にやっていない、PETを次回すると言われているので、遠隔転移と思われている可能性も)
②抗がん剤の効果とタモキシフェンの効果?
初発時に、ステージ1でしたが、やれることはやりたいと抗がん剤(TC ×4)もして、その後タモキシフェンも継続していますが、抗がん剤もタモキシフェンも残存していた癌細胞による局所再発の抑制ではなく、全身の遠隔転移再発の防止の役割だったため、局所再発は防ぐ手段が無かったということでしょうか
③今後の治療
腫瘍の切除に加え、初発時に全摘だったため、放射線照射をすることを全く考えていなかったため、今度こそ再々発や遠隔転移の可能性をとにかくさげたいです
A.放射線照射
B.抗がん剤(初発時TC ×4なのでそれ以外?)
C.タモキシフェン服用継続
D.その他?
アドバイスよろしくお願いいたします
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
①局所再発?
初発時に全摘したものの取り残し(主治医からは針生検をした際に散らばり取り残りがあったのではと)、そこから再度1年強をかけて、しこりが5mmぐらいまで大きくなり浸潤し、皮膚上からも触れられる大きさになったということで、これは局所再発(胸壁再発)と考え、腫瘍を摘出すれば、完治を目指せると思ってよいのでしょうか
⇒その通りです。
それとも1つ局所再発したらもう遠隔転移も遅かれ早かれすると覚悟した方がよいのでしょうか
⇒それは違います。
②抗がん剤の効果とタモキシフェンの効果?
初発時に、ステージ1でしたが、やれることはやりたいと抗がん剤(TC ×4)もして、その後タモキシフェンも継続していますが、抗がん剤もタモキシフェンも残存していた癌細胞による局所再発の抑制ではなく、全身の遠隔転移再発の防止の役割だったため、局所再発は防ぐ手段が無かったということでしょうか
⇒まさにその通り。
③今後の治療
腫瘍の切除に加え、初発時に全摘だったため、放射線照射をすることを全く考えていなかったため、今度こそ再々発や遠隔転移の可能性をとにかくさげたいです
A.放射線照射
B.抗がん剤(初発時TC ×4なのでそれ以外?)
C.タモキシフェン服用継続
D.その他?
⇒C±A
重要なことは「放射線をするかしないか?」ではなく、「可能な限りのマージンを付けた切除」です。
つまり「小さいから」と油断して局所麻酔で「ちょっと」大き目切除ではなく、全身麻酔で、裏側の大胸筋もきちんと切除すること。(これに比べれば、放射線するしないなど大したことではありません)
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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2024/4/10
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