Site Overlay

今週のコラム 491回目 遠隔転移を伴う乳癌、その治療戦略とpriority ver.2 内臓編(肝)

あいにくの雨…

この時期、雨降るとそれはそれは(いきなり)寒い!

(ちなみに、後日ここにほうれん草+ソーキの画像が入ります)

 

○ 本文

遠隔転移を伴うから「手術はしないよ」

これでは、あまりにも前時代的!

未だに、そのように言われて「そうなのか。」と納得してしまい、それによりturning pointを逃している方が多い!

それは「薬物療法の進化」に「ガイドラインが追いつけていない」ことが元凶と言えます。

私自身が肌で感じている変遷

1.薬物療法で(そもそも)cCR得るのが困難な時代

この時代では、(そもそも論として)せっかく副作用に苦しませて抗癌剤をやったとしても「病変が縮小する程度」であり、(そしてその抗癌剤を終了すると)また大きくなってくる

⇒抗癌剤を使って「苦しい思いをさせても」全く意味を見いだせないので、楽な治療(ホルモン療法)からはじめて、いくらかでも長持ちさせよう。それが目標

 

2.bevacizumabなどによりCRが得られる時代 但し(止めれば))結局いずれは病変が再燃する時代

私もある時期、bevacizumabの衝撃的な効果に触れ「これなら(遠隔転移も)治せるのでは?」と積極的に使い(今までには狙えなかった)cCRを数多く経験し「時代は変わった!」と意気揚々の頃がありました。

10年以上前、江戸川病院に赴任前の頃です。

但し、(何度も言うようですが)抗癌剤を永遠に使い続けることはできません。

それは耐性(抗癌剤が効かなくなる)や「社会的、体力的、精神的(モチベーション)」など様々な要因があります。

そうすると(つまりホルモン療法単剤とすると)、1の時代ほどではないにせよ(ゆっくり)病状再燃となっていきました。

ここまでは、「せっかく抗癌剤を頑張ってもらっても一時的なものでは、本当に意味があるのだろうか? (ガイドラインでいうように)ホルモン療法だけやってても(結局は)変わりないのか?」という時代です。

 

3.chemotherapy⇒cCRがCDK4/6 inhibitorで長期維持できる時代

ここではluminal typeに絞りますが(HER2陽性の場合にはtrastuzumab-deruxtecane及びphesgoに同様の役割が期待できます)

上記2の時代と明確に異なるのが、(抗癌剤によりcCRとなってからの)「その維持期間」です。

CDK4/6 inhibitorが登場して使用開始してから7年余り、まだまだ底が見えません。

(2の時代のように)ホルモン療法へ変更したとたんに病状進行とは異なり、病変の消失した状態が10年なのか、はたまた(10年を超えて、その先)根治への入り口なのか?

まだまだ未知なのです。

(未知とはいえ)現実に2の時代までには想像もできなかった遠隔転移があったのに病変が消失して(大した副作用もなく)何年も通院している。

そんな多くの人が(10年以上が経ったとき)『そろそろ、止めてみましょうか?』

そして、それは現実に手が届くところにあるのです。

 

前置きが長ーくなりましたが、私が「遠隔転移があっても」手術は行うし、(そして、それは)QOLのため(だけ)ではなく、根治を目指す一環なのです。

いよいよ、本日のテーマ

その治療戦略とpriority ver.2 内臓編(肝)

今回は肝転移です。

 

1.転移が小さい場合

前医で初診時にレベルⅢ(鎖骨下リンパ節)まで転移のある乳癌と診断

CTにて肝転移

薬物療法主体の治療となると言われ、当院へセカンドオピニオン

 

♯ 「薬物療法主体」と言っても「手術はしない」と言われて、その方針に納得できずに「手術してほしい」というのが実際のところでした。

以下に掲示するように、肝転移は2か所とも小さな病変。

このような場合には「最初に抗癌剤でコントロールしてから」手術という必要はありません。

抗癌剤は必ず効くとは限らないので、確実に手術してから(それから)薬物療法で十分なのです。

♯もしも効かなかったら…みたいな無用なファクターに悩まされないことも時に必要となります。

 

そして(手術までの期間にタイミング的に1度だけ抗癌剤を施行後)

手術 乳房全摘+腋窩鎖骨下郭清

「遠隔転移があるからリンパ節は取らない」ではなく、その後の長期コントロール~根治を狙うのだから、(中途半端にする必要はなく)全てをパーフェクトにすべき

術後は翌週から抗癌剤を開始

♯手術すると抗がん剤まで数週間空けなくてはいけないなどというのは大きな間違いであり、「精巧な手術」であれば翌日開始でも何ら問題ないのです。

♯翌週としたのは「緊急性がない(肝病変は小さい)」「抗癌剤は(当院では)外来で行っているので日程的に」そうなっただけです。

 

肝転移は、その後の半年の抗癌剤後のCTでcCR

となり、(その後半年での)CTでもcCR継続中です。

 

このように、肝転移も小さい場合には手術先行として確実に効果のある治療から着実なステップとします。

 

それに対して肝転移でも「まずはコントロールしてから」というのは

2.転移がある程度大きく、多発している場合

 

多発性肝転移

 

 

 

 

別のスライス

 

 

 

 別角度から

 

このような場合には、とにかく肝転移のコントロールが先決となります。

 

抗癌剤によりcCR

 

 

 

こうなると、安心して手術ができるのです。

因みに、その後CDK4/6 inhibitor+hormoneに変更してcCR持続が(もうじき)5年を超えます!