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今週のコラム 479回目 20年先を見据えた手術

青い海

あぁ、今朝みたいに寒いと

南国って、いいなって思いだします。

 

 

 

 

万座ビーチホテル

思い起こせば、30年も前!

研修医の頃、初めて夏に訪れた沖縄。

 

最初に滞在したホテルが、この万座ビーチホテルでした。(何処かのコラムにも書いたかな?)

リゾートホテルとは何ぞや?を知らなかった私(今も知っているわけではあーりませんが)にとって、その「屋上まで続く吹き抜け」や、すぐフロントに鎮座する「プール」とそのすぐ先にある「プライベートビーチ」

全てが、度肝を抜かれた感動でした。

あれから30余年(綾小路きみまろ風に…)何度か滞在したお気に入りのホテルでしたが、寄る年波には勝てず(ホテルも私もどうようですが…)

 

心機一転、次なる感動を与えてくれるホテルはどれだろうか?

「星のや」もあるし、「リッツカールトン」なんかもいいのかも?

 

○本文

手術

皆さん、この言葉にどんな印象を持つでしょうか?

無論(あれっ?よく使うのかな。)人によって様々なことでしょう。

ただ手術する側(外科医)と手術される側(患者さん)では、やはり捉え方が変わってくるとは思います。

 

子供の頃のドラマなどで手術が終わって外科医が家族に『手術は成功です。』などと普通に見ていましたが、

外科医になって最初に先輩から言われたのが、

『手術は成功でした』って、なんだよ。

そんなの、当たり前。(っていうか、)『手術は失敗でした』なんて家族に言えるわけないだろ。

(実際には意図したようにはいかなくても)何とか取り繕って『完成度はどうあれ、現時点で直ぐには破綻の無い状態ですよ=手術は予定通りでした』

つまり厳密な意味で最善=成功とは言えなくても「失敗」などとは決して言ってはいけない(医療訴訟のリスクを考え)

ちょっと、解りにくいかもしれませんが…

(例として適切ではないかもしれませんが)

例えば自動車事故で「自分が悪い」と言ってはいけない(これ合ってますか?)ような事。

どんな結果になるにしろ、こちらに落ち度はありませんよ=手術は予定通り

これが現実なのです。(医師も無論、職業だからリスクを負わないために)

 

前置きが長くなりましたが…

まず外科医として手術手技を覚え独り立ちをして行う手術は、「とりあえず、現時点では破綻はなく手術は(予定通り)終了しました」の体のわけです。

乳癌の手術で言えば…

「予定通り乳腺は部分切除してセンチネルリンパ節生検もしましたよ」でいいわけです。

ただ内情は、「今後数年で乳房内再発させるリスクを最小限にした手術なのか?」となると、そうではなく(極端に言えば)術後1年程度再発しなければ(手術自体を)非難されるわけではないので、それでOK

そういう手術なのです。

 

これが消化管吻合を伴う手術(例えば胃切除を例に挙げると)だと…

術後に「縫合不全」が起これば、それは入院中に起こる合併症であり断端に局所再発が起これば、(それによる通過障害による)イレウスが起きたりする。

 

それに対し、乳癌の手術は「実際には適当な手術」であっても、数年間はそれがばれない(かなり大胆な言い方ですが)とも言えます。

♯ただ重要なことは「直ぐにばれる」消化器の癌であれ、「直ぐにはばれない」乳癌であれ癌が対象であるからには遅かれ早かれ致命傷になりうるということ。

これを決して忘れてはいけません。

適当な手術をされて後悔するのは数日ではなく「数年後」なのです。

 

○乳房内再発

 

20年前に乳房温存術を行い、その付近に「しこりを自覚」して受診

 

 

 

 

解説すると…

乳管の断端(20年前の手術で切断)に腫瘍が存在しています。 MMTE:cancer

 

 

 

乳腺の全体像で示すと、こうなります。

 

 

 

 

つまり、このように

初回手術時に、その乳管を残していたために、

その(断端)部分に癌が残存していたわけです。

 

 

 

この断端の癌細胞が「20年」かけて可視化し、

そして増殖

 

 

 

そして「現在」に至る。

 

 

 

◎20年前の中途半端な手術

「20年間もった」から、(あなたなら)良しとしますか?

自動車なら20年で十分(流石に、買い替えますよね?)ですが、人の身体なのです。

買い替えることは決してできません。(999の哲郎でないのだから)

特に乳癌は好発年齢が40代~50代。

20年程度では不十分なのです。

 

乳房温存手術は、きちんと「乳頭直下まで」乳管を追いかける手術をするかどうか?が真に「将来を見据えた手術なのか?」となります。

 

このような手術ではなく

断端に癌細胞が残存するリスクが高い

♯癌細胞「数個」のレベルでは術中迅速病理診断で捉えられない可能性も十分にある

 

 

 

乳管を乳頭直下まで「きちんと」追いかけた手術

腫瘍周辺は2cm marginでも、それより先は殆どvolume loss とはならないので「整容性」に両者の違いはないのです。

 

 

◎一見普通に見える乳腺部分切除ですが、このように術者によって考え方は異なります。

「当座、非難されない程度でいいよ。」ではなく、手術(特に癌が相手なのだから)は先々を見据えた手術でなくてはならないのです。

 

次回も「先を見え得た手術」についてを予定してます。