Site Overlay

今週のコラム 309回目 ドレーン1

皆さん、こんにちは。

昨日は台風一過、気持ちいい天気!(書いている今、日曜日もね!)

楽しみにしていたCLUB HARIEのバウムクーヘンで夕方の一時

DSC_0085

 

左が「CLUB HARIE 」 LOUIS VUITTON柄?がおしゃれ

右が「治一郎」 直前に思いがけずいただいたので『せっかく?だから、食べ比べてみようかな』と、なりました。

 

DSC_0087

 

箱を開けたところ

どっちも旨そう!

 

 

DSC_0092

 

左が「治一郎」、右が「CLUB HARIE」です。

CLUB HARIEの迫力が大きいので(対抗して?)治一郎は2切れです。

本日のワインは南アフリカの白『Stellenrust The Mothership Chenin Blanc』注1)です。

勿論、こんないい天気には屋上でなくては勿体ない。

 

DSC_0092

 

昨日から読み始めた「まち」

一昨日まで読んでいた(本屋大賞2位の)「ひと」の続編と思いきや、そうではない。

でも「両親亡くなり、若くして自立していく主人公」像は共通です。

「まち」の主人公は「引っ越し屋のアルバイト」(と言っても学生バイトではなく、本気?バイトですが)大学時代の「アー〇引越センターでのバイト」を想いだし、とても共感!

何が一番大変かっていうと、一番は洗濯機かな?重いんだよね。ただ冷蔵庫は「高さ」があるから搬入時に「上をぶつけないように気を遣う」とか、階段は大変だったなぁ。なんてね。

お客さんからの「冷たいコーヒー(微糖ではなく)Mコーヒーばりの甘いやつ」の差し入れが疲れた身体に染み渡ったなぁ。

 

DSC_0089

 

 

注1)Stellenrust The Mothership Chenin Blanc

ソムリエ麦ちゃんの「一押し」

南アフリカの白はやっぱり、Chenin Blanc。鉄板です。

 

 

本編

〇 ドレーン

そもそも「何のために入れるのか?」

外科研修医時代、その重要性を叩きこまれます。

やはりドレーンと言えば「消化器外科」です。

 

それは何故?

 

 

 

食物は、口から入って食道⇒胃⇒小腸⇒大腸⇒肛門(から体外へ)と流れていきますが、

これは「消化管」という「閉じられた腔」です。

 

 

 

「お腹いっぱい」と言う表現があるけど、

実際は(お腹の中で)消化管の外へ出ることは無いんだね?

 

 

 

その通り。

口からは食べ物と一緒に雑菌が入るし、腸内常在細菌もあるので(消化器外科領域では)「消化管内は不潔領域」と評されます。

消化管穿孔(何らかの理由で胃とか腸に孔が開くこと)があると、それらの細菌が(本来「清潔に保たれている」)お腹の中にばらまかれてしまい、それを「(汎発性)腹膜炎」といいます。

★胃潰瘍で「胃に孔」が空いたり、大腸憩室炎や強度の便秘で「大腸穿孔」が起こったりします。特に「後者」は腸内細菌の多い糞便がばらまかれてしまうので「重篤」となります。

この場合には一時的に「人工肛門」を作り体外へ出すことも多い

 

 

漏れたら大変だね。

だから「消化器外科の手術」ではドレーンを入れるんだね。

 

 

そう、その通りなんだ。

例えば胃癌で胃の一部を切除し、「残った」胃(残胃と表現されます)と腸(この場合十二指腸)を吻合するケースを示すね。

 

 

残胃と腸を縫合(腸の径に合わせるために胃壁は一部「縫合」して、同じ径にして繋ぎ合わせている)

 

 

 

術後にこの胃壁の「縫合部」と胃と腸の「吻合部」が上手くくっつかずに「消化管内容物が漏れてしまう」ことを(術後)「縫合不全」といいます。

そうなると、漏れた消化管内容物がそこで増殖し「術後腹膜炎」という重篤な(術後)合併症の原因となるのです。

そこで、予め

 

 

 

このように「漏れた場合に備えて」ドレーンを縫合部近傍に入れておくのです。

もしも縫合不全がおきて「ここに感染⇒膿瘍」が形成されても、ドレーンを通って体外へ排出される(これを「ドレナージ」といいます)のです。

 

 

 

勿論、消化器外科だけではなく、外傷でもドレーンが必要になることがあります。

私自身の苦い記憶として…

田舎地方都市で外科研修医として「田んぼの草刈り鎌で下腿部(脛の辺り)の外傷」を治療したときのことです。

傷口は泥で汚れてましたが、とりあえず「洗い」『よし!綺麗になった。キレイに縫合しよう』

これが誤りだったのです。

翌日、消毒に来院してもらった際には「脛は真っ赤に腫れあがり…」

そう、そうなのです。

汚い傷、しかも(血流が悪い)脛 注1) 中で感染⇒膿瘍形成⇒(キッチリ縫合されていたため)創外へドレナージされずに「閉じ込められた細菌がどんどん繁殖」したのです!

注1) 脛の部分は血流が悪く「創傷治癒が悪い」部位となります。 これが「腕」とか「顔」であれば「血流がいい=創傷治癒がいい」ので、ドレーンを入れる必要はありません。(特に顔にドレーンは不要)

 

そう、その苦い失敗から学び、外傷の治療 注2)では神経質なくらいドレーンをいれていました。

注2)若い外科医は、「夜間や休日の当直」が多いので、外傷を治療する機会が多いのです。

 

 

なるほど!

ドレーンは「汚いものを体外へ排出する(ドレナージ)」ためにあるんだね?

と、いうことは(ようやく本題に入りますが)乳癌の手術でも感染しないためにドレーンを入れるの?

 

 

それは違うよ。

乳腺は「清潔で血流がいい」ので感染を気にする必要はありません。注3)

注3)傷がある以上、創感染は皆無ではありませんが、(そもそも清潔で血流がいいので)大事には至りません。

 

 

じゃー、何故みんなドレーンを入れるの?

 

 

 

血液やリンパ液を外へ出すためだよ。

それらが皮下に溜まっている状態は創傷治癒に著しい障害となるからね。

 

 

 

何故、乳癌の手術では「血液やリンパ液」が(ドレーンを入れないと)溜っちゃうの?

他の手術と何か違いがあるの?

 

 

 

そうだね。

まず乳腺は「血流がよい=(感染には強いが)出血のリスクが高い」

更に「(全摘であれば)剥離範囲が広い=それだけ沢山の血管を損傷」

腋窩郭清では(腋窩には腕からのリンパ管が網の目のようになっているので)「リンパ管損傷=リンパ液が漏れる」

これらは、他の手術にはない特徴と言える。

 

 

なるほど!

だから乳がんの手術=ドレーンとなるんだね?

だけど「出血もリンパ管損傷もどうにかならない」ものなの?

 

 

実際には「どうにかなる」んだ。

きちんと出血しないように手術してリンパ管もきっちり縛れば大丈夫!

歴史的に「ドレーンを入れるのが当たり前」となった背景としては、

そもそも昔(と、いっても「たかだか20年前」ですが)は乳癌患者さん自体少なくて、一人の外科医が乳癌の手術をする件数が極端に少なかった。

なので、手技を習得する機会に恵まれなかったことは間違いない。

例えば、私は年間300件以上(乳腺だけを)執刀しているので(江戸川に来て7年以上 この期間だけでも2000件以上)さすがに「こうすれば、もっといいかな?」的な工夫を重ねている。

それに対して(20年前は)一般外科医が年に(多くて)50件程度しか執刀していなかった。

 

 

週に1件では…

「同じことの繰り返し」かな?

 

★次回は「ドレーン2」の予定です。(あくまでも「予定」です)