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今週のコラム 308回目 化学療法閉経についてお話ししましょう。

秋の味覚

 

「サンマ」スーパーに出てきました(まだ、ちょっと「小振り」かな?)

昨日も食べましたが、絶妙な旨さ。

 

「味覚」と言えば、この数年で劇的な変化が…

野菜が好きになったり、肉も赤身しか食べられなくなった(昔はサーロインとかロースだったのに、今では「ヒレ一択」)

こうして体脂肪も落ちていくのだろうか?

 

〇 序文

コラムの「題材」の選定については、

1.診療をしていてpassionを感じたもの

例えば…

「レベルⅢに転移があるから手術先行ではなく、術前化学療法します」みたいに(前医で)言われた。

肉芽腫性乳腺炎で(前医で)「抗生剤」投与したり切開したりして、一向によくならないと受診。

明らかに癌を疑う超音波所見なのに「小さいから、様子見ましょう」みたいな診療

あー、挙げているだけでイライラする!

2.QandAで「やたらと」同じような質問が来た場合

例えば…

妊娠中に、脇が腫れぼったい痛む。これって乳癌?

⇒それは1000% ただの「副乳」です。

妊娠中に増加する女性ホルモンの刺激で(もともとある)正常副乳が腫大したり痛くなったりするのです。

閉経前のホルモン療法とか、

3.外来診療で、患者さんの問い合わせが多い(重なった)

抗癌剤をしているのですが、「不正出血が出た。とても心配です。外来受診必要ですか?」

 

 

前置きが長くなりましたが…

最近、このような問い合わせの電話が外来にかかってきて「立て続けに」外来看護師から回答を求められたのです。

 

 

どう回答したの?

 

 

 

 

勿論、「全く」心配ないと回答したよ。

それでは、化学療法閉経についてお話ししましょう。

 

 

〇 化学療法閉経

 

まず、抗がん剤は卵巣毒性がある。

この事実を確認してください。

 

 

 

なるほど!

抗癌剤は血流にのって全身をめぐるので、色々な臓器に影響(毒性)があるけど、

その中に「卵巣」もあるわけだね?

 

 

その通り。

乳癌の補助療法で用いられているanthracyclin taxaneどちらも卵巣毒性があります。

具体的にいうと、TC(docetaxel / cyclophosphamide)では2回目あたりで殆どの方で(化学療法)閉経となります。注1)

注1) 卵巣(機能の)強さは、「年齢」が強く影響し(30歳代など)若年者は3回目あたりまで閉経しなかったり、逆に(50歳代など)もともと自然閉経に近い方は1回目で閉経するなど差が出ます。

★ ただ(私の経験上)どんなに若くても(20歳代でも)TC4回終了して化学療法閉経にならなかった患者さんは皆無です。

 

anthracyclineは(TCに比べると)卵巣毒性の程度は「やや弱い」印象です。

それでも、(EC4回で化学療法閉経にならなかったとしても)続いて行うtaxane(多くはdocetaxelとなりますが)で皆さん化学療法閉経となります。

 

 

それが不正出血の原因なんだね?

 

 

 

 

無論、オムロンだよ。注2)

注2)かつて「一世を風靡」した駄洒落。

真面目なCMだからこそ、そのギャップに当時の小学生は痺れた…

冗談はさておき…

卵巣が機能を失う(閉経となる)前には、「一時的に」ホルモンの分泌が刺激されて(そのために)その刺激で子宮から内膜が剥がれて「不正出血となる」のです。

★閉経前に不正出血が起こる現象については(化学療法閉経だけではなく)LH-RHagonist投与による月経でも同様のことが起こります。

 

 

あくまでも「一時的な不正出血」なんだね?

 

 

 

そう、「一時的」です。

だから、婦人科を受診したり乳腺外科を受診したりするのはナンセンス!

乳腺外科の看護師ならば、(私に回答を求めるまでもなく)患者さんへ「即答」してもらいたいものです。

 

〇 化学療法閉経とホルモン療法

『 Q&A 2021年09月24日5 ホルモン治療などについて』が、ちょうどタイムリーに届いたので、「化学療法閉経とホルモン療法」についても追加します。

 

 

化学療法閉経は本物の閉経ではありません。

(化学療法していない人で言えば)「(急激に起こった)更年期の状態」と捉えてください。

つまり、ホルモン療法はあくまでも「閉経前」のものを用います。

★ 化学療法閉経から回復する(若年者に多い)人も居れば、化学療法閉経のまま「完全な閉経」に移行する人(50歳以上が多い)もいます。

少なくとも1年半以上は「閉経前」ホルモン療法を行い 注2)、(その時点で月経が無かった場合には)その後にE2など測定して(それでも閉経値であれば)ようやく「閉経後」ホルモン療法へのスイッチを考えましょう。

注2)ここが大事。テストに出ます。

 

具体的には…

化学療法閉経では tamoxifenとなります。

最初からLH-RHagonistを併用してもいいし、(とりあえず卵巣は抑えられているのだから)まずは併用せずにtamoxifen単剤として、(もしも月経が再開したら)それからLH-RHagonistの併用開始としても構いません。

 

実際は、どうしてるの?

 

 

 

通常(LH-RHagonistの最初からの併用を)特に勧めていません。

「tamoxifen処方するので、(もしも)月経の兆しがあったら連絡ください(その際に併用開始します)」とお話しすることが多いですね。

 

★勿論、「心配だから最初から、併用したい」という患者さんの場合には(希望に沿って)最初から併用してます。