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今週のコラム 262回目 センチネルリンパ節生検

皆さん、こんにちは。

どんどん早起きになって(老人かい!) 今気になっているFMは吉田照美の Please テルミー !「マニアックさん。いらっしゃーい!」です。

世に(多くは)知られていない、その道のマニアックさんが登場。

今日は、「植物」でしたがここ最近は「食べ物系」が多く、先週は「パン」でした。

その中で気になったのは神楽坂の「亀井堂のクリームパン」、吉田照美お気に入りは「東京マリオットホテル「GGCo.」のカレーパン」

あー、書いていても腹減ってきます。

 

〇 本編

先週は腋窩の「解剖」について解説しました。

乳腺から出たリンパ管は、遠い旅(大航海)に出ます。

大胸筋の「外縁」を回り込み、その「裏側」に入り(この大胸筋の裏側を「腋窩(腔)」といいます)、大胸筋の裏側を内側へ向かい、小胸筋の裏(レベル2)を通り、(小胸筋を)抜けて(ここがレベル3)、鎖骨下を通りその上へ(ここが鎖骨上)更に頸部へ向かうのです。

この大胸筋の裏へ回り込んだ最初の港(リンパ節は航海でいうところの「停留港」と呼ぶにふさわしい)を「センチネルリンパ節」と呼ぶのです。

 

・ センチネルリンパ節

QAや、実際の診察の場でも時々患者さんから「センチネンタルリンパ節」という表現が出ます。

何とも懐かしや!  伊予は未だ16だからー♪ センチネンタル?ジャーニー♪(きっと、皆さん歌ったのでしょう。私もその一人です)

意味は「見張り」リンパ節です。

リンパ節はリンパ管を流れてくる外敵(癌細胞もそのひとつ)を「トラップする場」と考えると解りやすいでしょう。

 

前回出した図

癌からのリンパ管が大胸筋の外縁を「裏」へ回り込んでいます。

 

 

 

 

 

・ センチネルリンパ節の部位

 

・ 実際のリンパ網

 

これは実際の「人体」のリンパ管が「網の目」のようになっている図譜です。

センチネルリンパ節(SN)に到達したリンパ管は「網の目」のようなルートで血管(腋窩静脈)に沿って内側へ流れていきます。

 

 

 

・ センチネルリンパ節生検 実際の手技

1.外観

 

2.透視図

 

 

このようになっていますが、(当然ながら)表面からは見えません。

手術手技としては「色素」を術中に乳輪部分に皮下注してリンパ管を染める 注)のですが、皮膚の上からでは、その色素を視認することはできません。

注 )色素法といいます。

かつては「RI法」を併用して「同定率(SNを探し出す%)」を調べていた時期もありましたが、(手技的に稚拙だった)昔と違い、色素法で100%同定できるので、RI法は「無用の長物」と化しています。

 

3.腋窩の拡大

この部分を拡大します。

 

 

 

 

 

4.腋窩小切開

 

まずは、この位置に皮切です。

 

 

 

 

この時点では実際は、これらのリンパ管などは『見えていません』が、位置的にSNよりも下(腫瘍に近い方)で切開するようにします。

 

 

 

 

 

5.(切開した)皮膚を広げると、皮下脂肪が出てくる。

 

皮膚を筋鈎で広げると、(皮下にある)皮下脂肪が見える。

痩せた人だと(皮下脂肪が殆どないので)この時点で(青く染色された)リンパ管が見えて透見できますが 注 )、通常はまだリンパ管は見えません。

注 )痩せていることは手術される際に、とても有利に働きます(脂肪に邪魔されずに構造物が良く見えるため)が、これもその一つです。

 

 

6.この皮下脂肪を掻き分けると、遂に(青く染色された)リンパ管が見えてくる。

 

 

皮下脂肪でマスクされていた(見えなかった)リンパ管が脂肪を掻き分ける(どける)ことで見えてきます。

 

 

 

(術中撮影した実際) 皮下脂肪の奥に(青く染色された)リンパ管が透見

 

 

青く染色されたリンパ管が(黄色い脂肪の)奥に「うっすら」透見できます。

これを見つけるのが(センチネルリンパ節生検という主義の)「第1歩」となります。

 

 

7.このリンパ管を上へ追いかけて「センチネルリンパ節生検」を行う

ここでリンパ管を捕まえて、(創を上に引っ張り)そのリンパ管に連続したリンパ節(センチネルリンパ節:これも青く染色されています)を取り出し 注  1 )、術中迅速診断します。

 

 

 

(先ほど、うっすらと認識された)リンパ管をペアンで把持

 

 

 

把持したリンパ管を奥へ向かって追いかける

 

 

 

 

リンパ管を上へ追いかけると、最初に到達するリンパ節(SN)に到達する。

 

 

 

 

上記の状況をイラストにしたもの

リンパ管を追いかけてSNに到達したところ

このリンパ節を更に(上へ)追いかけると腋窩リンパ節(レベル1)となる。

 

 

 

 

 

色素は(最初に到達したSNを超えて)更に腋窩リンパ節(レベル1)へ到達する 注 2 )

 

 

 

 

注 1 ) センチネルリンパ節生検という言葉からの連想なのか、

患者さんの中には、「取り出さずに」検査すると勘違いしている方がいらっしゃいますが、「取り出さなければ顕微鏡で検査はできない」のですよ。

 

 

 

センチネルリンパ節生検について解説しました。

次回は、QAでも時々出てくる「失敗例」について解説します。(上記 注 2 )が重要となります)