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今週のコラム 259回目 「押入れモデルの図解」 腋窩鎖骨下郭清(レベル3郭清)を理解するために

 

皆さん、こんにちは。

未明に走っている時には小雨混じりもありましたが、今は晴れてきました。

このテンションのまま、『乳癌手術のブログ 2020/10/5  腋窩と(押入れの中の)衣装ケース』の図解を試みます。

どうか、皆さんのイメージが鮮明になりますように。

 

(以下、 上記ブログからの要旨)

皆さん、家に居るとします。

押入れありますね?

その下の段に衣装ケースが入っているとします。

この衣装ケースは中のものを取る際に「衣装ケースそのもの」を引っ張り出すことができず、(衣装ケースの)「手前の蓋」を空けて腕を中に伸ばして洋服を取り出すとします。

さぁ、イメージできましたか?

衣装ケースの上蓋が小胸筋、衣装ケースの中の洋服が「レベル2リンパ節」となります。

衣装ケースより更に「奥」に押し込まれている洋服が「レベル3リンパ節」です。

 

『レベルⅡ郭清が標準だから、レベルⅢ郭清はしない』などと言っている乳腺外科医は、ほぼこのイメージで(偽)レベルⅡ郭清を行っています。

この衣装ケースには「手前の蓋(小胸筋でいう外側)」と「奥の蓋(小胸筋でいう内側)」があるのですが、押入れに入らない限り、「奥の蓋」を見ることは不可能です。

つまり、押入れの手前に立って、衣装ケースの手前の蓋を開けて中の洋服を手を伸ばして引っ張りだしているのです。

★衣装ケースの奥に洋服が残っているかもしれないけど、「手が届かない範囲は(まぁ)いいか(つまり、レベル2の奥は残っている可能性がある)」となっているのです。

 

これに対し、押入れの中に入り、衣装ケースの奥の蓋を開けて内側からも(衣装ケースの中を)覗き込み、更に、衣装ケースよりも更に奥(押入れの奥)にあるかもしれない洋服(これがレベル3)を取るのが(本物の)レベルⅡ郭清及びレベルⅢ郭清となるのです。

衣装ケースと押入れの天板(大胸筋)の間を剥がして、天板を持ち上げながら、衣装ケースの上蓋(小胸筋)を押入れから手前にスライドすることにより、衣装ケースの「奥の蓋」を開けることができ、(衣装ケースの更に奥にある洋服(レベルⅢリンパ節)も取ることができます。

★この際に天板を(持ち上げるのではなく)衣装ケースの奥の蓋の部分で(パカッと)2つに割って、真上からこの操作をすると(押し込んで)腕を伸ばすよりも確実に奥の洋服を丁寧に取り出すこともできます

 

押入れの天板=大胸筋

この中に衣装ケースがあり、その上蓋が小胸筋です。

この衣装ケースには水道管(腋窩静脈)が走っています。

 

「リンパ節の配置」

この水道管沿いに洋服(リンパ節)が配置されます。

衣装ケースの手前には「レベルⅠ」(Ⅰの最も手前をセンチネルリンパ節SNと呼びます)

衣装ケースの中の洋服が「レベルⅡ」 この衣装ケースの更に奥に「レベルⅢ」があります。

 

「衣装ケースの蓋」

手前の蓋(前蓋)と奥の蓋(奥蓋)があります。

実際には小胸筋の手前の膜と奥の膜のこと

この蓋を開けない限り衣装ケースの中の洋服(Ⅱ)は取れません。

 

「手前の蓋を開ける」

これだけでは、衣装ケースの中の洋服(Ⅱ)は「良く見えない」ので

洋服を無造作に引っ張り出すと、(洋服にくっついている)水道管を破る危険があります。

 

「押入れの天板を持ち上げる」

 

 

 

「更に、衣装ケースの上蓋も持ち上げる」

通常の(なんちゃって)「レベルⅡ郭清」は、これら2つの蓋を持ち上げて「見える範囲で」衣装ケースの中の洋服(Ⅱ)を(水道管から)剥がして取り出しています。

★ 見える範囲なので、実際には衣装ケースに洋服が残る(レベルⅡの取り残し)が起こりえます。

 

「本物のⅡ、Ⅲ郭清するために」

衣装ケースの上蓋を持ち上げるだけでは、蓋の奥が死角となるので、

衣装ケースの上蓋を外して(この操作がやや危険を伴う)これを手前引っ張りだします。そうすると、衣装ケースの奥の蓋が見えてきます。

 

「衣装ケースの奥の蓋を外す」

押入れの天板は邪魔ですが、「押入れの天板と衣装ケースの上蓋の間から」衣装ケースの奥の洋服(Ⅲ)も見えます。

通常のレベルⅢ郭清は「この視野」で行います。

 

「押入れの天板を割り、衣装ケースの奥を真上から直視する」

実際の天板は筋肉(大胸筋)なので、(壊すことなく)このように引っ張ることが出来ます。(後で縫合閉鎖します)

こうすると衣装ケースの奥の洋服(Ⅲ)が真上から直視できるので、水道管に強固に癒着した悪い洋服(転移性リンパ節)でも、「良好な視野で丁寧に」外せることがわかりますね?

★私は、術前エコーで、転移が明らかな場合には、この視野で行っています。