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今週のコラム 227回目 乳癌治療の実際 「全身治療(薬物療法)」vol. 1 術後補助療法

こんにちは。田澤です。

3.11 今年も近づいてきました。

仙台出身(生まれは新潟だけど)の私にとっては、いろいろな思いがよぎります。

当時、仙台のど真ん中の病院勤務で(ちょうど)手術中でした。「とんでもないことが起こってしまった!」

直後は外の世界が(全て崩れてしまったのでは?)と、怖くて外を見れなかった記憶があります。(後に、建物の被害は意外に少なかったことを知りましたが)

極端なガソリン不足で(天然ガスで唯一街を走っていた)タクシーを捕まえて通勤したりしました。

あの日、海岸沿いを想像を絶する津波が襲っていたことを(あとで)知り、その後仙台港近くでは町の中に(ごく普通に)自動車がひっくり返ってごろごろ転がっている風景。

今でも強烈な印象を持って思い出されます。

あの日に人生を終えた多くの人達や、家族を失った人たち。

決して忘れてはいけない記憶です。

 

本編

今週のコラム222回目から始まった、「乳癌診断の実際」「乳癌治療の実際」(乳癌の「実際」シリーズ)も、今回から始まる「全身治療(薬物療法)が最終となります。

全身治療(薬物療法)はvol.1 術後補助療法 vol.2 転移再発治療 の2部構成となります。

 

全身治療(薬物療法) 総論

○術後補助療法(再発予防)なのか、再発治療なのか。

薬物療法を語る上で、上記の区別はとても大事です。

☆薬剤にとって、再発治療として適応承認されるのは容易だが、「術後補助療法として適応承認されるには、さらなる壁がある」のです。

「乳癌で使用される薬剤(全体)」

 

表の右の薬剤は「術前術後でも適応有」薬剤であり、

術後補助療法(再発予防)の場合には、ここからの選択となります。

 

 

 

 

全身治療(薬物療法)vol. 1 術後補助療法

「術後補助療法(再発予防)で使える薬剤」

 

ホルモン療法(閉経前と閉経後に分けられる)

化学療法(anthracycline とtaxaneのみです)

 

分子標的薬(trastuzumabとpertuzumabのみです)

 

 

薬物療法を考えるうえで重要なポイントは

1.適応のある薬剤(上記)

2.サブタイプはどうなのか?

薬物療法は「subtype(サブタイプ)注 1 )」によって決まるという理解が重要です。

注 1 )subtype(サブタイプ)とは、腫瘍の性格のことです。

 

○サブタイプについて

具体的にはER, PgR, HER2で免疫染色を行い、まず以下に分けます。

1.ルミナールタイプ(ER陽性)

2.HER2タイプ(ER陰性かつHER2陽性)

3.tripple negative(TN)

 

ルミナールタイプは更に「細分化」されます。

まずHER2も陽性だと ルミナールB(HER2陽性):俗に言うtripple positive

HER2陰性のものは(更に)Ki67の免疫染色により

Ki67低値:ルミナールA

Ki67高値:ルミナールB

☆Ki67が中間値(20~40)の場合にはOncotypeDXで(AなのかBなのか)決定します。

結果として以下の5通りに分けられます。

1-1.ルミナールA

1-2.ルミナールB(HER2陰性)

1-3.ルミナールB(HER2陽性)

2.  HER2タイプ

3.  TN

 

まずは、あなたのサブタイプが上記(5通りのうちの)どれなのか?

それが大事です。 (by 大事マンブラザーズバンド)

 

 

 

 

○術後補助療法(の実際)

1-1.ルミナールA         ⇒ホルモン療法(閉経前、更年期:tamoxifen,   閉経後aromatase inhibitor)

1-2.ルミナールB(HER2陰性) ⇒抗がん剤(TC 注 2 ))+ホルモン療法(上記)

1-3.ルミナールB(HER2陽性) ⇒抗HER2療法 3 )+ホルモン療法(上記)

2.  HER2タイプ        ⇒抗HER2療法

3.  TN             ⇒抗がん剤(anthracycline+taxane 注 4 )

 

TC 注 2

 ⇒T(docetaxel)+C(cyclophosphamide) を4回投与(非anthracycline regimen)

 

抗HER2療法 注 3 )

 ⇒ trastuzumab(ハーセプチン:分子標的薬)+抗癌剤

trastuzumabは1年間投与、それに抗がん剤を組み合わせる。

 

 

ECだけはtrastuzumabとは同時併用していないことに注意してください。

E(anthracycline)もtrastuzumabどちらも心毒性があるため

♯ Eによる心毒性は不可逆性(生涯投与量が決まっている)

trastuzumabによる心毒性は可逆性(何回でも使用可)

 

 

 

これにpertuzumabも併用できるって聞いたけど、それはどんな時?

 

 

⇒ まずは、pertuzumabが術後補助療法として承認されたAPHINITY試験を示します。

 

 

 

 

APHINITYのsubgroup解析を参考にして

日本での適応が左記のようになってます。

 

 

 

 

pertuzumabについては、(日本では)若干適応があいまいなのですが…

「リンパ節転移陽性」もしくは「再発リスクが高い」症例

⇒この後者の解釈は…

「腫瘍径が大きい」「ER陰性」「グレード高」などが(一般的に)言われています。

 

anthracycline+taxane 注 4 )

⇒ 乳癌のKey drugであるanthracyclineとtaxaneを両方とも行う「最強レジメン」です。

●anthracycline系薬剤

(Epirubicine)と(Adriamycin)があります。

心毒性はEの方が抑えられているため、生涯投与量がE(900mg/m2) ,   A(500mg/m2)となっています。

♯これ以上投与すると不可逆的な心毒性を引き起こす

単独では使用されることなく、C(cyclophosphamide)やF(5Fu)と併用されるため歴史的に

FEC, FAC, EC, ACなどとして用いられます。

●taxane系薬剤

術後補助療法として用いられるのはdocetaxel(DTX)とpaclitaxel(PTX)となります。

臨床試験の結果DTXは3週に1回のregimen、PTXは毎週投与のregimen(weekly PTX:wPTXと略)として用いられます。

◎実際のanthracycline + taxane レジメン

(個人的に)最も一般的と思うのは ECx4 ⇒ DTXx4

他に ECx4⇒wPTXx12 ACx4⇒DTXx4  ACx4⇒wPTXx12, FECx4⇒DTXx4など「あらゆる」組み合わせが可能です。

 

 

治療がサブタイプによって決まることは解ったけど、例外は無いの?

 

 

 

ルミナールAでは「ホルモン療法単独」と書いたけど、いまだに『リンパ節転移があるのに抗がん剤しなくてもいいの?』という考え方が根強いと感じます。

これについては、下記に挙げたコラムをまずはお読みください

『今週のコラム 188回目 このデータを見ても、まだ「リンパ節転移があると(ルミナールAでも)化学療法が必要だと思いますか??」』

『今週のコラム 189回目 「リンパ節転移があれば抗がん剤をすべき」という古い考えが完全否定される日も近いのです。』

 

結局どういうことよ?

 

 

 

RxPONDER試験の結果でリンパ節転移1-3個ではOncotypeDXの結果の信頼性が確定します。

言い換えれば「リンパ節転移(1-3個)のルミナールAでは抗がん剤は不要(上乗せ無)」

ということだよ。

 

逆に言うと、ルミナールAでもリンパ節転移4個以上なら抗がん剤が必要なの?

 

 

 

そこが、難しいところ。

「リンパ節転移4個以上でも、ルミナールAなら抗がん剤は無意味」という証明が(現時点で)無い以上、

抗がん剤を勧めない理由がないのです。

もしもこのケース(リンパ節転移4個以上のルミナールA)で抗がん剤をする場合はanthracycline + taxaneになるかな?

♯ リンパ節転移4個以上で非anthracyclineレジメンであるTCの有効性が証明されていない限り、スタンダードはanthracycline+taxaneとなるのです。

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