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今週のコラム 206回目 私の言う「継続性」とは(「出たり出なかったり」が3か月継続」という意味ではなく)「同じような量が毎日、3か月間継続」なのです。

今週は「台風19号」の話題で持ち切りですね。

「計画運休」というワードも耳慣れた感があります。

地球温暖化が続く限り、もっと酷くなるとしたら…

まずは、レジ袋の削減から始めましょう。

 

今日は、(土曜日)市川外来が(台風のため)休診となり、その時間を利用して(いつもより)1日早く掲載しました。

 

〇乳管内病変

「乳頭分泌」を無暗に心配される方がいらっしゃいます。

それについて「あるあるQ」の41『乳頭分泌をブラックボックスに入れていませんか?』でコメントしています。

今回は「別の角度」から見てみましょう。

 

『乳管造影』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実際の乳管造影をご供覧ください。(左に解説を加えたのが右図です)

乳頭には「10個以上の乳管」が、それぞれ独立して開孔しています。

その中の「分泌のある乳管」に造影剤を入れて撮影したのが「乳管造影」です。(だから他の乳管は写りません)

乳管の中に腫瘍(欠損部のエコー像として掲載)が描出されています。(乳管造影する場合にはエコーで「腫瘍が解らない=腫瘍が小さい」ことの方が多い)

この症例は手術(乳管腺葉区域切除)を行い「乳管内乳頭腫(良性腫瘍)」と確定診断されてます。

 

重要ポイント

1.単孔性

同一乳管の中には複数の腫瘍が存在することも多い

実際、この症例でも(エコーで映っていた)main tumor他に小さな(1-2mm)腫瘍(これも乳頭腫でしたが)がありました。(病理)

2.継続性

腫瘍がある限り、分泌は継続しその量は多い。

腫瘍は自然に治癒するわけではないので、分泌は継続するし量も減りません。

3.性状

血性に拘る必要はない。

血液が混じっていることが癌を示しているわけではありません。

一般論として「癌は崩れやすい=出血しやすい」ので「単孔性+血性」の場合には癌の可能性も考慮しますが、後述するように乳腺症に伴う血性分泌の方が寧ろ頻度は高い。

 

考察

1について…

同一乳管内には腫瘍は複数できますが、別の乳管に、(たまたま)偶然にも同時期に腫瘍が存在する確率は低く、更に(たまたま同時に発生した腫瘍も)同じように分泌する確率となると、「無視できるくらい」低くなります。

⇒多孔性分泌は「乳管内病変(腫瘍)が原因ではない」と結論できます。

多孔性分泌の多くは「乳腺症」であり、「不特定の乳管が詰まってしまう」⇒「分泌液が一時的にpooling」⇒「強く押すと(溜まっていた)分泌液が一斉に流れ出る」

また「断乳後の多孔性分泌(これは断乳後5年以上続くことも稀ではありません)」は、単純に「脳から分泌の命令」が止まっていないだけであり、乳腺は正常なのです。

2について…

「断乳後の分泌」は無論(授乳中から)継続していますが、気にすること自体「論外」です。 乳癌とは100%無関係な話です。

乳腺症の場合には、「詰まっていることで少量poolingされているだけ」なので、大概は「生理周期」に影響されます。

つまり、「乳腺が張る時期=詰まりやすい時期」には比較的量が多いが、それ以外の時期では「詰まっていない=量が絞っても殆どでない」というような「ムラ」があります。

 

私の言う「継続性」とは(「出たり出なかったり」が3か月継続」という意味ではなく)「同じような量が毎日、3か月間継続」なのです。

 

 

 

3について…

まず、「ミルク」は論外(癌がミルクを産生することは絶対にありません)

「緑」とか「青」なども、「見た瞬間」乳腺症と判断できます。

 

単孔性の場合

「黄色」は比較的良性、「茶色(黒、赤)」は比較的癌の可能性が高くなります。

 

多孔性の場合

乳腺症では時に「血性分泌」も起こします。

その殆どが「非継続性(1回だけとか、月経で胸が張る頃だけなど 注 1 ))」です。

 

注 1 )何故、月経の頃に(一過性の)血性分泌が起こるのか?

 

それを理解するには「月経」の仕組みを理解しなくてはいけません。

 

 

 

「月経」

卵巣からのエストロゲン上昇⇒子宮内膜増殖⇒子宮内膜脱落(月経)を繰り返します。

同時に    〃     ⇒乳管の増生(胸が張る)⇒乳管が破壊される(乳腺の張りが取れる)も引き起こすのです。

 

この乳管の破壊の際に出血が起こりうるのです。(迅速に修復へ向かうため、腫瘍とは異なり「一過性」で止まるのです)

「妊娠、授乳期」も同様に(急速に)増生した乳管から出血を起こしやすく、それが「妊娠授乳期の血性分泌」となります。

 

次回予告

いよいよIMpassion 130 結果を受け、atezolizumabの(PD-L1陽性)TN乳癌への適応拡大(2019/9/20)そして、(乳癌で使用できる)840mg製剤の発売(11月予定)が間近となりました。

私が最も注目しているpointはTNの40%でPD-L1陽性であるというところです。

ここが陽性率が10%をきるBRACAnalysisとの最大の違いと言えます。