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今週のコラム 207回目 BRACAnalysisが陽性率10%以下なのに対し、PD-L1は40%も(陽性率が)あるのです!

 

今日、いよいよ南アフリカ戦です。

「奇跡の番狂わせ」と言われた4年前。

世界ランクも6位!に上げた日本の実力は?

 

 

 

 

atezolizumab 商品名 テセントリク 抗PD-L1 ヒト化モノクローナル抗体

前回予告しました。

・機序

PD-L1陽性の腫瘍細胞では、このPD-L1がT細胞のPD-1と結合することで、このT細胞を不活化「腫瘍の免疫系からの攻撃回避」

また、免疫細胞のPD-L1はT細胞のB7-1と結合することで、やはりT細胞を不活化します。

atezolizumabはこのPD-L1を標的とするヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、PD-L1と結合することで「T細胞の再活性化」を起こす。

・IMpassion130試験

全身薬物療法を受けていない切除不能な局所進行または転移性TNBCの患者さんを対象に、atezolizumab+nab-paclitaxel(アブラキサン)の併用群 vs nab-paclitaxel単独群の比較試験

 

 

 

 

 

上 progression free survival(PFS)       無増悪生存                                  下 overall survival(OS)全生存率

PFSに関しては、統計学的有意差あり、OSではITT群では有意差ないが、PD-L1陽性群では有意差あり(但し、試験デザインとして検証的位置づけではない)

 

臨床的意義  Olaparib(リムパーザ)との比較

「鳴り物入り」で登場したOlaparibと比較して理解しましょう。

1.適応症例

・共通点 手術不能 再発乳癌

・サブタイプ

Olaparib: HER2陰性が条件(luminal もしくはTN)

atezolizumab: TNが条件(luminalは対象外)

・必要な検査

Olaparib: BRACAnalysisで陽性(血液検査)

atezolizumab: PD-L1陽性(手術標本で免疫染色)

 

2.投与形態

Olaparib: 単独(内服)

atezolizumab: nab-paclitaxel(アブラキサン)と併用(点滴)

 

3.臨床医の立場から

一番の違いは検査(BRACAnalysis/PD-L1)の陽性率の違いです。

BRACAnalysisが陽性率10%以下なのに対し、PD-L1は40%も(陽性率が)あるのです!

 

4. subtype別(再発)治療戦略

≪HER2陽性≫

抗HER2療法(充実しています)

 

≪luminal≫

palbociclib/abemaciclib (全症例に適応)

olaparib(BRACAnalysis陽性の場合)

 

≪TN≫

atezolizumab+nab-paclitaxel(PD-L1陽性の場合)

olaparib(BRACAnalysis陽性の場合)

 

今まで、BRACAnalysisの陽性率が低いため、(palbociclib/abemaciclibが使えるluminalとは異なり)TNには武器が無かった。

その意味で陽性率の高いatezolizumabの登場は、TNにとって極めて重要なのです。