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今週のコラム 193回目 乳癌診療の基本Ⅱ vol.11 順番としてはEC x 4 → DTX x 4 → PMRT となります

FMの話題をひとつ。

日曜日am11:30  『木村拓哉 Flow supported by GYAO !』

日曜日は「TOKYO FM」を聞きながら仕事をしているので、その途中で「流れていただけ」というのが最初でした。

SMAPも解散した今、今更「キムタク」でもないかもしれませんが、思い出すのは…

 

『あすなろ白書』

懐かしいなぁ。

自分自身の青春時代?と、重ね合わせる人も多いと思います。

 

今回、(ここに出すまで)西島秀俊が、このドラマに出ていたことに気付きませんでした。(写真、右端。 結構印象違いますね?)

♯ この当時、もう一つ思い出すのは「愛という名のもとに」(「浜省」の曲が流れてました)

「唐沢寿明と江口洋介」 この黄金のコンビは、10年後『白い巨塔』でも共演しました。

・白い巨塔は「田宮二郎出演の1978年版」も強烈な印象です。

『財前教授の総回診が始まります。』冒頭に流れる、あのコールに(子供ながら)ゾクゾクじていたのを思い出します。

医師という職業を意識したのは、間違いなくあの時でした。

(裏話)

実際の総回診は、どうなのかというと…(20年以上前の話ですが…)

(あそこまでの)ドラマ性はありませんでした。(ドラマではないから当然か)

教授の下には講師や助手(当時の役職名)が各班(食道班とか移植班、乳腺班、血管班など)を率いていました(いわばグループリーダー)

総回診の際には、教授が病棟師長(かつては「婦長」)や医学生を伴いながら、全ての病室を回ります。

一人一人の患者に対して、その病棟担当医(役職の無い平医師)から簡潔に患者の説明を受けます。

教授は、(かしこまっている)患者におもむろに「経過順調ですね」などと声掛けしていきます。時に鋭い?質問をその病棟担当医に浴びせることがあります。

(担当医が「緊張」もあって返答に窮していると)そのグループリーダーが(目で、その担当医を制して)『教授、私からお答えします。』的なやり取りがありました。

総回診とは、「外科長」である教授がその科で正しい診療が行われていることを掌握するために「グループリーダー」と対峙する場だったのです。

これが崩れると〇馬大学のような「裁判となるような酷い手術」が横行するのです。(教授が本来、制御すべきだったでしょう)

 

脱線しましたが…

このFMで印象的なのは、ゲストの糸井重里(懐かしい!)の一言。

『木村君は、本当に普通の若者なんだ。雨が降ると、コンビニに人数分のカッパを買いに行くような普通な感じがいいんだ。』

今更ですが…

生意気な印象?のキムタクの素顔が(ゲストを介して)垣間見れて、結構面白い。

今では日曜日am11:30楽しみな時間となってます。

 

〇本編

外来(退院後、初回) 当院ではKi67を含め全ての結果が揃う「術後4w経った水曜日」としています。

 

『こんにちは。脱がなくてもいいので服を挙げて創部を確認させてください。』

 

 

 

 

 

Bさんは、カーテンの奥に入り準備します。

 

『準備できました。』

 

 

 

 

『まだ、テープが少し残ってますね。もうそろそろ「テープかぶれ」の原因となるし(衛生的観点からも)剥がしますね。』

 

 

 

剥がした後の、創部を確認し『創部はOKです。 腕も挙がりますね?』

 

『ハイ! 毎日やってました!』

 

 

 

『great!  それでは、病理結果を説明します。』

 

〇病理結果

病理学的判定

Invasive ductal carcinoma, the left breast

Metastatic carcinoma, the left axillary lymph node(11/14)

所見

組織学的には、腫瘍は浸潤性乳管癌であり、B-G列にかけて存在し、豊富に存在する非浸潤癌成分を介して浸潤癌巣が散在する像を呈します。

B-G列に存在する浸潤癌巣が連続性を認めるか否かは問題となりますが、浸潤癌成分は一つの浸潤としての領域性を示すものと考え、浸潤癌長径は76mmと判定 注 36 )します。

組織上、脈管侵襲 注 37 )は認められませんが、多数のリンパ節転移を形成しています。

組織所見の詳細は以下をご確認ください:

Maximaum invasive tumor size, 76mm: Histologic type, ductal carcinoma(solid type)注 38 ):Histologic grade, 3 注 39 ): Nuclear grade, 3 注 40 ): Structural atypia score, 3: Nuclear atypia score, 2: Number of mitotic figures, >20/10 HPF: Fibrotic focus  注 41 ), -: Skin invasion, -: Fat invasion, +: Tumor necrosis, +: Tumor-infiltrating lymphocyte 注 42 ), ++: ly0, v0: Perineural invasion 注 43 ), -: Non-invasive component, +(40%, non-comede type > comedo type, intermediate – high grade): Mammary Paget disease, -.

2. Lymph node: 11/14(maximum tumor size, 15mm)

Level Ⅰ, 9/12: Level Ⅱ+Ⅲ, 2/2.

3. UICC 注 44 )pT3N3M0: Stage ⅢC.

 

ER)陰性 0%、PR)陰性 0%、HER2 score)0, 陰性

腫瘍のMIB-1陽性細胞は多いところで80%です(ややばらつきあり)

 

注 36 )一つの大きな浸潤癌ではなく、非浸潤癌の広がりの中に浸潤癌があくまでも「散在」している。浸潤径76mmは「大きなしこりの浸潤径76mm」とは意味合いが異なります。

 

 

標本に割を入れます。

 

 

 

 

 

 

 

割面

肉眼的には「割面G」に2.5 x 2cmの腫瘍

line F~H

 

 

 

 

 

顕微鏡での評価では腫瘍は「割面B~G」に存在

B~Gの浸潤病巣が実際に連続しているのかは「不明」だが、

「一連の病変」として76 mmと評価

 

 

 

 

 

 

 

注 37 )脈管侵襲:リンパ管(ly)と静脈(v)で記載される。

この症例のようにly-だからといってもリンパ節転移がある症例もあれば、逆(ly+だけどリンパ節転移無)もある。あくまでも参考程度

注 38 )invasive ductal carcinoma(浸潤性乳管癌)は浸潤癌の70%程度を占め、non-specific type(特別ではない=一般的タイプ)と表現される。

それは更に3つに分類される

・Tubule forming type(かつての乳頭腺管癌)

・Solid type(かつての充実腺管癌)

・Scirrhous type (かつての硬癌)

注 39 )注 40 ) Histologic grade(組織学的異型度)やNuclear grade(核異型)は以下のような「点数制」となっている。

『核グレード』は①核異型の点数+②核分裂の点数の「2項目の和」です。

 

①核異型 Nuclear atypia score

弱い:1点

中間:2点

強い:3点

 

②核分裂 Number of mitotic figures

5個未満(10視野で):1点

5~10個  〃   :2点

11個以上  〃  :3点

 

○『核グレード(NG) 核異型Nuclear atypia scoreの点数+核分裂Number of mitotic figuresの点数』

    2点、3点 :核グレード(NG)1 

    4点    :  〃    2

    5点、6点 :  〃    3 

 

ここに「構造異型度(腺管形成スコア:Structural atypia score)」を加えて

①核異型Nuclear atypia scoreの点数+②核分裂の点数+③腺管形成の点数の「3項目の和」としたものが「組織学的グレード」です。

 

①核異型Nuclear atypia score

弱い:1点

中間:2点

強い:3点

 

②核分裂Number of mitotic figures

5個未満(10視野で):1点

5~10個  〃   :2点

11個以上  〃  :3点

 

③腺管形成 Structural atypia score 腫瘍の75%超で明らかな腺管形成:1点

〃 10~75%     〃     :2点

〃 10%未満   〃     :3点

 

○『組織学的グレード(HG)核異型の点数+核分裂の点数+腺管形成の点数』

    3点~5点:組織学的グレード(HG)1

        6点、7点:   〃       2

    8点、9点:   〃       3

 

注 41 )Fibrotic focus

 

 

腫瘍内に存在する「線維化」巣

腫瘍内血管新生と関連しており、予後因子と言われる

 

 

 

 

Aの図のD部分の強拡大

 

 

 

 

 

注 42 )Tumor-infiltrating lymphocyte

リンパ球が腫瘍周辺に浸潤、集簇しているもので腫瘍から抗原提示を受けていると言われ、予後や治療効果予測因子の可能性がある。

今流行の免疫療法(TIL)では、これを「抽出」し「殺傷能力を強く」して「患者体内に戻す」治療法である。

注 43 )Perineural invasion

神経周囲浸潤、予後因子の候補である。

注 44 )UICC :  Union for International Cancer Control

国際対ガン連合 ジュネーブに本部を持つ国際機関

TNM分類  T-Primary Tumor   N-Regional Lymph Nodes   M-Distant Metastasis を採用している。

 

 

『この病理レポートはお渡しします。リンパ節転移が10個以上となるのでステージはⅢCとなります。NG3, Ki67=80%はTN typeの一つの典型と言えます。』

 

 

 

 

 

『リンパ節転移4個以上だから、放射線も必要ですね?』

 

 

 

 

『その通りです。順番としてはEC x 4  注 45 )→ DTX x 4  注 46 )→ PMRT 注 47 )となります。』

 

 

 

注 45 )EC

アンスラサイクリンであるE(Epirubicin)とC(cyclophosphamide)の組み合わせ。

cyclophosphamideは商品名エンドキサンであり、アンスラサイクリンの相方(おまけ)であり、あくまでも主役は「アンスラサイクリン」なのです。

この2剤の組み合わせを3週間に1回の点滴を4回行います。

注 46 )DTX(docetaxel)

タキサン系であり、3週間に1回の点滴を4回行う。

同じタキサン系にはPTX(paclitaxel)もあるが、こちらはweekly(毎週点滴)

注 47 )PMRT : Postmastectomy Radiation Therapy

(温存術後の、温存乳房照射に対して)全摘後の照射(胸壁+鎖骨上など)

通常、リンパ節転移4個以上で適応

 

★次回は実際の投与の様子を紹介しましょう。