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今週のコラム 183回目 乳癌診療の基本Ⅱ vol. 7 手術も放射線も省略は無し

令和になりました。(パソコンの返還で「最初」に出てくるのには驚きですね?)

思い出すに・

昭和⇒平成の時は、(前年の)年末から「(昭和)天皇陛下、死期が近い」報道があり「自粛ムード」の中での改元だったので、今回のような祝賀ムードでの改元は予想外?でした。

何はともあれ、(価値観の分散したこの時代に)日本中が「一つの事で、同じ方向を向く」こと自体、何か嬉しい。そう感じます。

 

本編

 

Bさん『手術後の抗がん剤は解りました。 それと放射線ですよね?』

 

 

 

 

私『その通りです。放射線の適応注 17 )』があります。』

 

 

 

注 17 )   術後の照射

1.温存乳房照射:(部分切除した場合)全例 照射回数(当院では2018/4月~ 15回)

2.PMRT post mastectomy radiation therapy(全摘後の照射):リンパ節転移4個以上が一般的だが、T4でも胸筋浸潤は必須、皮膚所見有(T4)でも推奨される。照射回数25回

 

 

『術前抗がん剤した場合には?』

(手術でもそうですが)あくまでも「抗がん剤する前の状態」を基準に適応が決まります。

つまり、抗がん剤が効いても『手術も放射線も省略は無し』なのです。

例)手術:抗がん剤前に「levelⅢまで(画像上)転移有」⇒(術前抗がん剤で画像上消失しても)郭清はlevelⅢまで行わなくてはいけない

(手術と同様に) 抗がん剤前に「(画像上)リンパ節転移4個」⇒(術前抗がん剤で画像上消失しても)PMRTを省略してはいけない

 

 

Bさん『ところで江〇〇病院ではTomoTherapy 注 18 )であることは調べたんだけど』

 

 

 

注 18 )TomoTherapy   IMRT(Intensity Modulated Radiation Therapy)であり、毎回IGRT(Image Guided Radiation Therapy)を用いて位置を補正しながら行う高精度な照射装置

通常の(X線、電子線)照射装置であるリニアック(直線加速器)が「固定された位置から、照射ビームで狙う」のに対し、TomoTherapyは小型化したリニアックを螺旋状に360°回転させながら「pinpoint」に狙うことができるのです。

(周辺にある)大事な臓器にかけずに、「かけたい部位だけにpinpointに照射ができる」というものです。

 

私『そうなんです。当院ではTomoTherapyは3台稼働しています。そのおかげで乳房照射にも全例がTomoTherapyとなります。注 19 )

 

 

 

注 19 )TomoTherapyを持っている病院自体少ないですが、そのような病院でも(通常1台しかないので)前立腺がんなど限られた症例だけに適応が絞られてしまい乳房照射には通常のリニアックで行われることが多い。

 

Bさん『私の場合はどうなのかしら… 神奈川だから2h以上かかるし、迷うわ。TomoTherapyの方が断然いいのであれば、頑張るけど…』

 

 

 

 

私『よく訊かれるので自分なりに整理しています。注 20 ) 

 

 

 

注 20 )治療効果の面から是非TomoTherapyしたいのは、もともとSCやPSに転移があった症例(抗がん剤で「画像上」消えたとしても)

 

『温存乳房照射には無意味ってこと?』

そうではありません。

その場合には(治療効果というより)「有害事象から」TomoTherapyを選択する価値は十分あると思っています。

江〇〇では本当に「放射線肺臓炎」が少ない!(これは「肌感覚」として間違いない事実です)

 

 

Bさん『私の場合には、治療効果は変わらないけど、有害事象(放射線肺臓炎など)からはTomoTherapyが望ましいということね。』

 

 

 

 

私『その通りです。Bさんのご都合で選択してください。(遠方の方だと)入院希望の方もいらっしゃいますが注意が必要です。注 21 )

 

 

 

注 21 )入院中は厳密な外出外泊制限があり文字通り「缶詰」となります。

照射時間は1回あたり数分で終了するので、当然「外出、外泊したい」となるのですが、「外泊ができるような患者に入院が必要?」と、当局から指導が入るので(外泊)できないのです。