世の中、10連休ですね。
今年の乳がん学会(2019/7/11)ではpalbociclibについて発表します。
この連休にその準備ができるので、通常の仕事が圧迫されずに済みそうです。
「平成最後の…」
この1か月間、さんざん聞かされてきた文言
平成の30年間に何があっただろうか?
ネットで便利になったのは間違いない。でも、その他は?
「あっという間の30年間」
昭和の時代から「来るぞ、来るぞ」と言われ続けてきたあの「リニアモーターカー」
結局「平成」を素通りしてしまいました。
昭和がまた一つ遠くなってしまった。
昭和の大横綱 千代の富士
昭和の怪物 江川卓
平成は彼らを超えただろうか?
その答えは令和に解るのだろう。
Bさん『抗がん剤の内容についてですけど…
ネットで調べると、種類が沢山あって(そのブログよって)やっているメニューが違ってますよね?
お医者さんから「これをやって」と言われるものをやればいいのでしょうが、私は(性格的に)納得して行いたいの。
説明してもらえますか?』
私『了解しました。少々長くなりますが辛抱してください。』
Bさん『よろしくお願いします。』
私『まず抗がん剤について最も重要な視点が「術前術後に適応あるのか? 注 13 )』
注 13 )今週のコラム76回目「手術不能乳癌と転移再発乳癌」は添付文章では「手術不能又は再発乳癌」と一括りにされていることからも解るように、『手術不能乳癌と転移再発乳癌の扱いは一緒』なのです。をご参照ください。
1.「手術不能乳癌」もしくは「再発乳癌」でしか使用できない薬剤
・bevacizumab(商品名 アバスチン)
・eriblin(ハラヴェン)
・vinorelbine(ナベルビン)
・capecitabine(ゼローダ)
・TS-1
・gemcitabine(ジェムザール)
2.(手術不能/転移再発だけでなく)乳癌全てで使える薬剤(術前術後にも使用できる)
2-1anthracycline(アンスラサイクリン)
A(adriamycin アドリアマイシン)とE(epirubicinエピルビシン)の2種類がある。
C(cyclophosphamide エンドキサン)やF(5Fu)などと組み合わせて以下のレジメンがある。
A系列 FAC,AC 3週に1回のサイクル
E系列 FEC,EC 3週に1回のサイクル
2-2taxane(タキサン)
PTX(paclitaxel パクリタキセル) 毎週投与
DTX(docetaxelドセタキセル) 3週に1回のサイクル
nab-PTX(abraxaneアブラキサン)3週に1回のサイクル ♯ただし「補助化学療法における有効性及び安全性は確立されていない」と添付文章にあるので術前術後には使用されない。
3.HER陽性の時のみ適応がある薬剤(術前術後にも使える)
trastuzumab(herceptine ハーセプチン) 毎週投与でも3週に1回でも投与可能
pertuzumab(perjetaパージェタ)3週間に1回投与のみ ♯trasutuzumabとの併用が絶対条件
Bさん『なるほど!頭が整理できました。
私の場合は(上記では)2のみが適応なのですね。』
私『その通りです。それでは次のstepとして、2の中でどのように薬剤を選択されるべきか?についてお話しします。
長くなりますが、よろしいですか?』
私が医者になった25年前は…
「CMFの時代」
乳がんの抗がん剤といえば、CMF 注 14 )の一択でした。
注 14 )CMF:(CとFは上記2-1に記載しています)Mはmethotrexateです。(リウマチでも使われますね)
「anthracyclineの時代」
これに対しanthracyclineが直接対決を制し(あっという間にCMFは時代遅れとなり)CEF全盛の時代となりました。
M:methotrexate→E:epirubicine(アンスラサイクリン)
こうしてanthracyclineの時代は花開きkey drugと呼ばれるようになりました。
(臨床試験の隆興とともに)「高容量であるFEC100」が一般化され、更に「5FUって、要る?」という流れで「EC/AC」へと変遷しています。
「taxaneの台頭」 併用の時代
taxaneは最初からanthracyclineとは対決を挑まずに、あくまでも「anthracycline + taxane」として「併用」の道を選びました。
当然ながら(anthracycline単独よりは)効果があり「anthracycline + taxane」は「最強レジメン」としてgold standardとなったのです。
「過剰の時代から有害事象を考慮した省略の時代へ」
(心合併症の頻度が日本とは桁違いである)欧米から『(high riskでなければ)anthracyclineを省略したtaxaneだけにできないだろうか?』という声がでてきます。注 15 )
注 15 )anthracyclineには心毒性が知られているので、「もともと」心臓病の方には使いにくい
もともと「正常心機能」の方の場合には「生涯投与量(A<500mg/m2, E<900mg/m2)」を超えないようにします。
そこで生まれたのが「TC(Tはtaxane Cはcyclophosphamide)」ここでのtaxaneはDTXが選択されています。(3週に1回のレジメンだから)
SABCS 2007でTC>ACが示されて以降、(非アンスラサイクリンレジメンである)TCが一般化されています。
〇それでもCEFなどの「アンスラサイクリン単独レジメン」を提案する医師がいるのは何故なの?
長いことanthracyclineの時代が続いたので「本当にアンスラサイクリン抜きでいいの?」抵抗がある医師も多いのです。(大分、少なくなってはきましたが)
『なるほどー。私のcaseに当てはめると、最強レジメンであるanthracycline + taxaneとなるわけね?』
『その通りです。BさんはTNだから(ホルモン療法を行わないので)その方がいいのです。
luminalBとしての抗がん剤であれば、TCが標準であり、(high riskであれば)luminal typeでもanthracycline + taxaneレジメンとしています。注 16 )』
注 16 )ここでいう「high risk」とは?
最近のQandAでも多く質問が来ています。
単純に「ステージ」と考えましょう。ステージとは「浸潤径」と「リンパ節転移の個数」で決まります。
(私の感覚では)「stageⅢ以上」が基準と考えます。
♯ グレードは無関係