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今週のコラム 181回目 乳癌診療の基本Ⅱ vol.5 「learning curve」って、聞いたことありますか?

今日は暖かかったですね。

日本各地で、夏日も多かったとか。

たまたま今日は手術が4件しかなかったので、pm4:30~市川でMMTEを2件入れていました。(術前ケモ中の人達が「抗がん剤が効かなかった際に、病勢が進行しないように」手術枠を所々keepしておくのですが、cancelにした後、今回はタマタマ埋まらなかったのです)

pm4:00 江戸川の土手をのんびりと市川へ。

『こんな、のどかな日々はいつまで続くのだろうか。』

すっかり春を感じたのんびりとした夕方でした。

 

 

Bさん『手術に対してイメージがでてきました。ありがとうございます。私は何でも自分で納得できないと前に進めない質なんです。』

 

 

 

 

私『自分の身体の事なんだから、それは当然です。よく患者さんから「お任せします」って言われますが、「理解しようともせずに」お任せしますでは少々困ります。(高齢者の場合は除く)やはり、きちんと納得したうえの「お任せします」であって欲しいのが本音です。』

 

 

 

 

Bさん『手術に際して、いくつか質問してよろしいですか?』

 

 

 

 

私『どうぞ。いいですよ。』

 

 

 

 

Bさん『私にlevelⅢまでの郭清が必要なことは解りました。そして、それがどのようにして行われることもイメージできました。

気になることは、levelⅢまで郭清することで何か障害はないのですか? 腕が動かしにくかったり、腕の浮腫のリスクが上がったりしないの? 』

 

 

 

『まず大胸筋は腕の運動には一切かかわっていません。(levelⅢまで郭清したからと言っても)腕が動かしにくいことはありません。

全摘することで傷は大きくなるので(傷が大きい分)突っ張っるので最初は大変かもしれませんが、(リハビリすることもなく)慣れて動かせます。』

 

 

 

『えっ? リハビリ要らないの??

ネットで見ると「リハビリは必須、そして大変」って書いてあるけど…』

 

 

 

『一般にドレーンを入れた手術をしていると、(動かした際に)「ドレーンが当たって痛い」とか、(それでも我慢して動かしていると)「ドレーン量が減らないから、動かすな!」と言われがちなために、どうしても腕の運動開始が遅れます。』

『ドレーンが抜けて、動かし始める頃には肩関節が拘縮して動かしにくくなってしまうのです。その場合にはリハビリが必要となります。

私はドレーンを入れないので、その(リハビリ)必要はありません。』

 

 

『えっ?ドレーン入れないの? 大丈夫なの?』

 

 

 

 

『ドレーンは入れません。必要がないからです。注 11 )

ドレーンが無いので、(手術)当日に腕は挙がります。それが、リハビリが不要である鍵なのです。』

 

 

注 11 )「乳がん手術のブログ」の中『ブログ  2018/2/26 「要らないから、入れない」シンプルに、ただそれだけです。』をご参照ください。

 

『入院は何日間?ネットでは(腋窩郭清あると)10日間とか2週間とか書いてあるけど?』

 

 

 

 

『当院では2泊3日(前日入院、翌日退院)となります。

ドレーンを入れないので、そんな入院期間は全く不要です。勿論、安静が不要なので退院するのだから、仕事も退院翌日から復帰構いませんよ。』

 

 

 

『本当? 仕事忙しいから助かるわ。』

 

 

 

『病理結果が出揃うのが3週間少しかかるので4週間目に受診してもらいます。その際に病理結果をお話しして「術後療法」の予定を立てることとなります。

因みに吸収糸(溶ける糸)で縫合しているので消毒や抜糸は一切ありません。(全摘の場合には)6日目から入浴できます。

当院に処置に来院することもないし、ご自宅で自分で消毒や処置なども一切ありません。』

 

 

 

『病理が出るのがそのくらいかかることは理解できました。

ただ、(仕事の関係で)早く抗がん剤を始めたいのですけど、病理が出てからでなくちゃ開始できないのかしら。』

 

 

 

『いいですよ。

TNであることに(手術標本でも再度調べますが)変更は無い筈なので、(病理結果を待つことなく)開始してもいいですよ。

Bさんの手術は金曜日になったので、土曜日退院して翌週の(火)(水)(木)のどれかから開始しましょう 注 12 )ご希望はありますか?』

注 12 )月と金は手術日なので抗がん剤は火~木にしかできないのです

 

 

『火曜日開始にします。よろしくお願いします。』

 

 

 

 

今回はこれで終了です。

次回はTNのBさんが行う抗がん剤(EC → DTX)について説明します。

 

〇おまけ

 

一体、何故ドレーン要らないんだろう?

 

 

 

 

「learning curve」って、聞いたことありますか?

経験(手術執刀件数)が多くなればなるほど手術時間は短くなり、精度も上がります。

ドレーンは術中に損傷した血管やリンパ管からの漏れ(出血やリンパ液)をためずに外へ出すための管です。

「精度が高くなる」=「それらが(そもそも)漏れなくなってくる」=「ドレーンは不要」となるのです。

★ 「ドレーンを入れなくても大丈夫じゃない?」と(自分自身)感じるには相当な数(執刀数)が必要だと思います。

大きな施設で大人数で手術しているようでは、「いつまで経っても」そこに到達するのは難しいと思います。(正直な感想)