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今週のコラム 151回目 (自分で)「どれだけの数、エコーしてきたのか?」それが重要なのです。

みなさん。こんにちは。

随分、涼しくなりました。

今年は「最長の夏」と同時に「最短の残暑」でした。(世の中、どこかでバランスするものなのです)

「秋の訪れを感じさせる曲 ベスト10」

3位に私の好きなレミオロメンの「青の世界」が入っていました。

「もう一度知らない世界、見つけてみないか。」

人生、幾つ(年齢)になっても「次なる世界への好奇心」必要ですね。

 

FMから流れたshort story

「さー、飛行機で離陸するぞ!いよいよ楽しいバカンスの始まりだな。」

「あぁ、大変。あなた、私ったらアイロンつけっ放しにしたかもしれないわ。」

「あー?大丈夫だ。わしは風呂の蛇口を閉め忘れてきたようだからな。」

 

 

 

 

前回、最強の検診は「半年に1回のエコーである」そう、コメントしました。

その続きで「乳腺エコー」について、詳細します。

 

○エコーで評価される代表的な部位

代表的なエコー検査として腹部エコー(肝臓、胆嚢)や婦人科エコー(子宮 胎児など)があります。

これらは比較的(検査自体が)容易な部位であり早くから一般検診(ドック)に用いられてきました。(検査技師さんにとっても、自信をもって判断できるからです)

乳腺に関しては、(実際にやってみると解るのですが)腹部や子宮とは比較できないくらい難しく、(マンモグラフィーがあったことをいいことにして?)検診では行われることは無かったという経緯があります。(検査技師どころか、余程経験豊富でないと乳腺専門医でさえ「自信をもって判断ができない」からです)

 

○何故、乳腺エコーが難しいのか?

1.(正常)構造にバリエーションが多い

2.検査範囲が広く、集中力が必要

3.乳腺自体、「柔らかい」ので検査部位を固定して行うことができない。

→(この3に関しては… イメージとしては、「大人しいワンちゃん」を洗うのと「動き回るワンちゃん」を洗うのでは、大変さが全然違いますよね?)

 

○歴史的背景

昔(15位前まで)は…

そもそも、乳癌が今のように増加する前だったので(数が少ないから)需要が低い=検査技師さんにエコーしてもらう必要もない。

この時代には「医師がエコーをするのが当然」でした。

たしかに乳腺エコーは難しいのですが、(絶対的に)数が少なかったので、「一人ひとりに時間をかけられる」環境があったのです。

 

その後は…

それが、乳癌が「右肩上がり」で増加していく過程で医師側から(腹部エコーなどのように)「技師さんが乳腺エコーしてくれなくては、無理(やっていられない)!」という動きが出るようになります。

★患者さんが増えると、(集中力を要する)「乳腺エコー」を診療の中でやることに医師が耐えられなくなってきたのです。

また、「患者さんの増加=需要の増加」は職業的に「乳腺エコーを技師が学ぶ場」を増やす事にも繋がっていきます。(「需要と供給」が物を言うのは市場原理と全く同様なのです)

こうして、(かつては考えられなかった)「乳腺エコーを医師自身がやらない時代」が首都圏から始まっていったのです。(堕落の始まり)

特に「首都圏の若い医師」には自分でエコーする習慣自体が(最初から)無いのですが、その不自然さに本人たちは気付いていない。

 

○土地による差

仙台では…

当時、すでに「東〇公〇病院」が(東北全域で)他を圧倒していました。

それでは「何が他の病院と違うのか?」

それこそ「エコー技術だ!」そのようなプライドがありました。

「他(の病院)で見逃されたり、相手にされないような小さな病変を診断してこそ、公〇病院Qualily」そうだったのです。

その意味で「自分でエコーをすることに大いなるこだわり」があったのです。(技師に乳腺エコーを任せるということは、レベルを「その他の病院と同等まで下げる」と同義なのです)

 

首都圏では…

4年半前(2014年4月)江戸川に来て、まず私が驚いたのが…

私が赴任する前に非常勤で来ていた医師達が、全く「自分でエコーしないこと」でした。

さらに、乳がんプラザを始めてみると…

東京をはじめとした首都圏では「それ=技師にエコーを任せること」が常識であることに愕然としました。(まさか、ここまで事態がすすんでいるとは!)

 

「これでは、(私とは)勝負にならないな。」(偉そうに聞こえるとは思いますが、それが私の最大のadvantageとなったのです)

ここに実際の「乳腺超音波」試験結果を掲載します。(どこに差が出るのかを示したいからです。)

特に「動画試験」に注目してください。

「感度」も「特異度」も100%(全問正解)

これは、私が東〇公〇病院(勤務)時代に受けた試験です。

動画試験では感度では「16%(100-84)」特異度では「22%(100-78)」も平均よりいいのに対し、静止画試験では、それぞれが「5%(100-95)」「7%(88-81)」に圧縮されていることが解ります。

〇それは何故なのか?

私が(F1ドライバー並みに)動体視力がいいのか?

「いえ、いえ」そういうわけではありません。(もし、そうなら医師をやってはいません?)

動画試験は「実際にエコーしているように、画像が動いている」のです。

動画試験こそ、実臨床のエコーに近いのです。(静止画試験はまさに「技師エコーの写真をみて判断する」それに近いといえます)

やはり、(自分で)「どれだけの数、エコーしてきたのか?」それが重要なのです。

 

 

○乳腺エコーの特殊性

1.検査技師さんには、(その所見の)「結果を知ることがない=feedbackがかからない」

「(正常)構造にバリエーションが多い」と前述しましたが、ここが最もポイントとなります。

自分でエコーをして、その結果を(例えば針生検したりして)自ら学ぶことで「あー、これは正常バリエーションなのか!」我々医師がエコーを行うと、日常診療はその連続となるのです。

それが、(どんなに)沢山の患者さんをこなすとしても(結局、その所見は何だったのか?を知る機会がない)技師さんには、学びようがないのです。

 

2.実際の例

①リンパ節:(私からみれば、正常リンパ節とわかるものも)技師さんは「リンパ節腫大」などと所見に記載します。

♯これは、当院ドックなどでは、私が「無駄に被験者を心配させるだけだから、明らかな正常リンパ節に腫大リンパ節とは記載させない」ようにしています。

♯♯ 上記としたきっかけは、ある患者さん(被験者)のレポートに技師さんが「リンパ節腫大」と記載したために、その方がなんと「CTを撮影」してしまった!のです。

私からみれば、「どうでもいいリンパ節」だったのですが、(検査技師による)「リンパ節腫大」という記載にビビってしまい「どこかに癌があるのか?」と焦ってしまったようです。

その患者さんが20歳代なのに被ばくのあるCTを撮影することになったことを重く受け止め、「これは、絶対にこのままでは駄目だ」と、それ以降は、「そのような無駄に心配させる記載は、消去してもらう」ように(私が)訂正しています。

②乳腺:明らかな「腫瘤」や「嚢胞」はいいのですが、特に腫瘤非形成性病変についてはやはり「診療することによるfeedbackが無ければ難しい」それが正直なところです。

エコーだけ見ていても正解はないのです。「そのエコー所見は、過去に生検してどうだったのか?」そのような「臨床経験の積み重ね」が必要なのです。