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今週のコラム 121回目 抗がん剤は副作用の出方を把握していれば、全く問題ありません。

みなさん。今日は。

今日は東京マラソンですね。(今朝のサンフリで知りました)

 

○20年以上前、若き日(研修医時代) 前年のハーフマラソンを経て、いよいよ人生初のフルマラソン!

「3hをきってやる!」若き日の果たせなかった思い。

今でもはっきり覚えてますが、30kg過ぎまでは「これは、いける!(3hを切るペースでした。)」

しかし、その後ガタンとペースが落ちて最後はヘロヘロでした。(給水せずに走っていたのが敗因の一つだと思っています)

♯そもそも、その前年のハーフマラソンで1h35min.だったから(単純計算でフルを3h切る目標は無謀?だったかもしれません)

この際の「苦しくて、そして悔しい」記憶が、いまだにブレーキをかけているのです。

今でも、時々その(少しだけ苦い)思いが頭をよぎります。(今日のように、『マラソンがある」みたいな時には)

 

○20年の年月を超えて、「それ」を達成する為には、(あの当時と、体重は変わっていない私ですが)今より10kg落とす努力が必要でしょう(そのためには、食生活も変えなくてはいけません)

アルコール好きの私(注:アル中ではありません)には、意外と「そこが最大のネック?」なのかもしれません。

 

 

 

 

乳腺専門医

専門医制度も変遷がありますが、一口に言ってbaseとなる診療科の専門医取得が前提となります。

我々、乳腺外科医は「外科専門医」を取得してから(数年してから)受験資格が得られ「乳腺認定医」「乳腺専門医」へと段階的にすすみます。

他には「病理専門医」や「放射線専門医」の資格を持った医師も受験資格があり、それぞれが専門である「乳腺専門医」も(乳腺外科医に比べると圧倒的に小数ですが)存在します。

‐ 模式図 -

乳腺専門医には、以下の3種類となります。(1が圧倒的多数)

1.(外科系)乳腺専門医   …外科専門医取得したもの

2.(放射線科系)乳腺専門医 …放射線科専門医取得したもの

3.(病理系)乳腺専門医   …病理専門医取得したもの

♯ ちなみに、当院の放射線科医は乳腺専門医です。

私は「乳腺指導医」の資格がありますが、それは乳腺専門医を更新すると申請資格が得られます。

 

我々、医師は専門医となると、(それを維持するためには)いろいろな役目(義務)を負う事となります。

♯「専門医」は、永久資格ではないのです(更新制です)

♯♯ 具体的には、「論文発表」や「学会発表」による「点数取得」が必須となります。

 

○論文発表

・これは大学病院のように(よっぽど)暇が無いと書く事は難しい(現実的ではない)。

・それを書くには(大学病院のように)医師が余っていて「診療に追われていない」状況が必要であり、(一般病院で)バリバリ診療をこなす中で、それ(論文)を書くのは難しいことなのです。

♯大学病院とは「教育(若い医師を育てる)」と「研究(論文を発表する)」の場であり、そもそも「診療の場では無い」のです。

 

私が4年前、江戸川病院に赴任した当初は(直近4年間も乳腺外科の常勤医が不在であり、「乳癌学会の認定施設」からも末梢されていた「空白の4年間」だったため)患者さんが非常に少なく、(20年くらい前の大学病院勤務時代を思い起こさせるように)「とにかく暇」でした。

⇒そこで、その暇を利用して(江戸川病院赴任、最初の年に)論文(乳癌骨転移に対するベバシズマブ併用パクリタキセル療法の有用性)を書きあげています。(これは、その後「(乳癌学会の)施設認定」や「専門医更新」などに役立ちました)

ただ、(それも「今は昔」)現状のような診療をしている中で論文発表を行うのは現実的ではありません。

 

○学会発表

・多くの(大学病院以外に)在籍して診療に忙しい専門医にとって、現実的に「専門医更新」のために行っているのが、「学会発表」となります。

・これは、専門医としての(専門医の更新資格を得るための)「義務」であり、また(質の良い診療を提供するための「責任」とも言えます。

・私は(肉芽腫性乳腺炎もしくは乳管腺葉区域切除などの)論文を書きたいとも思う一方で、(なかなか時間がとれないので)実際には「学会発表(乳癌学会及び関東地方会など)」をしています。

 

○講師

・また、製薬会社の方達にレクチャーすることも「重要な役割」だと考えています。

・(医師ではない)彼らの中には「研究職」のような専門家もいますが、実際の臨床の場(薬剤がどのように使われて、実感としてどのような効果がなるのか?)に触れる機会が無いからです。

 

私は江戸川に来てから、「ペグフィルグラスチム」を扱う企業や「デノスマブ」を扱う企業でも「研修会の講師」としてお話ししていますが、(ここ数年)毎年継続しているのが「ベバシズマブやハーセプチン」を扱う企業と「エリブリン」を扱う企業です。(問題はないとは思いますが、敢えて企業名は伏せます。)

♯ これら2つの企業の薬剤は「臨床の場」で(私も含めて)高く評価されており、その薬剤を実臨床で使用するにあたって、協力すべきだと考えているからです。

 

ここからが本題です。

 

江戸川病院 乳腺外科の2018年2月、外来化学療法の現況

(他科とは異なり)乳腺外科は、創設当初から「診断~手術~術後治療まで一貫して行ってきた」歴史的背景があります。

当院には「腫瘍内科」がありますが、化学療法は当科で行っています。

 

最初は(水曜日外来の一部として)「週に数人の枠」でスタートした「(乳腺外科での)外来化学療法」ですが、現在では(水曜日の枠をはみ出し)「火曜日や木曜日の外来」の中でも行っています。

 

この春に、前述した2社にレクチャーするにあたって(どちらも抗癌剤メーカーですから)、この機会に「当科での化学療法患者さんの現状(どのような薬剤が、どのような頻度で使用され、どのような効果があるのか?」について理解してもらおうと思い、(2月11,12の連休を使い)2018年2月の(乳腺外科での)外来化学療法(当科では入院しての化学療法は一切行っていません)の実態を調べました。

 

 

○ 人数 その1カ月間に化学療法をした人数(「のべ」ではなく「実際の患者さんの数」です)は「50名」でした。

・(月、金は丸一日手術なので)化学療法は「火、水、木」の週3日間の私の外来の中で行っています。

・月に1回のレジメンは存在せず、(通常)同じ人が(月に)複数回受診しており、これを「のべ人数」とすると、「のべ89名」でした。

 

この数字を分析することで、(当院での)「化学療法の現状」が見えてくると思います。

 

1.(化学療法をしている)理由の分析

再発症例 12症例

ステージⅣまたは、手術不能症例 7症例

術後補助療法 31症例

 

○再発症例

・他院で(過去に)手術をされて、再発してから当院に転院してきた症例も含まれています。

・(前述したように)「江戸川病院には(4年前まで)空白の数年が存在」していました。

(私が赴任する)4年前までは「江戸川区の乳癌患者」は全て他院で手術をしており、その後再発して(地元である)当院に転院して化学療法をしています。

・また○研や○センターや、(ある種の)大学病院などから「(手術は終わったのだから)今後は地元(当院を下請け扱い?)で治療しなさい(何様?)」と(患者さんの意思とは無関係に)術後に当院を受診されている方も結構いらっしゃいます。

 

○ステージⅣまたは、手術不能症例(手術先行が無理な局所進行乳癌)

・(QandAをやっている)当院に特徴的なものであり、(前医で)「ステージⅣだから、手術はできない」と言われた方が、当院に(手術を前提として)転院した方の割合が多くなります。

・パターンとしては、「術前化学療法⇒(手術可能となり)⇒手術」もしくは「手術⇒術後の化学療法」などとなります。

・(QandA経由が多くなるので)自然と「遠方の方(関西などを含む)」の割合も多くなります。

 

○術後補助療法

・「術後補助療法」は(乳癌手術が年間360 overである)当院で、多くなるのは至極当然であり、遠方からも結構通ってきます。

・術後の治療として(放射線治療は地元で行う方が多いのに比べ)圧倒的に(地元では無く)当院で行う方が多いです。(3週間に1度の通院だし、副作用も許容範囲なので)

 

 

2.居住地

江戸川、葛飾(本来の江戸川病院の医療圏) 17症例(34%)

東京(その他) 15症例

千葉 5症例

埼玉 5症例

神奈川 3症例

兵庫 2症例

その他(九州、北関東、東北で1症例ずつ)

 

 

 

 

 

 

 

★大雑把に言うと、「江戸川葛飾以外」が2/3を占めるというのは「手術症例」とほぼ同じイメージです。

また、半数以上の方は「通院時間は(片道)2hを超え」てきます。

 

『手術は(家から)遠くてもいいけど、術後の抗がん剤が(通院するのに)心配だ』

結構そのように心配される方も多いですが、抗がん剤は副作用の出方を把握していれば、全く問題ありません。

 

次回は実際に2月に行われたレジメンを紹介し、それらの副作用についても解説します。