こんにちは。田澤です。
当院の「全摘同時再建」
「全摘同時再建」は形成外科枠で手術をするので(乳腺外科の月金ではなく)木曜日に手術を行います。
ただ、木曜日は貴重な外来日なので、当然「外来の合間に手術」となります。
手術時間は「全摘+センチネルリンパ節生検」(ここまでは私が行う:約30分)⇒ここで形成外科にバトンタッチして「組織拡張器留置+閉創」(約1時間15分)が標準となります。(トータル1h45分)
大概は(全摘同時再建は)1日1件なので
★同時再建がある木曜日は
9:00~入室
9:20~全摘+センチネルリンパ節生検(だいたい30分程度で終わります)
9:50~外来へ移動(ここから形成外科にバトンタッチして後はお任せするのです)
10:00~外来開始(ここから18時? 19時?までノンストップです)
みたいなタイムスケジュールで行っています。
ただ、先週木曜日に(珍しく)「全摘同時再建」が3件ありました。
(過去に1日に2件はありましたが、3件は初でした)
★実際のタイムスケジュールは…
9:00入室
9:20~全摘+センチネルリンパ節生検(手術30分)
9:50~外来へ移動
10:00~外来開始~11:50外来いったん中断(外来1h50分)
12:00(2件目)入室
12:20~(2件目の)全摘+センチネルリンパ節生検(手術30分)
12:50~外来へ(再度)移動
13:00~外来再開~14:45外来、再度中断(外来1時間45分)
15:00(3件目)入室
15:20~(3件目の)全摘+センチネルリンパ節生検(手術30分)
15:50~外来へ(またまた)移動
16:00~外来再再開(この日は予め外来人数を絞っていたので)17時過ぎで無事終了しました。(外来1時間20分)
江戸川病院は外来棟と手術室(本院)が離れているので「3回の移動」が大変で(妙に)忙しい1日となりました。
○リンパ節転移と遠隔転移
過去3回の今週のコラムで
117 腋窩再発(リンパ節再発)について
118 胸壁再発(乳房内再発の場合には「残存乳腺からの新規発生の可能性」もあります)
119 リンパ節転移と遠隔転移の違い
を解説しました。
これは、「QandA」の場でも、実際の「臨床」の場でも「理解してもらいたいなぁー」と強く感じていたので、(その情動に突き動かされて)書いたのです。
ものごとを、すぐに「ブラックボックス化」して「転移も再発も一緒?リンパ節転移=遠隔転移でしょ?」みたいな見方をしてほしくなかったから(とも言い換えられます)です。
ただ、このような中
「管理番号6038 母の乳癌について」で「担当医」のコメント
『「また、リンパまで癌がいくとリンパまでいってない人より生存率が下がりますと。」』
★「これでは、いけない」「もう一息、解説しなくてはならない」
担当医の(無神経で不用意な)発言が、ますます誤解を与えている。
(私は見ていませんが)きっと、ネットでも「リンパ節転移=再発」みたいな誤解が蔓延しているに違いない。
更に、(間をおかずに)「6039リンパ転移と遠隔転移」というの投稿(Q)もありました。
それでは本題に入ります。
○予後とは?
「生存率、再発率(局所ではありません、あくまでも「遠隔」です。)」をいうわけですが、これはダイレクトに「血行性転移=癌細胞が血管に乗って臓器に転移を起こす」ことをいいます。
つまり予後(生存率)とは(言い換えれば)「血行性転移が起こる確率」と言えるのです。
Q「血行性転移の起こる兆候」を捉えることはできますか?」
A「できません。」
Q「それでは、腫瘍マーカーは何に役立つのですか? 血行性転移との関係は? これは何に役立つのですか?」
A「腫瘍マーカーは血行性転移の予測には全くなりません。(それが上がった時には)すでにCTなど画像診断で大きなマスを作っています。予測には役立たないのです。」「ちなみに、術前の患者さんでは腫瘍マーカーは正常であり、(腫瘍マーカーは)乳癌の診断にも(将来の再発の)予測因子にもなりません。」
Q「それでは血行性転移が起こる確率(遠隔再発リスク)は何を指標とすればいいの?」
A「それが、(手術時の)腫瘍の大きさとリンパ節転移の有無なのです。」『予後の予測因子(遠隔転移の確率と言い換えてもよい)として、特定されたのが、その2つだったのです。』
Q[その2つは直接、遠隔転移の原因となるのですか?例えばリンパ節転移した癌細胞が、血流にのって遠隔転移を起こすとか?]
A「それは誤りです。 あくまでも統計学的に予後(遠隔再発のリスク)因子であり、統計学的に関係があるというだけであり、直接の原因ではありません。」
★つまり「リンパ節転移があるということは、もう遠隔転移しちゃっているってことですか?」
そんなQが、かつてありましたが、もうお分かりですね。
リンパ節転移が直接遠隔転移を起こす事はありません。あくまでも「予後因子」の一つにすぎないのです。