パルボシクリブ(イブランス)
これが暫くぶりに「鳴り物入り」で登場する薬剤です。(本当に久しぶりに、大物登場です)
通常の抗がん剤とも違うし、分子標的薬でもありません。
CDK4/6阻害剤という全く新しいアプローチで、(ホルモン療法と併用で)かなりの力を発揮します。
いずれ、この今週のコラムでも紹介することがあるかもしれませんが、その日本でのお披露目会である「2017イブランス発売記念講演会」(2017/11/11 15:00-18:00 虎の門ヒルズ)
日程的に、(土曜日の市川外来が終わってからなので)時間通りには間に合いませんが… 参加してきます。
その分(虎ノ門に宿泊もするため)来週の土日に仕事があまりできない分(土日は私にとって貴重な時間なのです)11/3金曜日(祝日)は仕事の時間がとれて、とても貴重でした。
FMから流れたshort story
「もしもし、そちらスマイル小学校ですか?」
「おはようございます。そうです。こちらはスマイル小学校です。」
「今日、4年A組のジャックスミスは今日お休みします。」
「それでは、あなたはジャック君のお父さんですか?」
「そうです。 僕のパパです。」
前回、生検手技を紹介させてもらいました。
私が主としてお話したかったのは「細胞診の難しさ」についてでした。
それでは今回は(特に難しいとされる)腋窩細胞診について実例を挙げて紹介しましょう。
Case 1
乳癌術後経過観察中の方
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検査技師による定期エコーで、腋窩リンパ節を(最初に)指摘される。
画面上、やや解りにくいですが、「不整形」であることは解ります。(こんな正常リンパ節ありません)
ただ(何故か?)A医師は、(自らエコーで確認することもなく)経過観察としています。
♯この要因として…
非常勤医であるA医師にとって、(どこかの政治家のように)「問題はできるだけ、先送りにしたい!」があるようです。
自分が(その病院に)来年もアルバイトしに来るのかは(彼自身にさえ)解らないのです。
(自分が在籍して居る間に問題が起こるのは困るけど)「自分が居なくなった後なら、どうなろうと知ったこっちゃない。」(そこまで酷くはないでしょうが…)
(8カ月後)
やはり検査技師による定期エコーですが、「前回より明らかに増大」と指摘されます。
これをもって、初めてA医師は自らエコーしてみますが、(ここでも何故か)「半年後経過観察」としています。
これは「かなり強烈」な(不整形をした)リンパ節像です。
これを「正常リンパ節」と考える(まともな)乳腺外科医は(日本中どこを探しても)居ないでしょう。
これで「経過観察」とは…
(更に7カ月後)
ここでようやく、A医師は「細胞診」を行いますが…
結果は「検体不良」
しかしA医師は(再検することなく)「反応性腫大(だから、細胞が取れなかったのだ)」という結論としています。
(更に1年後)
ここで私が診療する機会を得ました。
私は(A医師とは異なり)技師にエコーさせる習慣が全くないので当然ながら自分でエコーしました。
「何だ、こりゃ!!」
エコー像は「どう見ても、反応性とは思えない、転移性リンパ節だ!」
「全く、A医師は…」
☆こうして、(発見から2年経過して)ようやく「腋窩リンパ節郭清」が行われることとなりました。
最初から私が診療していれば…
最初の時点で「細胞診class Ⅴ」2年も早く治療ができたでしょう。
この2年がどういう意味を持つのか。(患者さんは医師を選べないのです)
Case 2
この方は他院で「局所再発を繰り返す(どう見ても初期治療に不備が有ったのですが)」乳癌として長期間治療されていた方
対側のリンパ節を見たところ…
左図)2つの不整形のリンパ節 右図)左図リンパ節の右を別角度からみたもの
私
「これは、どう見ても正常ではない」「対側リンパ節に転移することは極めて稀(乳腺において右と左は天と地ほど離れているのです)ですが…」
Bさん
「ええ、そう見えるようなんです。」「でも前医で細胞診して良性と解ってます」
私
(腋窩細胞診が上手くできない医師が多い事を知っているので)「でも、気になります。細胞診しましょう。」
Bさん
「えーっ。私痛いの嫌いなのよ。」(前医で良性だったから)「しなくていいんじゃない?」
私
「局麻をして細胞診すれば、大丈夫。痛くないです。」
☆結局「クラスⅤ」でした。
まぁ、そんなものなのです。
「細胞診」自体難しいのに、「腋窩細胞診」となると…
このような経験を日常的に繰り返している私を想像してください。
「前医で細胞診良性」を信じられない私をご理解ください。